アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

文字の大きさ
109 / 112
エンド・オブ・ザ・ノースランド

最後の戦い

しおりを挟む
幸乃は1人で雪の中道を進む。
 手にはマメができていた、それを見て幸乃は思い出す、肩に乗っていたシェリン

 ストレンセでも、フィテアトルでも幸乃はベルやリルカ達と時間がある時に

 時にはきついと思うようなこともあった、しかしベルやリルカの足を引っ張りたくないという気持ちだけで

「ベルちゃん、リルカ、みーくん、私絶対に勝つから」

 拳を強く握って幸乃は決意する。


 雑兵が時折現れては交戦、そして難なく撃破していった。
「お前さん、いまさらだが腕を上げたのう」



「確か、この近くのはずなんじゃが」
 ベル、リルカ、ミリートに敵の対決を任せて1人北へ北へ幸乃は道を進んでいく。あたり1面の雪景色、時折吹雪のような強風が吹き荒れる。そのたびに厚手のジャンバーをぎゅっと羽織る。

(やっぱり寒い……)

 凍えるような寒さの中気力を振り絞り幸乃は1人進んでいく。
 ベルたちといたころは空に雲はかかっていなかったがいつの間にか漆黒の雲に空が覆われていた。

(真っ暗で怖い、1人で大丈夫かな──)

 どこかおびえるような口調で幸乃は囁く。彼女の心には孤独感がうっすらと芽生えていた。
 思えばこの世界に来た初日からベルは仲間となっていた、そこからはベルやリルカと一緒にずっと行動して今はミリートもいる。
 そしてその3人はここにはいない、そのため今の幸乃は孤独を感じていた。

(ダメ、みんな必死に戦っているはず、シェリンだっている私がこんな気持ちになってどうするの!!)

 そんな気持ちを振り切って幸乃は進む、今頃みんなはこの世界のために強い敵に必死になって戦っているはず、だから自分だけ根を上げるわけにはいかなかった。

 3時間くらいだろうか、そのくらい歩くと雰囲気が変わってきた。

(気味が悪いよ──)

 今度は雪まで黒くなってきた、クマなどの生き物は一切いない無音の世界。さらにまた冥王兵たちとも遭遇し交戦状態となるわけだが──

「やっべ、こいつらさっきより強い」

 さっき戦った時より数段強くなっていた。何とか勝利したものの何度かつばぜり合いに負け一歩間違えればピンチになるような状態だった。さっきより強くなっているのが肌で感じた。

「さっきより強い敵近づいているのう……、 奴に」

 シェリンがそうつぶやくと幸乃はさらに20分ほど歩く、しだいに道は暗くなっていく
 雰囲気がピリピリとする、無意識のうちに感じ取る、強大な敵が迫っていることを──


 黒い輝きがあった。
 2メートルのどの背丈で人のような形をしていた。

「貴様か、今まで我のしもべたちを倒して来た女というのは」

「うっ──」

 その声に身体を凍て着かせるような恐怖を感じる。
 幸乃は呼吸を落ち着かせて動揺を抑える。
 その表情は今までにないほど強ばっていた。幸乃は知っていた、この人物が誰なのかを。

 目の前にいたのは黒く輝く人影、その眼はまっすぐに幸乃を見つめていた。
 その人物から湧き出る漆黒のオーラ、圧倒的な強さを持っていることが彼を見るだけで理解することができた。

「あなたでしょ、冥王──」

 幸乃の言葉に彼は堂々と首を縦に振る。
 彼こそが幸乃達が打ち倒さんと探し求めていた世界を暗黒に染めようとしている存在、冥王だった。

「あなただったのね、じゃあ話は早いわ。幹部たちはすでに私たちが倒した、あとはあなただけよ」

 そして自身の剣を手に取り構える。するとそのそぶりを見て冥王がにやりと笑い言葉を返す。

「しかし不明な点がある、私の強さを知ってもなお何故剣を抜くのだ? 貴様も我と出会ってすぐに力量の差など理解できたであろう」

「見透かされないように強がっていたはずなんだけどね……」

 幸乃にはわかっていた。今までの経験から2人の間のどうしようもない力の差を。
 世界を暗黒に塗りつぶそうとしている敵。その圧倒的な強さ。
 だからおびえていた。どうしようもない実力の差を理解していたから。
 恐らく冥王はここで幸乃が引き返せばそれを見逃してくれるだろう。

(意外と優しいとこ、あるんだね)

 確かに怖い、彼の視線を感じるだけで身体が震え出し、冷や汗がどっと背中から噴き出す。
 膝ががくがくと震える。

 初めてだった、これほどまでに戦いその物に恐怖を感じたのは。

「さあ、本当に戦うのか? しっぽを巻いて逃げるなら今のうちだ」

 幸乃は精一杯のカラ元気の状態で作り笑いの笑みを浮かべる。

「そんな覚悟がなかったらここには来ないよ、私をここに来させるためにみんなが必死になって戦っている。そんな私にいまさらそんなことを聞くわけ?」

 明確な敵意を表し自身の剣を冥王に突きつける。

「確かにそうだ、この問答は不要だったな?」

 幸乃の全身が、本能が全力で鳴き叫ぶ。
 心臓が爆発しそうな恐怖を感じる!!

 逃げたい!! 逃げたい!! 逃げたい!!

 本能がそう悲鳴を上げる、そして最後に心が叫ぶ。

 じゃないと、ここで間違いなく死ぬ──と。
 そんな叫び声に幸乃は歯を食いしばりそのプレッシャーに向かい合う

 そして、最後の戦いの火ぶたが切って空けられた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...