異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第六十九話 夏の終わりに

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第六十九話 夏の終わりに


ジローとクレスが参加した日の夜、帰って来たキャロルが加わり大騒ぎとなった。

「ただいまぁ」
「おかえり!ご飯にする?お風呂?」
「ん~、お風呂に入ろうかなぁ」

キャロルの身体には所々擦り傷や痣があった。
かなり頑張ったみたいだ。

「おかえり、なんて言われたの何年ぶ・・・り・・・」

キャロルの視線が、私を通り越して食堂で談笑しているジローとクレスに向かった。

「あぁ~!!」
「ふぇい!?」
「食いしん坊のジローと、ドレスの鬼神クレス!」
「「ブフッ!?」」

キャロルの叫びを聞いて、食堂にいる二人が飲んでいたお茶を噴いた。

「二人とも、二つ名なんてあったんだ・・・ぶふっ・・・教えてくれれば・・・ぐふっ・・・良いのに」

二つ名って響きが既に中二病っぽいが、「食いしん坊のジロー」と「ドレスの鬼神クレス」て!

「俺が名乗ったんじゃないぞ!」
「勝手に呼ばれるようになったのよ!」
「食いしん坊は分かるけど、ドレスの鬼神って?」
「仮縫いが終わってから本縫いまでの間に体型が変わると、鬼のように怒るから・・・だったかな?いや、そんな事は良いのよ!どうしてSランク冒険者と各国の貴族から引く手あまたのドレス職人がここにいるの!?」

二人ともそんなに有名だったのかぁ。凄いなぁ。

「私達も今日からここでお世話になるのよ。仮縫いの話はまぁ・・・本当ね」
「本当なんだ」
「だって、仮縫いから一か月で体重が倍になってたのよ!?思わず別人かと思ったわ!」
「倍・・・」

それは単純に体に悪そうだな。

「まぁ、話しは後にして、お風呂入って来たら?ご飯用意しておくから」
「う、うん。分かった」

暫くしてキャロルが食堂にやって来ると、食堂は更に賑やかになった。

「ああ、あの魔物は」
「あら、あの国はそうなのねぇ」

ワイワイと皆が楽しそうにしているのを見るのは楽しい。

「あ、そうだ」

折角皆揃ったんだし、去年はすっかり忘れていたんだよね。

「花火をやろう!」

夏と言えば、スイカと花火!

「ハナビ?」
「何、それ?」

マジか!この世界に花火って無いの!?

「ヒナ様」
「ひゃあ!?」

突然背後から話しかけられた。
まただよ・・・毎回こういう登場の仕方するんだよね、セバスは!

「この世界には花火はございません。火薬類はありますが、あまり使われておりません」
「火薬はあるのに、使われていない?」

この世界にも戦争はあったらしいし、鉱山等もあるはず。

「火薬を使うよりも、魔法で吹っ飛ばした方が早いので」
「ああ、なるほど・・・」
「私も、知識としてはありますが、見た事はございません」
「それは勿体ない!」

と言う事で、セバスとツバキも参加決定。
驚くキャロルに適当に説明して、いざ初めての花火です!
太いロウソクに火をつけ、水を張ったバケツを用意。

「じゃあ、見ててね」

一本手に持ち、火をつけた。
ぱぁっと色とりどりの火花が散り、皆から歓声が上がった。

「綺麗!」
「ほぉ・・・これは、知っているのと見るのとでは、やはり違いますね」
「沢山あるから、皆もやろう!」

猫達も最初は少し怖がっていたが、ミケがやってみると他の皆も続いた。

「きれい!」
「キュ!」

その中で、まだ怖がっていたコマに線香花火を渡してみた。

「はわわ」

パチパチと細かい火花が散ると、コマの目が線香花火に釘付けになった。

「きれい。あ・・・あぅ」

ポトリ、と落ちて消える線香花火。
悲しそうにそれを見つめるコマ。

「まだ沢山あるからね」
「あい!」

可愛いなぁ。

「うわぁぁあ!」
「な、なんだこれ!?呪いか!?」

そんな物騒な物を出した覚えはないぞ?
声のした方に行ってみると、ジローの足元に黒い物体がウネウネとのたうち回っていた。
よりによってそれを選ぶか・・さすがと言うか、何と言うか・・・。

「それも花火だから、呪いじゃないよ」
「ハナビって、凄いな」

そこで関心されてもねぇ。
キャロルとクレスが意外と意気投合して一緒に花火を楽しんでいるし、セバスとツバキも楽しそうだ。
エストは・・・いた。
縁側に座り、ビール片手に皆を見ている。
エストの隣に座ると、私も一杯。お茶だけどね。

「火薬にこんな使い方があるんだな」

無意識なのか、自分の右膝をさするエスト。
ここに来るまで、エストの右腕は無く、右の足も悪くしていた。
何故そうなったのかは聞いた事がないし、これからも無いだろう。
いつかエストが話してくれたら、とは思っているけどね。
彼の横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。

「ヒナ~!そろそろこれで終わり~!」
「はいはい」

この人数でやると、あっという間だな。

「そんじゃ最後に」

こっちに来てから使うのは初めてだな。
皆から少し離れた場所に移動して、魔力を練る。
両手の間に、淡い光の球が現れた。
上手くいくかな?

「それ!」

その球を空へと放り投げた。
ヒュルルルル・・・パーン!
夜空に光の花が咲いた。
魔力打ち上げ花火、成功!

「わぁ!」
「ヒナしゃま、すごい!」
「綺麗!」

皆喜んでくれたみたいだ。
エストを見ると、その顔には優しい笑みが浮かんでいた。

「もういっちょ」

ヒュルルルルル・・・ドーン!

最初のよりも少し大き目のを上げる。
最後にもう一回。更に大きいのを上げると、音がお腹に響いて来た。
懐かしい感覚に、ちょっとだけ出そうになった涙を飲み込んだ。
来年はリシュナ達も呼んで、アヌリもいて・・・もっともっと楽しくなると良いな。





「ご報告申し上げます!南西の方角に、巨大な魔力の反応を感知」
「人族か?」
「只今調査中ではありますが、魔力量からして人族では考えにくいかと」

ザワザワと声が上がる中、たった一人冷静な男がいた。

「静まれ」

ピタリ、と声が止む。

「魔力反応は三度。そのどれもが、町一つは壊滅出来る程か・・・」
「至急調査を」
「よい。我が行く」
「そのような!」
「それほどの魔力の持ち主。我意外で対応出来うる者がおるのか?」
「それは・・・」
「なに、確かめるだけだ。共に来る事は許さぬ」

威圧を含んだその言葉に、異を唱える者はいなかった。





「いってらっしゃい!」
「いってきまぁす!」
「いってくる」

皆で花火を楽しんだ次の日、扉を繋げてジローとクレスを見送る。
二人にはお昼用のお弁当と転移石を渡しておいた。
転移石の本体にも魔力を登録してあるので、これからは私が迎えに行かなくても自由に行き来できる。
キャロルにもお弁当を持たせて見送ると、やれやれと一息ついた。

「!?」

初めて感じる感覚に、慌てて外へと飛び出した。
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