【完結】これはきっと運命の赤い糸

夏目若葉

文字の大きさ
2 / 50

いきなりのプロポーズ②

しおりを挟む
「プロポーズ、断るってこと?」
「すみません」
「なんで?」

 さみしそうな表情の三雲さんを見ていると、申し訳ない気持ちも出てくるが、もちろん受け入れるわけにはいなかない。

「私たち、そもそも付き合っていませんよね? 結婚はできません。しかもいきなり遠くの離島で暮らせとか滅茶苦茶です。ごめんなさい」
「美桜さん……それでいいの? 僕のこと好きじゃなかった?」
「今までありがとうございました。お元気で」

 私は席を立ってお辞儀をし、レストランをあとにした。

 三雲さんのことは嫌いではなかった。
 絵に描いたようなイケメンではなかったけれど、優しくてインテリで、節操もあって紳士だったから。
 だけど好きだったのかと問われると、正直首を縦には振れない。
 たまに食事をしながらお互いの話をして一緒に過ごす、私たちはそんな関係だったはず。それも長い間続いていたわけではなく、たった数回のことだ。
 なのにいきなりプロポーズをされ、離島暮らしをするのしないのと言われても、さすがに理解できなかった。

『お元気で』と、最後に言った言葉がすべてだ。私は同じ道は歩めない。
 三雲さんには離島でみんなに愛されるお医者様になってほしいと心から願った。

*****

「え? なにそれ。それで三雲さんとは終わったの?」

 会社の休憩スペースで一緒になった同期の長内 蘭おさない らんが、私の話を聞いて目を丸くした。

「蘭、声が大きいよ」

 私がシッと唇の前に人差し指を立てると、蘭はごめんと謝り肩をすくめた。

 私たちは㈱オッティモの入社二年目の社員で、会社の正面玄関にある受付で日々働いている。
 会社は総合商社でそこそこ大きく、このオフィスビルの13Fにある。
 ここにはもっとレベルの高い会社が上層階に何社もあるので、うちはそれと比べたら霞んでしまうけれど、オフィス内はもちろん、休憩スペース等もスタイリッシュな造りになっているので社員の満足度は高い。

「終わったっていうか、始まってもないから」

 蘭とは同じ受付という部署に配属されたときから仲良くしていて、今ではなんでも話せる同期であり親友だ。
 プライベートで遊ぶこともあるし、こうして恋バナをすることも多い。

「だよね。キスもしてない関係でいきなり結婚って……」
「キスどころか手も繋いでないし。付き合おうって言ってもなかったの」
「向こうは付き合ってるつもりだったかもよ?」

 ニヤニヤとしながら蘭が私の顔を覗き込んでくる。こうしておどけた顔をする蘭が、ほっこりと癒し系で私は大好きだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

この裏切りは、君を守るため

島崎 紗都子
恋愛
幼なじみであるファンローゼとコンツェットは、隣国エスツェリアの侵略の手から逃れようと亡命を決意する。「二人で幸せになろう。僕が君を守るから」しかし逃亡中、敵軍に追いつめられ二人は無残にも引き裂かれてしまう。架空ヨーロッパを舞台にした恋と陰謀 ロマンティック冒険活劇!

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。 人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい! そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。 そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。 ☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。 ☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。 ☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。 ☆書き上げています。 その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

処理中です...