異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第九十九話 一途な賢者

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第九十九話 一途な賢者


「ちょっと待ってください。何処へ行くんですか?」

お爺さんの後を追って図書館を出た。意外と足が速い。

「んんん・・・知らん」
「へ?」
「その知り合いとやらは、何処におる」

どうやら来てくれるらしいが、この人が賢者?
イメージ的には、まぁ、それっぽいかも?

「えっと・・・お空の上?」
「わしゃまだ死なん」
「いや、そう言う意味では・・・ちょっと待ってね」

とりあえずセバスに連絡を取ってみる事にした。

「もしもし?」
『ヒナ様、どうかされましたか?』
「賢者っぽいお爺さんを見つけたんだけどさ」
『ほう』
「将棋も知ってるし、どうしたもんかと」
『賢者っぽいのですか?確か、ヒナ様は鑑定スキルをお持ちですよね?』
「持ってるけど、人に使うのは・・・覗き見しているみたいで嫌」

つい気になって、は言い訳にならない。悪党は別だけど。

「あ、賢者様こんにちは」
「ん」

ん?

「お、賢者様!今日は早いんじゃないか?」
「まぁ、の」

通りがかる人が、お爺さんを「賢者様」と呼んで声を掛けている。

『ヒナ様?』
「あ~、うん。本物、かな。今からそっち帰るね」
『賜りました』

通信を切ると、お爺さんがまた別の人に声を掛けられていた。

「賢者様、子供の頭を撫でてくださいませ」
「んん。良き、人生を」
「ありがとうございます」

お爺さんが赤ちゃんの頭を撫でてあげると、母親は嬉しそうにお礼を言って去って行った。

「賢者様?」
「そう、呼ばれておるが、ただの長生き爺だ」

いや、あだ名じゃないんだから。

「行くのか、行かぬのか」
「あ、ああ。はい。行きます。でもちょっと人目があるので、こっちへ」

お爺さんの手を取って路地裏に入り、転移石を発動させた。

「おかえりなさいませ」

セバスがお出迎えしてくれた。

「ただいま」
「そちらが・・・おや?貴方は・・・」

セバスがお爺ちゃんをじっと見つめた。

「確か、コットさんでは?」
「んんん。儂の名を知るのか」
「アールノルの王城で、数度お見掛けした事がございます。当時はキッチンの下働きで、ジャガイモの皮が上手く剥けないと、よく泣いておられました」
「へ?」

アールノルは、この島を作った道明寺さんが聖女として召喚された国であり、千年程前に戦争で滅んだ。

「まさか・・・セバスティノーブル殿か!」

何て?セバスティ・・・そう言えば、セバスの名前は本来長かったっけ。
私が覚えられなかったから、セバスにしてもらった。
と言うか、まさかの知り合い!
そして、このお爺ちゃん、千歳越えでした。





立ち話もなんだしと、お爺さん・・・コットさんを食堂に案内した。
出したお茶に目を見開いて驚いていたが、見てみぬふりをしておく。

「いやぁ、お懐かしい」
「お互い、よく生き残った」
「実は私、人ではないので」
「んんん」
「セナ様によって作られた、人工生命体です」
「ほ」

会話の文が物凄く短いが、どうやら通じているので大丈夫だろう。

「この島はセナ様が作られた島です」
「生きておられたのか」
「いいえ、残念ながら。あの大戦で。王子と共に、この島で眠っておられます」
「・・・儂は、仕入れで国を離れておった。大戦の後に奉公に入った家が魔術師の家だった。そこで魔法を学び、いつしか賢者なんぞと呼ばれるようになった」
「そうでしたか」

途中がすっぽ抜けた感じがするが、千年分の身の上話は大変そうだ。

「して、あれは?」
「あのお方は、ヒナ様です。私とこの島の恩人であり、主です」

私は邪魔するといけないので、一人でカウンターに座っている。
でも耳が猫なので、時々会話が聞こえちゃうんだよなぁ。

「不思議な魔力。セナ様に似ておる」
「ヒナ様も異世界からこられた方ですから」
「獣人」
「召喚ではなく、転生、と言った方が良いでしょう」
「ふむ」

セナさんの事も知っているし、セバスが私の事を話すと判断したのなら、別に良いか。

「セバス、良いの?」
「この方なら大丈夫だと判断しました」
「はいよ」

イヤーカフスの魔力を切り、元の姿に戻った。

「ほ!」

コットさんが私の姿を見て、目を見開いた。
大丈夫かな?心臓止まったら、流石にポーションは効かないぞ?

「んんん」

おお、大丈夫そうだ。

「その姿・・・始祖の血か。あれが見たら、卒倒しそうだ」
「あれ?」
「修行の旅で出会った、エルフだ。幼い頃、始祖に仕えておったとか言うておった」
「もしかしてそれって」
「ノナ、とか言うたか。煮ても焼いても食えぬ」
「ほう、そいつは酷い言われようだのぉ」

噂をすれば!?
ノナさんが食堂に入ってきた。

「ヒナ、新茶が出来たで持って来た」
「あ、ありがとう」
「それにしても・・・懐かしい魔力を感じて来てみれば、コット坊じゃないか」

コットさんが口をパクパクと、金魚みたいになってる!

「求婚までしてくれたってのにねぇ」
「求婚!?」
「そうさ。魔術師の師匠と修行の旅だとかで、村に一年滞在しておってのぉ」

世界は狭いと言うか、なんと言うか・・・。

「村一番の美女に一目ぼれ。会った瞬間に求婚とは」
「くぁ!」

コットさんが両手で顔を隠し、コタツに突っ伏した。
まぁ、そりゃそうだよなぁ。
数百年前の傷口を抉られ、塩コショウどころかお酒ぶっかけられた感じだろう。

「むむ、村一番が聞いて呆れる。婆!」
「爺に言われたかないね!」

私から見たら、どっちもどっちだ。
ギャアギャアと言い合う二人。
ジローとクレスを思い出す。この二人も多分、本気で仲が悪い感じではないんだろうな。

「ヒナ殿!」
「はい!」

へ?突然こっち!?

「ここは下宿だと聞いた。儂もここに住む!」

何故そうなった!?

「金ならばここに、丁度金貨百二十枚ある!」
「うぇぇ、あぁ、はい」

思わず受け取ってしまった。
まぁ、セバスとノナさんの知り合いだし、良いか。

「でも、良いんですか?住んでる所があるのでは?」
「無い」
「へ?」
「しいて言えば、図書館か」
「どうせ、面倒で帰っておらんだけだろう。お主は昔から気になる事があると」
「お主とて」

ああ、また始まった。

「時計塔の一室に間借りしているそうです」
「へぇ~!隠れ家みたいで良いね!」
「荷物はアイテムバッグに入れてあるので大丈夫らしいですが、色々と手続きがありそうです」

図書館に部屋を出るって言わないといけないだろうな。

「まぁ、行こうと思えば転移石で行けるもんね」
「その・・・申し訳ございません」
「ん?」
「私の我儘でヒナ様のお手を煩わせたあげく、人が増えてしまいました」
「いやいや、全然我儘じゃないよ!それに、凄い縁じゃない?千年前の知り合いに会うとか!ノナさんとも知り合いというか・・・」

チラリと見ると、二人ともまだギャアギャアと言い合っている。
でも、どこか嬉しそうな感じなんだよなぁ。

「せっかくのご縁でしょう?ちゃんと結んでおかないと」

縁と言うのは不思議な物で、毎日色々な縁がある。すれ違うだけの物から、連絡先を交換する物まで。
その縁は、引っ張っても解けない固結びなのか、ちょっと触っただけで解けるのか。
どう頑張っても切れてしまう縁もある。結べる時に結んでおかないと、「もう一回」がなかなか難しいのだ。

「ありがとうございます」
「そう言えば、本当に賢者なの?」
「そうみたいですね・・・色々な意味で一途な方みたいなので」

セバス・・・せっかくのしんみりシーンでぶち込んで来るはやめようね!
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