異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第六十七話 お知らせ

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第六十七話 お知らせ


「ヒナ、あいつらには連絡したのか?」
「へ?」

スイカのヘタをパチンと切った瞬間、エストから聞かれた。

「キャロルが一番になったが、良かったのか?」
「大丈夫、大丈夫。そんな事、気にしないでしょ」

向こうから連絡も来ないんだから、下手したら忘れているのかもしれない。

「・・・はぁ・・・分かってないな。いいから、連絡だけでもしてやれ」
「ふぇ~い」

適当に返事を返し、スイカに戻った。
そして晩御飯の後、再度念を押されたので、渋々連絡をしてみる事に。

『もしもし!?』

耳がぁぁあ!

「うぅ、ひ、久しぶりぃ」
『ヒナぢゃぁぁん!』

最初に連絡したのは、クレスだ。

「元気?」
『今、元気になった!』
「今!?」
『ヒナちゃんの声を聞いたからに決まってるじゃない!』

私の声を聞いて?だったら何故今まで一度も連絡を寄越さなかったのか・・・。

『声を聞いちゃうと、会いたくなっちゃうから我慢してたんだもの』
「そうなの!?てっきり・・・」
『ヒナちゃんを忘れちゃうって?そんな事、あるわけないでしょ!』

怒られた。
まぁ、二メートル近い二足歩行の猫を忘れる方が凄いか。

「今日はお知らせがあってね」
『お知らせ?まさか、結婚!?』
「どっから出てきた!違うよ!下宿をやる事になったの!」

クレスは相変わらずぶっ飛んでる。
下宿の説明をすると、少しの沈黙が下りた。

『今すぐ行くわ!』
「どうやって!?」
『空でもなんでも飛んでやるわよ!ちょっと目を離した隙に虫が付くなんて』
「ん?」

最後の方が聞き取れなかった。

『何でもないわ!明日!明日迎えに来て!』
「わ、分かった」
『ジローとアヌリは?』
「いや、まだ」
『私が最初・・・』

ほんわりとした空気が伝わって来た。

『あいつらには私から連絡しておくわ!』
「へ?」
『じゃあ、明日よろしくね!』
「・・・切れた」

やれやれだ。





『ジロー!』
「うるせぇ!」

野営が続いてイライラしていたジローに、夜中に連絡したクレス。

「こっちは依頼が続いて疲れてんだ・・・切るぞ」
『依頼なんてどぉでも良いわよ!ヒナちゃんに、悪い虫が!』
「は?」
『だぁかぁらぁ!ヒナちゃんの所に、男がいるのよ!』
「男?」

ざわりとジローから立ち上がる殺気で、今正にジローのいるテントを襲おうと待ち構えていた狼型の魔獣が尻尾を巻いて逃げた。

『島に自由に出入りできるようになったから、下宿をやるって。一か月、金貨一枚よ』
「行く」
『は?』
「今丁度、アレストロの王都の近くにいる」
『ヒナちゃんが明日迎えに来るわ』
「分かった」

ジローはテントから出ると、乱暴に荷物をアイテムバッグの中へと放り込んだ。
夜に森の中を動き回るのは、ベテランの冒険者にとっても危険を伴う。
だが、そんな事はジローの頭からはすっぽ抜けていた。
全力疾走で町に向かうジローだった。





『ちょっと!さっさと出てよ!』
「煩い」
『ヒナちゃんの事だけど、良いの?』
「聞こう」

クレスが説明するにつれアヌリの顔色がどんどん悪くなっていくが、下宿の説明を聞いた途端一転する。

『それであんた、今どこにいるのよ!』
「無論、トーナだ」
『それじゃあ、直ぐには無理ね。あんたの事だから大騒ぎすると思ったのに、意外と冷静ね』
「ヒナ様に仕える従僕が増えるのは喜ばしい事だ。それに、俺はヒナ様の物だが、ヒナ様は俺のものではない」
『従僕って・・・まぁ、良いわ』
「もうすぐ祭りがある。それが終わったら、お傍に行くと伝えてくれ」
『分かったわ』

アヌリは通信を切ると、部屋の窓から夜空を見上げた。

「ヒナ様・・・」

アヌリが見た方向は奇しくも島のある方向であったが、それをアヌリが知る由も無い。
もしかしたら、本能的に察したのかもしれないが。
何にせよ、ヒナの下宿はまた騒がしくなりそうだ。





「ふぇっくしょい!」

急に寒気がして、プルっと来た。湯冷めでもしたかな?
昼間はまだ暑いが、夕方になれば涼しい風が吹くようになってきた。
部屋に戻ると、クロと猫達が固まって寝ていた。
皆を起こさないようにそっとベッドに潜り込み、眠りについた。
次の日、久しぶりに鍵を使ってクレスのお店に行くと、扉が開いた瞬間にタックルを食らった。

「ぐふっ・・・クレス、久しぶりぃ」
「ああん!ヒナちゃんよ!本物よ!」

こんな口調だけど、クレスは男だ。予想以上に力が強い。

「このモフモフ感・・・むふ~」
「こいつ、大丈夫か?」
「ああ、エスト。紹介するね。これがクレス。クレス、エストだよ」

エストが物凄く呆れた顔でクレスをみているが、クレスは何故かドヤ顔だ。
いや、本当に何故?

「いい加減にしろ、この変態」
「ジロー!?」

扉の向こうから現れたのは、ジローだ。
ジローはクレスを私から引きはがすと、エストと握手をした。
ガッチリと握りあう。
二人ともマッチョだから、気が合うかもね。

「どうも」
「ふっ・・・こちらこそ」

長い握手の後、やっと二人が離れた。

「ヒナ、久しぶりだな。元気そうで良かった」
「おかげ様で。エストが色々助けてくれるからね」
「へ~・・・それはそれは」

エストとジローの間に火花が散っている様に見える。
筋肉ライバル!?

「ムッツリ筋肉は放っておいて、案内してちょうだい!」
「まぁ、良いか。こっちだよ」

新しく改装した家兼下宿に着くと、クレスがあんぐりと口を開けた。

「ほんっと、相変わらず凄いわねぇ」
「さぁ、中に入って」

玄関で靴を脱ぎ、新しく設置した下駄箱の説明をしていると、ジロー達が追いついた。

「あ~!ジローとクレスだぁ!」
「かえって来たの?」
「おお、お前達も久しぶりだな」

クロと猫達がお出迎え。
それから全体的な案内をすると、ジローとクレスが二人揃って小さな麻袋を私に渡してきた。

「ああ、家賃?」

袋を開けてみると、それぞれに百二十枚ずつ金貨が入っていた。

「多いよ?」
「十年分よ」
「十年分だ」
「長っ!今からそんなに?生活してみてから決めても」
「そんなの、必要ないわよ」
「ヒナが作ったんだろう?問題あるわけがない」

信頼してくれるのは良いけど、良いのかなぁ?

「貰っておけば良い。もしも途中で出ると言うなら、その分を返せば良いだろ」

なるほど。エスト、賢い。

「わかった。じゃあ、預かっておくね」

二人を二階に連れて行き、部屋を決めてもらう。

「ヒナちゃんはどこのお部屋なの?」
「へ?私は、あっち。建物の半分が下宿で、半分は私達の居住スペースなんだ」
「私」
「達?」
「それって、クロちゃんや猫ちゃん達の事よね?」
「うん。それと、エストもね」
「「はぁ!?」」

何驚いてんだ?

「エストは住み込みで働いてくれているんだから、当たり前じゃん」
「この爺が働く?」
「二百歳越えに爺とは言われたくないがな」
「こら!エストはちゃんと働いてくれてるんだから、爺とか言わないの!それに、私が誘ったんだから」
「な、なんでこんな」
「そうよ!」

二人して詰め寄らないで欲しいんだけど!

「おい、ヒナを責めるのはお門違いだ。お前らが出てった後、ヒナと猫達だけであれだけの畑や果樹園を維持するのは大変だろうが」
「それは・・・」
「そうね。ごめんね、ヒナちゃん」
「ううん。エストが来てくれたおかげで助かってるから、大丈夫!それに、他にも増えたしね」
「「は?」」

クレスと話した時にはエストの事しか説明できなかったからね。
部屋が決まったら皆にも紹介しよう。
やれやれ、一気に騒がしくなったな。
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