異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第六十四話 無理は禁物

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第六十四話 無理は禁物


チャンチャラチャッチャッチャッチャ~♪
いつもの音楽が始まる。
朝の体操だ。

私やクロ、猫達はもちろん、エストやノナさんと三婆、それにナーブも参加している。
そして今日から、もう一人。

「ふぁ~・・・」

昨日連れて来た、冒険者パーティを追い出された女性。
名前はキャロル。Cランク冒険者。剣士らしい。
エストから聞いたが、冒険者はかなり不規則な生活を送っているらしい。
依頼中も終わった後も、昼夜はほぼ関係無い。夜行性の魔物も多いしね。
町に帰ってこれば、酒に女にとどんちゃん騒ぎ。
宵越しの金は持たねぇぜって人が大半らしい。
ジローは食道楽で行き倒れたしね。
体操が終われば、朝ご飯。

「こ、こんなに食べて良いの?」
「絶食でもさせると思った?」

テーブルの上には、ご飯と焼き魚、お味噌汁にサラダと色々並べられている。

「その・・・いつもそうやってたから」

流石に自分でもヤバいと思い、何度かダイエットには挑戦していたらしい。
その方法が、断食。
お休みの日に、丸一日断食。そう言う健康法があるにはあるが、私としてはあまりおすすめしない。

「いつもお腹いっぱい食べてるのに、突然何も食べないなんて身体がびっくりしちゃうでしょ。突然量を半分に、とかもやめた方が良いよ。先ずは、規則正しい生活と腹八分目を目指すの」
「でも・・・」

納得出来ないのか、食事に手を付けようとしないキャロル。

「突然食べ物を絶つと、身体が「あ、ヤバい!死ぬかも」と思って、守ろうとするの。それで、次に入って来た栄養を全力で吸収しようとするから、余計に太る」
「うっ・・・」

身に覚えがあったようだ。
科学が無いこの世界では、説明が難しい。
絶食が続くと、身体を守ろうとし始める。
過度なダイエットでは栄養が行き届かず、身体に様々な支障が出て来る。

「筋肉も落ちるし、集中力も無くなる。病気になる可能性もある」
「でも、ポーションを飲めば」

ああ、この世界にはそれがあったか。

「あんぽんたん」
「痛い!」

デコピンの刑だ。

「ポーションを飲めば良い?そのてっぷりとしたお腹の肉を切り取って、ポーション掛けてどこまで再生するか試してやろうか?」

爪をにょきっと出して見せた。

「その手が」
「たわけ」
「痛い!」

デコピンの刑再び。
いや、それも有り?
ってか、どこまで再生するんだろう?いやいやいや!これは危険な考え!NO、マッドサイエンティスト!

「とにかく・・・食べて、動け」

朝食の後は畑仕事。

「それはトマト!雑草はあっち!」
「え」

駄目だ。
畑は、駄目だ。
冒険者って薬草採取とかするんじゃないのかよ!

「これに着替えて」

渡したのは、運動しやすいTシャツにズボン。それからランニングシューズ。
キャロルが履いているのは、革靴だったからね。
準備運動で身体を伸ばし、走る!

「先ずはゆっくりね」
「はい」

家から出発し、神社の前を通った時だった。

「ちょ、ちょっと・・・待って」

後ろを振り返ると、ぜぇはぁと息を切らせたキャロルがいた。
おいおい、マジか!
これは・・・先が思いやられるぞぉ。





結局、ランニングからウォーキングに変え、お昼前には家にたどり着いた。

「も・・・無理・・・」

やれやれだ。
キャロルにシャワーを浴びる様に言って、私はナーブの所へ向かった。

「お疲れさま」

ほんわかとしたナーブと、ピシッとおすわりするわんちゃん。

「ただいま。ナーブ、わんちゃん」
「わんちゃん・・・」
「ヒナ、名前を付けてあげて?」

いつまでも「わんちゃん」じゃ可哀そうか。

「う~ん・・・ポチ」

単純すぎたか?

「ポチ・・・気に入りました!」

気に入っちゃった。
次の瞬間、ポチと私の身体が淡く光った。

「これで契約完了です」
「契約?」
「正式に主の獣魔になりました」
「え・・・良いの?主が猫で」
「強者に従うのが理」
「主は我が友の恩人。何も迷いはございません」

ナーブが嬉しそうだから、良いのか?
ポチもめっちゃ尻尾振ってるし。

「まぁ、良いか。じゃあ、小屋を作ろう」

犬小屋、必要だよね。

「場所の希望はある?」
「その・・・獣魔としては主のお傍に仕えるのですが」
「ああ、そう言うの気にしなくて良いよ」
「では、我が友の傍に」
「はいはい。大きさって、どれが一番楽?」

今は大型犬くらいのサイズだけど、昨日会った時はモチサイズだった。

「あまり違いはありませんので、主にお任せいたします」
「じゃあ、今くらいの大きさで・・・」

雨風しのげるのは当然として、外で日向ぼっこする場所も欲しいな。
ナーブが隠れていた洞と同じ高さに枝を見つけた。

「あそこまで飛べる?」
「問題ございません」
「ナーブ、あそこに作っても良い?」
「もちろん!ふふ」

と言う事で、樹の家を作る事になった。
洞と枝は私の背と同じくらいの高さだ。
広めの犬小屋を作り、柱を設置してから乗せる。
入り口の上部には「ポチ」と書いておいた。
小屋の前から樹の幹をぐるりと回るバルコニーを作って、ステップを付ければ完成!
スキルを使わなかったけど、結構良い出来だと思う。

「どう?」
「素敵です!」
「凄い・・・」

二人に上がってもらい、中を確認してもらった。

「これを二人に」

フワフワクッションを一つずつ渡した。

「ありがとぉ」
「ありがとうございます」

うんうん。喜んでもらえて良かった。

「一応お昼ご飯持って来たんだけど、食べれる?」

持って来たのは、ミトの実スライスを焼いただけステーキ。

「ありがとうございます」

ポチは一口食べると、ガツガツと食べ始めた。
神獣って何食べるかわかんなかったけど、気に入ってもらえたようで安心。

「生まれて千年。このような美味いもの、食べた事がありません!」

わぁ、この子も長寿だった。

「じゃあ、食事は一日三食。私と同じもので良いかな?ニンニクとかネギは抜く?」

クロは平気だけど、神獣はどうだろう?

「いただける物ならば、何でも。ですが・・・我儘を言わせていただけるならば、生の方が・・・」
「生」
「彼は生の野菜が大好きなんです」

ベジタリアンな犬・・・いや、フェンリルか。

「まぁ、新鮮な野菜は沢山あるからね!」

大型犬用の器を用意し、ポチのご飯は三食野菜盛りになった。





「美味しい~!」

キャロルが凄い勢いでご飯を食べている。

「ちゃんと噛んで」

はぁ・・・。
ダイエットしてるって忘れてないか?

「午後からはすこ~し厳しく行こうかなぁ」
「ぐふっ」

飴と鞭・・・ふふ、腕がなるわぁ。
食後の休憩が終わり、私とキャロル、そしてエストは道場にやって来た。

「いた、いたたたたた!痛い!」

みっちり柔軟。
それにしても、身体が固いなぁ。
床に座って足を開き、身体を前に倒・・・れない。全く。
軽く背中を押してみたけど、全然前に倒れない。逆に凄いな。
私?私は余裕で床にペタンですよ。だって、猫ですから。
エストはどうかなぁ。

「ぐっ・・・くっ・・・」

アンタも固いんかい!
やれやれ・・・本気を出す時が、来たようだな。
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