異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第九十八話 学園都市アルガバイス

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第九十八話 学問都市アルガバイス


「おぉ~、ここがアルガ・・・なんとか!」

森の中、城壁に囲まれた学園都市アルガバイス。
島を移動させ、いつもの様にモチに森の中に下ろしてもらい、町までやって来た。獣人の姿で。
石造りの街並み。
五軒に一軒は本屋じゃないかと思うくらい、あっちにもこっちにも本屋がある。

「あ、料理の本!」

店先に並べてある本の一冊に「俺の飯」と書かれた本があった。
パラパラとめくってみる。

「塩を適量、野菜は手で千切るか手刀。手刀?」

全然参考にならない。
置いてあった場所に戻し、ポケットからメモを取り出した。
キャロルに描いてもらった、この町の地図・・・のはず。
いびつな二重丸と、「ここ!」と書かれただけのバツ印。

「冒険者って、マッピング必須じゃなかったっけ?」

分かり辛さよりも、心配になるな、これ。
それとも、マッピングのスキルを持っているのか?
いつもスキルを使っているから、実際に地図を描くのは下手・・・だと思いたい。

「う~ん・・・」

聞いてみるか。

「あの、すみません」
「はい?」

通りすがりの女性に声を掛けてみた。

「アルガバイス大図書館はどう行ったら良いですか?」
「ああ、それならあの大きな建物だよ」

女性が指した先には、大きな時計が付いた塔があった。

「あの時計塔がそうだよ」
「ありがとうございます」
「留学生かい?がんばってね!」

お礼を言うと、女性は笑顔で去って行ってしまった。

「留・・学生って」

学生時代なんて、遠い昔なんだが・・・まぁ、良いか。

「あれを目指せば良いんだよね」

暫く歩くと、図書館の全様が見えて来た。
大と付くだけあって、お城の様に大きな石造りの建物だ。
木製の扉を開けて入ると、受付があった。

「えっと・・・」
「こちらは初めてですか?」

受付のお姉さんが声をかけてくれた。

「はい」
「では、身分証の提示をお願いします」

腕輪をお姉さんに渡すと、彼女が透明な石の板の上に腕輪を置いた。
板が一瞬光ると、腕輪を返してくれた。

「これで図書館の利用が可能となります。では、ご利用案内をさせていただきます」

お姉さんが説明してくれたのは、次の通りだ。

・本には、貸出し可の物と不可の物がある。
・図書館の出入り口には魔法の結界があり、貸出し手続きがされていない本や貸出不可の本を持ち出そうとすると、外に出られない。
・貸出は町の中だけであり、町の外へ持って出ると犯罪になる。

「例えば、アイテムバッグの中に入れて持ち出した場合は?」
「その場合も、勿論犯罪になります。アイテムバッグから取り出した瞬間、腕輪に登録されますので」

なるほど。
貴重な本をアイテムバッグに入れて盗んだとしても、取り出せばバレる。

「因みに、全ての本に返還魔法が掛かっておりますので、返却に来ていただく必要はございません。延長したい場合は、期限前に一度こちらまでお越しいただく必要がございます」

それは便利だ。
返しに来る手間がないのは、ありがたい。
向こうの世界でもこの魔法があれば、小さい頃に借りた図書館の本を大学生になって発見したは良いけど、怖くて返しに行けない・・・なんて事にならないだろうな(友人の話です)。
お姉さんの説明を全部聞いて、いざ中へ!

「(うわぁ~!凄い!)」

図書館の中ではお静かに。心の中で叫んだ。
壁という壁が本棚になっていて、かなり高い天井まで伸びている。
その他にも、見渡す限りに本が詰まった本棚が並ぶ。
一番上のやつ、どうやって取るんだろう。

「さて、図書館に来たんだから、少し本を・・・」

どんな本があるか聞いてみようか。それとも、適当に見て・・・ん?
適当にウロウロしていると、それぞれの本棚に梯子が立てかけてあるのが分かった。
どうやらこれを使って上の方の本を取れと言う事らしい。

「これ、結構大変だと思うけど」

建物の二階分くらいありそうな高さの本棚に、梯子で登れとか。

「子供やお年寄りが下りられなくなったらどうす・・・」

元の世界だったら「安全対策が」とか「子供に優しくない世の中が」とか大騒ぎになるだろうな・・・なんて考えながら上の方を見たら、人影が見えた。
よく見ると、梯子がプルプル震えている。
周りに図書館の人は・・・誰もいない!
人を呼びに行っている間に落ちたら大変だしなぁ。

「やれやれ」

隣の本棚の梯子が直ぐ側にあった。
手で押すと、スルスルとスライドできた。
プルプルと小刻みに揺れる梯子の前に持ってきて、登り始める。
どんどん遠ざかる床。
確かこの辺だったかな。

「あのぉ、大丈夫・・・じゃなさそうですね」

振り向いて声を掛けると、梯子の一番上に小さなお爺さんがちょこんと座っていた。
ノナさんくらいかな。
白い髭に、長く白い髪を一つで結び、濃い藍色のフード付きローブを着ている。
プルプルと小刻みに震えているのは、怖さからか?

「大丈夫ですか?」
「んんん~?」
「自分で降りれます?」
「んんん~・・・無理」

ですよねぇ。

「ちょっとそっちに行きますね」

天井と本棚には少し間があり、私なら余裕で入れるし、広さも十分ある。
梯子から飛び移ると、お爺さんを抱え上げて座らせた。

「なるほど・・・下りれぬならば、更に上がれば良いのか」
「いや、下りるけどね」

ポーチの中から一番大きな風呂敷を取り出し、広げる。

「ちょっと我慢してね」

背中に背負う事も考えたが、お爺さんのしがみ付く力が下までもつとは思えない。
元の姿ならノナさんみたいに片手で抱えられるが、今は無理。
お爺さんを風呂敷の中心に置いて、四方を合わせて結ぶ。
荷物扱いで申し訳ないけど、少し我慢してもらおう。
首と右腕を通し、袈裟懸けにした。

「じゃあ、下りるね」
「ん」

中から声がしたので、大丈夫だろう。
ゆっくり、揺らさないように梯子を下りていく。
ようやく床に足が着くと、風呂敷を置いて結びを解いた。

「到着。大丈夫でした?」
「ん・・・長く生きてきたが、良い経験をした」
「あはは」
「礼を」
「そんな大した事してな」
「れ・い・を」

えぇ~、凄まれた。

「う~ん・・・じゃあ、賢者の事が書いてある本とか、何処にいるか知っていたら・・・は、無理か」
「知ってどうする」
「セバ・・・知り合いが、将棋・・・あ~・・・」

どうやって説明しよう?ボードゲームは英語だし、チェス・・・この世界にあるのか?盤上の遊び?

「将棋・・・か。耳に久しい」
「え、知ってるの!?」
「渡り人が伝えようとした。難しくて廃れた」
「あらら」

これだけ本があるのだから、渡り人の伝承とかもあるのかな。
それにしても、廃れたって。まぁ、難しいもんなぁ。
広めるなら、リバーシとかの方が良かっただろうに。

「将棋の相手を探しているんだけど、賢者と勝負してみたいって言っててねぇ」
「他人の為、か」
「偶に言動が変だけど、お世話になってるから」
「では、行くぞ」
「へ?」

お爺さんが出口に向かって歩き始めてしまった。

「早う」
「ちょ」

叫び掛けて、慌てて手で口を塞いだ。
ここは図書館。お静かに。
何だかよく分からないけど、とりあえずついて行く事にした。
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