異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第九十六話 守りたい

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第九十六話 守りたい


「う、わぁ、これ、結構長くない!?」

猫達の秘密基地に通じるという滑り台。予想以上に長いんですけど!
所々にある灯りのおかげで怖くはない。
緩く左にカーブしている気がする。
くる~っと一周した頃、やっと下にたどり着いた。

「な・・・長かった・・・って、うわぁ~!」

床から視線を上げると、広い部屋が広がっていた。
淡いクリーム色の壁に、淡い桃色のフワフワの絨毯。天井にはおさかな形クッキーの形をしたライトが吊るされ、全体的にファンシーな雰囲気になっていた。

「かわいい~!」

「「「「いらっしゃいませ!」」」」
「ませ!」
「キュ!」

小さなテーブルやクッションも置いてあるし、ロフトもある!

「お茶を」

部屋の奥から、ノアが出て来た。

「ノアには、私の補佐として喫茶店を手伝ってもらっています。仕事を覚えるのも早く、とても助かっています」

ノアからお茶を受け取り、一口飲んでみた。
お茶の葉を入れ過ぎたのか、かなり濃い上に渋い。だが、味なんて関係ないさ!

「ありがとう、ノア。美味しいよ」

私がそう言うと、ぱぁっと笑顔になったノア。
少しずつ、感情が出始めているのがとても嬉しい。
それから皆に部屋の中を案内されて、ほんわかした時間を過ごした。

「そう言えば、どうやって上に戻るの?まさか、あの滑り台を歩いて?」
「こちらにエレベーターがございますので」

ここで、じゃあ降りて来るのもそれで良いのでは?とは言っちゃ駄目なんだろうな。
釈然としないまま皆でエレベーターに乗り、喫茶店の中へと戻って来た。

「そう言えば、ニャゴレンニャーが前に言っていた、島の防衛って事?」
「その一部ですね。彼等は畑の平和を守る為の組織ですから」
「まぁ、武器がクワとか鎌だしね」

基本的に、ニャ種から生まれた子達に戦闘能力は無い。
家のお手伝いや、畑や庭のお世話等を手伝う。
喫茶店の外に出ると、もうそろそろお昼と言ったとこか。

「島には結界もございますので、危険な事は滅多にございませんから」

この世界は飛行技術が失われているらしいし、リシュナや魔王は別格だ。
ジローを追って来たカムラは異例と言える。
とは言え、島を守る術はあった方が良い。

「危険と言えば、そろそろ農具の手入れをしないとなぁ」

手入れの道具はスキルで手に入れる事は出来るが、専門の知識がない私では、ちゃんと出来ているかがわからない。
ゲームの頃みたいに、粉を掛けて研いでピカー!とはいかない。

「そういえば、冒険者組の方々が、島に鍛冶職人がいたら良いのにと仰っておりました。武器や防具等の手入れが必要ですからね。町によって鍛冶師の腕も違いますし、依頼の途中だと場所によっては手入れすらできませんから」

森の中の依頼で、剣が欠けたり折れたりしたら大変だ。

「鍛冶師って言うと、ドワーフ?」
「そうですね。ですが、ドワーフは一族総じて気難しい事で有名ですので」
「島に来てくれるかどうかは、微妙なところだね」
「はい」
「ドワーフと言えば、お酒ってイメージだなぁ。ドングリ渡したら、来てくれるかな?」
「ああ、そうですね。あれならば、喜んで来るかもしれないですね」

リシュナも大好きな、ドングリのお酒。
普通の人ならお猪口一杯で卒倒する、かなり強いお酒だ。
リシュナ曰く、強いだけでなく美味しいらしい。私には強すぎて分からん。

「まぁ、暫くは畑で忙しくなるから、当分先の事だろうけどね」
「ドワーフが多く暮らす山はヒノモトから少し距離がありますから。どちらかと言うと、アルガバイスの方が近いですね」
「学問の都市かぁ。賢者だっけ」
「本当にいるのなら、一度お会いしたいですね」

セバスにしては珍しい。島の事意外にあまり興味を示さないのに。

「そろそろ、将棋の相手がいなくなりそうなので」
「なるほど」

さすがと言うか・・・。あっという間に将棋を覚えたセバスは、今のところ島で最強だ。
少し前はノナさんと互角だと言っていたのに。

「ベルは?」
「あのお方は、顔に出すぎるので。よくあれで魔王をやっていられると、心配になります」
「おぉう、相変わらずの粗塩」
「当然です」

セバスは、ベルが島にやって来た時に私を攻撃しようとした事を、未だに怒っている。
意外とねちっこい。

「ヒナ様。今、意外とねちっこいな、と思いました?」
「ふぇ!?い、いやぁ」

誤魔化そうと思ったが、セバスに手を取られてしまった。

「ヒナ様は、唯一無二の我等が主。最後の希望と言っても過言ではないお方。そのお方に牙を向けるなど、許しがたい」

いつになく真剣な眼差しで見つめられる。
大げさだよと笑う所だが、意外と的外れでもないから笑えなかった。
この島やセバスの動力は魔力だ。
今は私が入れた魔力で保っているが、数百年後、私が死んだ後は・・・。
島やセバス達を維持できる程の魔力量だと、転生者くらいしかいない。
憂いを帯びたセバスの声に、胸の奥が痛んだ。

「しかも、あの時ツバキが遅れたせいでちゃんとした映像が残っていない!」
「そこ!?」
「ヒナ様がこの世界に来た時からの映像があれば・・・」

胸の痛みが一瞬で消えた。

「はいはい、皆、ご飯にしようねぇ!」

セバスが手を離してくれたので、皆と先を歩く。
種を植えたばかりの畑に、エストがいるのが見えた。

「うわっぷ!」

エストに手をふると、突然強い風が吹いた。

「出来うる事なら、貴女が受けた痛みや悲しみから、守って差し上げたかった」
「ん?何か言った?」

セバスが何か呟いたけれど、風の音で聞こえなかった。

「いいえ」
「そう?」
「私は島の巡回に戻りますので、御用がございましたら何時でも、イヤーカフスでお呼びください」
「たまには一緒に食べれば良いのに」

セバスは食べ物を受け付けないわけではない。いつも、必要ないからと言われる。

「私の心も身体も、ヒナ様で満たされておりますので」
「ごめんなさい。私が悪かったです」

恍惚とした表情のセバスに、アヌリを思い出した。勘弁してください。

「はいはい。じゃあ、いってらっしゃい」
「・・・はい、いってまいります」

セバスは綺麗にお辞儀をすると、そのまま背を向けて来た道を戻って行った。
どうやら送って来てくれたようだ。
素直じゃないと言うか、偶に変な言動が出るんだよね。
あれで人工知能だと言うから、彼を作った道明寺さんは何者だったんだろうねぇ。

「ヒナさま?」
「ん?ああ、ごめん。ご飯、ご飯!」
「ごはん~」
「キュ~」

賢者かぁ。
セバスの楽しみの為にも、アルガバイスに行ってみようかな。
それまでは、ノナさんに頑張ってもらおう!
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