異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
65 / 141
連載

第七十九話 寒いのに、ご苦労様

しおりを挟む
第七十九話 寒いのに、ご苦労様


「寒いと思ったら、雪か」

昨日、はんてんを引っ張り出しておいて良かった。
クロと猫達を起こさないように部屋を出て、食堂へと向かう。

「さっむい、さっむい」

食堂の真ん中にあるストーブに魔力を込めると、ほんのりと温かくなり始めた。
見た目は普通の筒型ストーブだが、中の熱源は火の魔石だ。
ヤカンに水を入れ、ストーブの上に置く。

「おはよう。ダイフク、ネリ」

プルプルと震える、二匹の小さなスライム。
暑さ寒さもなんのその。

「さて、今日もよろしくね」

二時間後、皆が起きて来た。

「ジローとエストはご飯で、クレスとキャロルはパンね」

それぞれおぼんに乗せ、手渡していく。

本日の朝食メニュー:

和:白米・豆腐とお揚げの味噌汁・鮭・キュウリのぬか漬け・ほうれん草のお浸し。
洋:焼きたてクロワッサン・ハムエッグ・サラダ・コーンスープ。

最近、パン作りも始めました。
やってみると、奥が深いと言うか・・・難しい。

「あ、そうだ。お弁当あるから、持って行ってね」

キッチンのカウンターに、それぞれの名前を刺繍した巾着(アイテムバッグ)を置いておく。
冬にも依頼はあるらしく、冒険者組は今日も各地へ向かう。

「家宝に」
「食べなさい」

アヌリがまたアホな事言うので、釘を刺しておく。
食後、皆がそれぞれの場所へと向かった後だった。
突然、チャイムが鳴った。
必要は無いけど、一応付けておいた見た目程度のチャイム。
食堂から玄関を見ると、すりガラスの向こうに人影が見えた。
因みに、魔王であるベルは、普通に入って来る。

「は~い」

一応探索を掛けてみるが「?」と出るだけだった。
玄関の戸を開けると、セバスとよく似た燕尾服を着て、眼鏡を掛けた男性が立っていた。

「貴様か!魔王様を誑かした泥棒猫ぶふっ!?」

また変なのが来た。魔王様とか言った?
条件反射的に顔を掴んでしまった。

「ヒナ、今変な音が・・・どうした?」
「ベルをたぶらかしたとか、泥棒猫とか失礼な事言われたから、思わず掴んじゃった」

てへっ。

「ちょっと待ってろ。剣もってくる」

剣!?

「いや、剣はいらないから!縄で!」
「縄か」

エストの顔に「不服だ」と書いてありそうだな。

「一応、ベルの知り合いっぽいから」
「ならば、しょうがないな」

少し待つと、エストが縄を持ってきてくれて、男性を縛ってくれた。

「エスト、これ」
「縄、だろう」
「いや、縄だけどさぁ。倉庫の中にある、一番チクチクする奴じゃん」
「こっちでも良かったんだが」

害獣避けの、鉄条網!そんなもん、何処から探してきたんだ!ああ、倉庫かぁ。そう言えば、整理しようと思って倉庫の箱の中に入れておいて忘れてたな・・・。

「それで、コイツどうする?気絶しているみたいだが」
「本当、失礼だよねぇ」

私の手が臭いみたいじゃないか。
どうやら肉球で息が出来なかったみたいだ。エストが縄を取りに行っている間に、気絶しちゃったんだよね。

「吊るしておくか?」
「いや、柿じゃないんだから・・・あ、干し柿も良いねぇ。明日やろうかな」
「柿を干す?」
「秋の味覚を、冬でも美味しく食べられるように保存する方法で」
「アイテムバッグがあるのに?」
「・・・干し柿と言う、美味しいおやつを作る方法です」

秋と言えば、干し柿や栗きんとん等、美味しいおやつの季節である。芋羊羹も忘れずに。

「ああ、あの方法が行けるかも?」
「あの方法?」

台所から壺を持って来た。

「エストも最初食べた時にびっくりしてたよね」
「ああ、あれか」

前に、気付け薬に使えるくらいに酸っぱいと言われた事があった、梅干しだ。
エストに男性の口を開けてもらい、一粒ポイっと放り込んだ。

「んんんんん~!?」

エストが男性の口を手で押さえているので、吐き出し不可となっております。
あ、一応種なしなので、喉に詰まらせる心配は無いです。
ゴクン、と飲み込む音が聞こえて来て、やっとエストが手を離した。
もしかして、結構怒ってる?

「貴様!何を飲ませた!?毒か!?」
「どっちかって言うと、薬だね」
「ああ、胃がもたれた時とか」
「二日酔いとか」

小さい頃は、梅肉が薬だった。
お腹が痛い時とか、お祖母ちゃんが爪楊枝にちょこっとつけて、舐めさせてくれた。
こっちでも作れるかなぁ。

「ふざけるな!」

う~ん、どうしたもんかなぁ。
ベルには通信のイヤーカフスは渡してないしなぁ。
どうしようかと思っていたら、玄関の扉が勢いよく開いた。

「ヒナ!」

噂をすれば、ベルだ。

「ベル。丁度良かった。これって、ベルの所の人?」
「遅かったか」

ベルが急いで靴を脱ぎ、食堂までやって来た。

「ベルガシュナード様!このような者どぐふぅ!?」

ああ、せっかく意識を取り戻したのに!
ベルの右ストレートを受けた男性は、また意識を失ってしまった。

「本当にすまない!」

勢いよく頭を下げるベル。

「この馬鹿が何かしなかったか?」
「大丈夫、大丈夫」
「ベルを誑かしたとか、泥棒猫と呼んだらしい」

エスト、余計な事を言わない!

「・・・吊るしてくる」
「ちょい!」

何!?吊るすのが流行りなの!?
なんとかベルを宥めて、お茶を出した。
すると、最近こっちに来る事が多くて、臣下からあまり良く思われていない事を話してくれた。

「魔王としての仕事はきちんとやっているのだが、その・・・」
「まぁ、自国の王が頻繁に他国へ行くというのは、あまり良くはないか」

この島はどこの国にも所属してはいないけれど、人族の国の上だしね。

「う~ん、島を動かす?」
「そんな事が出来るのか?」
「出来るよ」

と言う事で、引っ越しが決定しました。





ツバキに相談してみると、意外な言葉が帰って来た。

「あんまりお勧めしないわぁ」
「どうして?」
「魔の地域は、魔力が安定しないのよぉ。だから、少なからず影響が出ると思うのぉ」

ツバキによると、大気中の魔力が安定せず、作物に影響が出る可能性がある。
最悪、猫達やジロー達にも出るかもしれない。

「それは困るなぁ」

魔族の領域を含めた世界地図を見せてもらった。
世界の三分の一くらいかな?が、魔の領域と呼ばれる、魔族の国だった。

「ここって、島だよね?」

境目から一番近い、こちらの領域に島があった。近いとは言え、結構な距離があるけど。

「ああ、そこがヒノモトよ」
「おお!ヒノモト!」

ジロー達から聞いて、行ってみたいと思ってたんだ!

「行きたい!」
「そうねぇ。この辺りなら、影響も無いと思うわぁ」

ヒノモト行き、決定!
ここからは三日程かかるらしく、ベルはそれまでに臣下を説得する事になった。
一応、転移石とイヤーカフスを渡しておいた。

「また、三日後に」
「気を付けてね!」

ベルは縄に縛られたままの男性を小脇に抱え、帰って行った。

「ヒナはそんなにヒノモトに行きたかったのか」
「元の世界にいた国に似てるみたいだしね」
「元の世界?」
「へ?あれ?言ってなかったっけ?」

ジローとクレスの事を話した時に・・・ああ、言ってないわ。

「転生者・・・こっちだと、渡り人、だっけ?それでぇす」
「は・・・はぁ!?」

あははははは・・・まぁ、そういう事もある!
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。