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第六十三話 わんちゃん
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第六十三話 わんちゃん
森に着くと、探査を使って女性を探す。
「いた」
走っているようだが、まだ入り口付近。
こっちに向かってきているが、ここまで来るのには相当かかりそう。
女性に向かって走り出した。
待ち合わせの場所から入り口まで歩いて二時間だったが、四足で走ればあっという間だ。
女性の近くまで来ると、とりあえず樹の上に登って様子を見る。
「ぜぇ、ぜぇ・・・うぅ・・・グス・・・」
走ったのと泣いているので、かなりボロボロの女性。
あ、転んだ。
「ふ・・・うぇぇえ!ひっく、ふぇ・・・」
地面に倒れ、まるで駄々をこねる子供の様にジタバタと暴れる女性。
「わ、わだじだって、がんばっだのにぃ!ぐず・・・あんな、あんな・・・ふぇぇぇ!」
はぁ・・・見ていられない。
あの女の人達にも、男にもイラッとした。だが、私が最もイラッとしたのは、この女性に対してだ。
言いたい事もハッキリ言えず、オドオドオドオド・・・そのくせ、自分は何も悪く無い、私は頑張っていると自己肯定だけはしっかりとする。
向こうの世界だったら、休みの日にカフェとか行って「世界は辛い事ばかりだけど、笑顔で自分らしく歩いて行くの」とか空の写真と一緒にブログにあげたりするんだろうなぁ・・・。
「ふっ」
思わず鼻で笑っちゃった。
「だ、誰!?」
おや、聞こえたのか。
私が何処にいるかまでは分かってないみたいだけど。
「頑張ったって、何を?何を頑張ったの?」
「ぐすっ・・・私だって、剣の鍛錬をしたり、一流の冒険者になるって・・・でも」
「でも?」
「パーティにどんどん女の人が増えていって・・・振り向いてほしくて、頑張ったねって・・・言ってほし・・・ふえぇぇ」
あらま、一応あの男に恋心はあったのね。
「クズなのに?」
「彼はクズじゃない!」
おやまぁ。
「彼はとっても優しいの!」
「その優しい彼は、貴女を置いて行ったみたいだけど?」
「それは・・・」
ん?探査に何か引っかかった。真っ直ぐこちらへ向かってきている。
そして、女性の前に姿を現したのは、真っ白で巨大な犬?
「きゃぁぁぁ!」
森中に聞こえるんじゃないかってくらいの叫び声。
犬嫌い?
「そんな・・・何故こんな所に・・・」
『グルルルル!人族・・・』
ワンちゃんがご立腹だ。野良?ってか、今「人族」って言った気がするけど・・・。
ああ、飼い主にしか聞こえない「おはよう」現象か。いや、私は飼い主じゃないし。
『貴様か!我の友を連れ去ったのは!』
んん?友?
「なんで私ばっかり・・・こんな・・・」
女性は腰を抜かして動けないみたいだな。
恐怖で何も聞こえてない。
『我が友、ナーブを何処へ隠した!』
ワンちゃんはお友達を探していて、そのお友達はナーブって名前か・・・ナーブ?
「いや・・・もう嫌・・・」
『もう良い!貴様を噛み殺してから探して』
「ちょっと待ったぁ!」
樹から飛び降りて、女性とワンちゃんの間に入った。
『なんだ貴様!』
「探してるのって、ドライアドのナーブ?」
『!?貴様!』
「待って、待って!誘拐じゃないから!ちゃんと本人に確認して、一緒に来てもらったの」
『・・・貴様の様な得体の知れない者の妄言なぞ』
「あ?」
得体の知れない?デカい喋るわんこに言われたくない。
ちょっと躾けがなってないですなぁ。
私よりも大きいからって!モチと同じくらいか?
『我が友を返せ!』
「友達思いなのは分かった。でも、もうちょっと人の話を聞いた方が」
『煩い!』
わんこがこっちに走りだした。
しょうがないなぁ。
「おすわり!」
わんこの躾けは、上下関係の確立から始まる。
先ずは分からせてあげないとね。
強気で行かないと、舐められます。
『!?』
おや、止まった?
耳を伏せ、お尻も下がり気味。
「お・す・わ・り」
『はい!』
ピシッと姿勢の良いおすわりを見せたわんちゃん。
尻尾もフリフリ・・・可愛いじゃないか。
「よくできました」
頭は届かなかったので、肩の辺りを撫でて褒める。
すると、コロリと地面に転がり、お腹を見せた。しかも、段々と縮んで撫でやすいサイズになってくれた。
「よ~し、よしよし!」
わしゃわしゃとお腹を撫でてあげた。
『クゥ~ン』
「さて、と」
「ひっ!」
女性の方に振り返ると、小さく悲鳴をあげられた。
「・・・どこまで話したっけ?」
ずりずりと後退る女性。
「ああ、優しい彼に捨てられたって所だ」
「す、捨てられてなんて・・・」
まだ言うか。
「じゃあ、捨てられ云々は置いといて良いよ。今の自分で良いと思う?」
「え?」
「ありのままの私を愛してくれる人・・・は、幻想です。あのさ、どれだけの女性が本当にありのままだと思う?ってか、ありのままって、どこまで?体系維持の為に頑張るのは?肌のお手入れは?恥も外聞も全く気にしない、だらっだらが好きな人は?ありのままに外に出る?」
女性の前にしゃがんで目を合わせる。ちょっと泳いでいるけど、逃げないだけましか。
「確かに、今のありのままの貴女を好きになる男性はいると思う」
沢山食べる女性が好きって人もいるからね。そう言いながら太ってる人はちょっと・・・とか言うんだけどね。食べた物が消えてなくなるとでも思ってんだろうか?
大きい女性が好きって人もいるな。この世界でも、探せばいるだろう。
「でもそれは、あの彼じゃないと思う。取り巻きの女性達を見れば分かるよね?」
「・・・」
これだけ言っても駄目か。
ならば、やる事は一つ。
「彼を振り向かせたい?」
何も言わずに頷く彼女。
「ならば立ちなさい!私がその根性と身体を叩き直してあげる!」
「・・・はい!」
スポコンみたいになっちゃったけど、まぁ良いか。
「わんちゃんはどうする?」
『わんちゃん・・・一度服従した身だ。主と共に行く』
「はいよ。じゃ、レッツゴー!」
二人に触りながら、転移石を起動した。
*
「へ?」
『は?』
戻って来ると、皆に出迎えられた。
「ただいま」
「ただいま、じゃないだろ!」
「何が?」
「それ!」
「ん?」
エストが指したのは、わんちゃんだ。
「犬、嫌いだった?」
「い、犬じゃない!フェンリルだ!」
「フェンリル・・・へぇ、そういう犬種がいるんだ」
聞いた事がある気がするから、むこうの世界にもいたのかな?
「馬鹿!フェンリルは神獣だ!」
「え、そうなの?」
『はい』
神獣?フェンリル・・・ああ、なるほど!
「だから言葉が喋れるんだね」
『人の言葉は分かりますが、今は違います』
「でも、私は分かるよ?」
動物の言葉が分かるなんて特殊技能は持ってないはずだ。
「・・・これで、皆にも分かるはずですが」
「うわぁ!?」
「喋った・・・」
「神獣フェンリルが人の言葉を話すって伝承は、本当じゃったか」
いつの間にかノナさんも来ていた。
皆の驚き方からして、本当に今までは皆には分かってなかったようだ。
うう、ちょっと恥ずかしい。犬と普通に会話しているように見えるって、まるで不思議ちゃんじゃないか・・・。
「フェンリルさん!」
「ナーブ!無事だったか!」
ナーブとフェンリルがひしと抱き合う。
良かったねぇ。
「その・・・大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫なんじゃない?」
ナーブの事を本当に心配していたみたいだし。
背後でパタリと倒れる音が聞こえてきた。
見ると、女性が地面に倒れていた。
「まぁ、気持ちは分かるがな。よく耐えた方だと思うぞ」
「???」
倒れる程感動したんだね、きっと。
森に着くと、探査を使って女性を探す。
「いた」
走っているようだが、まだ入り口付近。
こっちに向かってきているが、ここまで来るのには相当かかりそう。
女性に向かって走り出した。
待ち合わせの場所から入り口まで歩いて二時間だったが、四足で走ればあっという間だ。
女性の近くまで来ると、とりあえず樹の上に登って様子を見る。
「ぜぇ、ぜぇ・・・うぅ・・・グス・・・」
走ったのと泣いているので、かなりボロボロの女性。
あ、転んだ。
「ふ・・・うぇぇえ!ひっく、ふぇ・・・」
地面に倒れ、まるで駄々をこねる子供の様にジタバタと暴れる女性。
「わ、わだじだって、がんばっだのにぃ!ぐず・・・あんな、あんな・・・ふぇぇぇ!」
はぁ・・・見ていられない。
あの女の人達にも、男にもイラッとした。だが、私が最もイラッとしたのは、この女性に対してだ。
言いたい事もハッキリ言えず、オドオドオドオド・・・そのくせ、自分は何も悪く無い、私は頑張っていると自己肯定だけはしっかりとする。
向こうの世界だったら、休みの日にカフェとか行って「世界は辛い事ばかりだけど、笑顔で自分らしく歩いて行くの」とか空の写真と一緒にブログにあげたりするんだろうなぁ・・・。
「ふっ」
思わず鼻で笑っちゃった。
「だ、誰!?」
おや、聞こえたのか。
私が何処にいるかまでは分かってないみたいだけど。
「頑張ったって、何を?何を頑張ったの?」
「ぐすっ・・・私だって、剣の鍛錬をしたり、一流の冒険者になるって・・・でも」
「でも?」
「パーティにどんどん女の人が増えていって・・・振り向いてほしくて、頑張ったねって・・・言ってほし・・・ふえぇぇ」
あらま、一応あの男に恋心はあったのね。
「クズなのに?」
「彼はクズじゃない!」
おやまぁ。
「彼はとっても優しいの!」
「その優しい彼は、貴女を置いて行ったみたいだけど?」
「それは・・・」
ん?探査に何か引っかかった。真っ直ぐこちらへ向かってきている。
そして、女性の前に姿を現したのは、真っ白で巨大な犬?
「きゃぁぁぁ!」
森中に聞こえるんじゃないかってくらいの叫び声。
犬嫌い?
「そんな・・・何故こんな所に・・・」
『グルルルル!人族・・・』
ワンちゃんがご立腹だ。野良?ってか、今「人族」って言った気がするけど・・・。
ああ、飼い主にしか聞こえない「おはよう」現象か。いや、私は飼い主じゃないし。
『貴様か!我の友を連れ去ったのは!』
んん?友?
「なんで私ばっかり・・・こんな・・・」
女性は腰を抜かして動けないみたいだな。
恐怖で何も聞こえてない。
『我が友、ナーブを何処へ隠した!』
ワンちゃんはお友達を探していて、そのお友達はナーブって名前か・・・ナーブ?
「いや・・・もう嫌・・・」
『もう良い!貴様を噛み殺してから探して』
「ちょっと待ったぁ!」
樹から飛び降りて、女性とワンちゃんの間に入った。
『なんだ貴様!』
「探してるのって、ドライアドのナーブ?」
『!?貴様!』
「待って、待って!誘拐じゃないから!ちゃんと本人に確認して、一緒に来てもらったの」
『・・・貴様の様な得体の知れない者の妄言なぞ』
「あ?」
得体の知れない?デカい喋るわんこに言われたくない。
ちょっと躾けがなってないですなぁ。
私よりも大きいからって!モチと同じくらいか?
『我が友を返せ!』
「友達思いなのは分かった。でも、もうちょっと人の話を聞いた方が」
『煩い!』
わんこがこっちに走りだした。
しょうがないなぁ。
「おすわり!」
わんこの躾けは、上下関係の確立から始まる。
先ずは分からせてあげないとね。
強気で行かないと、舐められます。
『!?』
おや、止まった?
耳を伏せ、お尻も下がり気味。
「お・す・わ・り」
『はい!』
ピシッと姿勢の良いおすわりを見せたわんちゃん。
尻尾もフリフリ・・・可愛いじゃないか。
「よくできました」
頭は届かなかったので、肩の辺りを撫でて褒める。
すると、コロリと地面に転がり、お腹を見せた。しかも、段々と縮んで撫でやすいサイズになってくれた。
「よ~し、よしよし!」
わしゃわしゃとお腹を撫でてあげた。
『クゥ~ン』
「さて、と」
「ひっ!」
女性の方に振り返ると、小さく悲鳴をあげられた。
「・・・どこまで話したっけ?」
ずりずりと後退る女性。
「ああ、優しい彼に捨てられたって所だ」
「す、捨てられてなんて・・・」
まだ言うか。
「じゃあ、捨てられ云々は置いといて良いよ。今の自分で良いと思う?」
「え?」
「ありのままの私を愛してくれる人・・・は、幻想です。あのさ、どれだけの女性が本当にありのままだと思う?ってか、ありのままって、どこまで?体系維持の為に頑張るのは?肌のお手入れは?恥も外聞も全く気にしない、だらっだらが好きな人は?ありのままに外に出る?」
女性の前にしゃがんで目を合わせる。ちょっと泳いでいるけど、逃げないだけましか。
「確かに、今のありのままの貴女を好きになる男性はいると思う」
沢山食べる女性が好きって人もいるからね。そう言いながら太ってる人はちょっと・・・とか言うんだけどね。食べた物が消えてなくなるとでも思ってんだろうか?
大きい女性が好きって人もいるな。この世界でも、探せばいるだろう。
「でもそれは、あの彼じゃないと思う。取り巻きの女性達を見れば分かるよね?」
「・・・」
これだけ言っても駄目か。
ならば、やる事は一つ。
「彼を振り向かせたい?」
何も言わずに頷く彼女。
「ならば立ちなさい!私がその根性と身体を叩き直してあげる!」
「・・・はい!」
スポコンみたいになっちゃったけど、まぁ良いか。
「わんちゃんはどうする?」
『わんちゃん・・・一度服従した身だ。主と共に行く』
「はいよ。じゃ、レッツゴー!」
二人に触りながら、転移石を起動した。
*
「へ?」
『は?』
戻って来ると、皆に出迎えられた。
「ただいま」
「ただいま、じゃないだろ!」
「何が?」
「それ!」
「ん?」
エストが指したのは、わんちゃんだ。
「犬、嫌いだった?」
「い、犬じゃない!フェンリルだ!」
「フェンリル・・・へぇ、そういう犬種がいるんだ」
聞いた事がある気がするから、むこうの世界にもいたのかな?
「馬鹿!フェンリルは神獣だ!」
「え、そうなの?」
『はい』
神獣?フェンリル・・・ああ、なるほど!
「だから言葉が喋れるんだね」
『人の言葉は分かりますが、今は違います』
「でも、私は分かるよ?」
動物の言葉が分かるなんて特殊技能は持ってないはずだ。
「・・・これで、皆にも分かるはずですが」
「うわぁ!?」
「喋った・・・」
「神獣フェンリルが人の言葉を話すって伝承は、本当じゃったか」
いつの間にかノナさんも来ていた。
皆の驚き方からして、本当に今までは皆には分かってなかったようだ。
うう、ちょっと恥ずかしい。犬と普通に会話しているように見えるって、まるで不思議ちゃんじゃないか・・・。
「フェンリルさん!」
「ナーブ!無事だったか!」
ナーブとフェンリルがひしと抱き合う。
良かったねぇ。
「その・・・大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫なんじゃない?」
ナーブの事を本当に心配していたみたいだし。
背後でパタリと倒れる音が聞こえてきた。
見ると、女性が地面に倒れていた。
「まぁ、気持ちは分かるがな。よく耐えた方だと思うぞ」
「???」
倒れる程感動したんだね、きっと。
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