異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百二十六話 弓大会

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第百二十六話 弓大会


それは、ほんの些細な好奇心からだった。

「ジローって、エルフだよね?」

晩御飯の後のまったり時間。

「ん?どうした、急に」
「私がいた所では、エルフと言えば弓だったんだよね」
「‥‥‥」
「森、弓、精霊魔法的な?」

勝手なイメージだけどね。エルフと言えば線が細く、動物は友達だから狩りをする人間は野蛮!みたいな。まぁ、目の前のエルフはガチマッチョと言える程にガッチリ体形の上に、冒険者だからなぁ。

「‥‥ぷっ‥‥あはははは!」

私の隣でお茶を飲んでいたクレスが、こらえきれなくなった様に笑い出した。

「確かに、エルフと言えば弓よねぇ!森に住んでるってのも、間違いではないし」
「エルフの里は森の中にある事が多いですね」
「あ、やっぱりそうなんだ」

意外と的外れでは無かったようだ。
でも、ジローが使っているのは剣だ。弓を持った姿を想像してみたが、微妙に似合わない気がする。

「見てみたい!」

せっかく異世界に来たんだから、王道ファンタジー系を見てみたい!
と言う事で、翌日、皆で弓大会が行われる事になった。
アスレチックの一角に的と弓を用意し、準備万端。

「誰からやる?」
「はいは~い! 私やってみたい!」

キャロルが名乗り出た。
用意した弓は、この世界で至って普通の狩り等で使われる弓。
女性でも引けるらしいが、冒険者であるキャロルには軽いだろう。

「ん~‥‥」

キャロルが狙いを定め、やを放った。

「あ~、やっぱり難しい!」

結果は、的が付けてある板の端に当たって、地面に落ちた。
キャロルの武器も剣だったな。

「次は私ね」

次はクレスだ。ハーフエルフだって聞いた事がある。耳が尖っていないので、見た目は人族だ。

「‥‥」

お、意外と様になってる? 弓を構えた姿は中々のものだ。
ヒュン! と矢が飛び、真ん中ではないものの、上手いと言える場所に刺さった。

「「おお~!」」
「施設にいた頃は、狩りもしていたのよ? 随分昔の事だから、腕は落ちちゃったけどね」

落ちてコレは凄いと思う。

「次は私ですね」

アヌリか‥‥そう言えば、彼も冒険者だった。何かと言うと「踏んで」と言うアヌリ。一応、ジローと同じSランクの冒険者だ。
スパン! と良い音がした。的を見てみると、ほぼ真ん中に矢が刺さっている。

「おぉ、凄いね!」
「ありがとうございます、ヒナ様」

今のところ、アヌリが一番か。
後は、エストとジロー。

「じゃあ、俺が」

次はエストだ。こういう時、真っ先にやりそうなジローが最後。
弓対決の話が出た時からずっと黙っているんだよなぁ。かなり自信があるのか‥‥。
エストの武器は、大剣。騎士団を引退してこの島に来たが、時折縁側で磨いているのを見る。
畑仕事の後に鍛錬していたり、いまでも身体を鍛えている。
スパン! と音がして、エストの放った矢が的のど真ん中に刺さった。

「おお! 流石!」
「すっご~い! 師匠、今度弓教えてください!」
「俺は専門じゃないが、騎士団でも教えていたから、ある程度使えるようにはできるぞ」
「ありがとうございます!」

さて、最後はジローか。

「‥‥‥」

無言で弓を構えるジロー。黙っていれば、イケオジである。
スパン! と良い音がした。的を見ると‥‥矢が無い。

「ん?」
「ぷっ・・・ヒナちゃん、あっち、あっち」

クレスが笑いを堪えながら指したのは、的とは全然違う場所に植えた木だ。
よく見ると、幹に矢が刺さっている。

「くっぬぅ」
「あはははは! この筋肉エルフ、昔っから弓だけは駄目なのよ!」
「うるさい、クレス!」

下手だから、ずっと黙っていたのか。

「因みに、私達、精霊魔法は使えないわよ?」
「エルフが精霊魔法を使う為には、幼い頃に精霊と契約する必要があるんだが、俺達はその前に孤児になったからな」
「親や大人のエルフが契約の補助をするらしくてねぇ」
「そうなんだ‥‥中々難しいんだね」
「ガッカリしただろ。エルフなのに弓も精霊魔法も使えないなんて」
「へ? 別に? だって、私のいた所はここからすると、異世界でしょう? そんな異世界の物語に出て来る様な事だもの。言い出しっぺの私が言うのも何だけど、弓や精霊魔法が使えないと言われても、へ~って感じかなぁ」

エルフだって、得手不得手は十人十色。
異世界出身の私がこの姿なんだから、弓や精霊魔法が使えないエルフくらいいるだろう。

「ふふふ。ヒナちゃん、大好き!」
「うぐっ」

突然クレスに抱き着かれた。まぁ、いつもの事だけど。

「あの単純筋肉マッチョ、本当の事を言ったらヒナちゃんにガッカリされるんじゃないかってへこんでたのよ?」
「ク~レ~ス~!」
「キャ~!」

ジローとクレスの追いかけっこが始まってしまったので、放置しておこう。

「やれやれ」
「そう言えば、ヒナは弓できるの?」
「やってみた事あるけど、無理だった」

ゲームの中で、唯一装備不可だったんだよねぇ。

「ヒナにも出来ない事ってあるんだねぇ」

しみじみ言われた。

「そりゃ普通にありますよ」
「そんなヒナ様も、素敵です」
「はいはい。さて、そろそろお昼ご飯にしようか」
「は~い!」
「では、あの馬鹿二人を連れて参ります」

弓大会が解散となり、エストとキャロルは家の中へ。アヌリは二人を追いかけて行った。

「的はそのまま置いておいても、良いかもな」

キャロルが練習したそうだったしね。
矢を回収していると、ふと的が目に入った。

「弓は装備不可、だったんだけどねぇ」

手に持っていた矢を、そのまま的に向かって投げた。
矢は真っ直ぐに的に向かって飛び、見事真ん中に命中。そのまま貫通して地面に刺さった。

「良い子は真似しちゃ、駄目ですよぉっと」

さ、お昼ごはん、お昼ごはん! 新しい的を置いて、食堂へと向かった。
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