異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第六十話 温かい場所

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第六十話 温かい場所


『ふざけんなよ!』
『はぁ?せっかくここまで来たのに!』
『男のドライアド?そんなもん、存在する意味ねぇだろ!』

産まれてから、ずっとずっと繰り返し聞いて来た言葉。

僕は、いてはいけないの?
僕は、生まれてはいけなかったの?

『どっちでも良いよ』

冷たい冷たい場所に、ほんのりと温かい何かが降って来た。
暗い暗い森からお空に飛び出した。

『大丈夫』

また、温かい何かが降って来た。
お空の上にたどり着いた。
ふわふわ。
ふんわり。
温かい。

『何処が良い?』

いっぱいのふわふわ。

『これから、よろしくね!』

きらきら、きらきら。
ふわふわ、ふわふわ。
降り積もって、まるで、ふわふわに抱きしめられているみたい。

僕はその夜、生まれて初めて眠りについた。





「ふぁ・・・」

欠伸をしながら、縁側のカーテンを開けていく。
最近バタバタしてたから、疲れてるのかなぁ。
最後のカーテンを開け終えて、外を見る。
今日も良い天気だ。

「そろそろ夏野菜を植え・・・はい?」

いつもの畑。いつもの景色。一つだけ違うのは、池の畔に植えたドライアドの樹。

「やっぱり、疲れてる・・・いやいやいや!そんな事は」

慌てて縁側から庭に降りると、両目をこすった。

「ほぇ~・・・マジかぁ」

大きく、大きく育ったドライアドの樹は、池を囲うように根がはり、高さが倍程になっていた。

「ドライアドの樹って、一晩であんなに育つんだねぇ」
「そんなわけあるかい」
「あ、ノナさん、おはよぉ」
「お前さんは・・・本当に緊張感が無いというか・・・ほれ」
「ああ、はいはい」

抱っこの催促をされたので、抱き上げた。

「いくらドライアドって言っても、本体は普通の樹だ。極端に成長が早いとかはないさ」
「じゃあ、あれは?」
「私が知るかい。本人に聞くんだ」
「へ~い」

ナーブの所へと向かう。
樹の根が地面から浮き出て、でこぼこ。所々苔が生えているし、初めて見たら数百年前からずっとここにいる様に思うだろうな。

「近くでみると、更にすごいねぇ」

私が泳げるくらいの広さがある池だが、昨日より小さく見える。

「ナーブ!」
「・・・はい」

洞の中から、か細い声が聞こえて来た。

「聞きたい事があるから、出てきてくれない?」
「あの・・・その・・・だ、駄目ですぅ」
「はい、さっさと出て・・・何故逃げる」

最初の事を思い出して洞の中に手を突っ込んで弄るが、ひょいひょいと逃げられる。

「ノナさん、肩へ」
「ほいよ」

ノナさんが肩に移動すると、両手を突っ込んだ。

「この、大人しく・・・」
「だ、駄目ぇ」
「よし、掴んだ!」

両手で挟んだぞ!
ずるりと引っ張り上げると、私の手に顔を挟まれたナーブが現れた。
そして、そっと中に戻した。

「誰?」
「ドライアドじゃろ」
「いやいや、別人じゃない!?」

ナーブは、緑色のもしゃもしゃだ。
さっき出てきたのは、薄緑色のサラサラロングヘアーと深緑色の瞳の、儚い系美青年だ。

「本体である樹がここまで変わったんだ。ドライアドは本体の影響を濃く受けるからの」
「そう言うもんですか」
「そう言うもんじゃ」

異世界って、凄いなぁ。

「そんじゃ、そう言う事で。さっさと出てこい」

今度こそ掴んで引っ張り出した。

「うう、酷い」
「はいはい。それで?ここまで成長したのは、あの飲み込んだ種のせい?」
「それは、関係無いですぅ」

ふむ、てっきりあれの影響かと思ったけど違うのか。

「夢を見たんです」
「夢?」
「ふわふわ~、キラキラ~で、とっても温かくて」
「ふわふわ」
「キラキラ?」
「朝起きたら、こんな事に」

全然意味わからん。

「なるほどのぉ」
「え、ノナさん分かったの!?」
「ナーブは、生まれてから一度も精気を奪っていない。森や、森に住む動物たちから少しずつ糧となる魔力を得ていたと言う事。ならば、この島に来て、この島にあるヒナの魔力を吸収したのだろうて」
「ここは、ふわふわキラキラがいっぱい!」

だからその、ふわふわとかキラキラは何?

「問題無し」
「無いんだ」
「無い。お前さんの馬鹿みたいな魔力を、ナーブが多少吸収したところで、どうともならん」

馬鹿・・・。

「ドライアドは森に恩恵をもたらす。お前さんの畑にも、良いじゃろうて」

何その新種の食物連鎖。
私から魔力を得たナーブが畑をを良くして、その畑の作物を私が食べる・・・ある意味、自給自足?

「すっごい!」
「おっきくなったぁ」

猫達が起きて来たようだ。
クロは・・・まだ寝てるんだろうなぁ。

「ヒナしゃま、のぼってもいい?」
「ナーブ、猫達が登りたいみたいだけど、良い?」
「ど、どうぞ!」
「良いって」

それを聞くと、猫達が次々に樹に登っていく。身軽だなぁ。
あっという間に上の方に行ってしまった。

「んしょ、んしょ、うぅ・・・」

コマは、ちょっと難しいかなぁ。
私が抱えて上に行こうかと思っていたら、木の枝が伸びて来た。

「その、あの・・・摑まって?」
「あい」

コマが枝に摑まると、ゆっくりと上昇。太く安全そうな枝へと、コマをあげてくれた。

「わ~!ヒナしゃま~!」

キャッキャと楽しそうなコマ。
他の猫達も手伝い、上の方へと上がって行った。

「ありがとね、ナーブ」
「い、いえ・・・その・・・はい」

猫達の良い遊び場になりそうだ。
お昼寝用の小屋とかカゴを置いてあげても、良いかも!
ハンモックも捨てがたい。

「久しぶりに、創作意欲が湧いて来た!」

ノナさんはもう少しナーブと話があるらしいので、一人で作業場に向かった。

「むふふふふ」

用意するのは、二センチ幅に割いた竹!
これをひたすら編み編み編み編み・・・途中でお昼ご飯を挟み、また編む!
安全性と見た目を考え、凝りに凝ったら完成に三日もかかった。

「三日月と言うより、クロワッサン?」

私とクロと猫達が入っても余裕で寝れる、大きなクロワッサン型のカゴが完成。
ふかふかのクッションを敷いて、出来上がり。
ノナさん達用にも、ベンチを作ってクッションを用意した。

「ナーブ、よろしく!」

早速ナーブの所へ持って行って、吊るしてもらった。
場所や耐久性はナーブと相談済みだ。
私達用のは樹の中間に。ノナさん達用のは、一番下の枝、地面すれすれに吊るしてもらった。
私もジャンプして登り、確認。
木洩れ日がキラキラ。風も心地いい。
カゴの中へ入ると少し揺れたけど、これくらいなら大丈夫だ。

「よいしょ・・・おぉ、予想以上に気持ち良い!」

ちょっとだけ、お昼寝。

「ん・・・」

目が覚めると、やっぱり皆集まっていた。
猫達とクロが私を挟んで気持ちよさそうに寝ている。
これはなかなか抜け出せないな。
動こうとするだけで揺れそう。

「むにゃ・・・」
「ん?」

猫達の向こう側に、ナーブまで寝ているのが見えた。

「まぁ、いいか」

結局二度寝して、夕方セバスが起こしてくれました。





「う~ん・・・」

今日も今日とて、作業場です。
カゴは完成したけれど、前からずっと気になっていたんだよね。

鍵、面倒。

便利なんだよ!超便利なんだけども!
ナーブの本体みたいに、おおきな物を持って行きたい時とかは不便なんだよなぁ。
アイテムバッグに入れば良いけど、大きな生き物は?
もしも、大きなモフモフを見つけたら?
毎回毎回、扉を探すか捨てて来るのもねぇ?
瞬間移動でパパっと移動できないかなぁ・・・。

「何をうんうん唸っとる。外まで聞こえとるぞ」
「ああ、ノナさん。いやぁ、瞬間移動ができないかなぁって」
「鍵は?」
「あれだと、扉を探すか置いてこないと駄目だしさぁ。それに、私だけしか使えないでしょう?皆が里帰りしたい時とか、帰って来る時に困るかなぁって・・・」

時々、閉じ込めてるんじゃないかって思う時がある。
ノナさん達がここに来る時も、永遠のお別れ、みたいな感じだったし。
ここからじゃ手紙も送れない。

「・・・ドライアドを引っこ抜いて連れて来るくせに、変な所で弱気じゃのぉ」
「へ?」
「転移石」
「てん?」
「細かい事は、あの執事にでも聞け」

教えてくれないんか~い!

「儂らは望んでここにおる。それだけじゃ」

ノナさんが作業場から出て行ってしまった。

「う~ん・・・さっぱり分からん。石?そういう魔道具があるのかな?」

ゲームの中には無かったもんなぁ。

「ありますよ」
「ふへぇい!?」

突然耳元で聞こえた声に、思わず飛び上がりそうになった。
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