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いきなりのプロポーズ③
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「美桜は美人だし、色気もあるからね。男はみんな勘違いしちゃうんだよ」
「そんなことないでしょ」
「いやほんとだって! 女性らしくて色気のある美桜と食事に行っただけで、たいていの男は骨抜き」
言いすぎだと思うけれど、蘭は私のことをこうしてよく褒めてくれる。
蘭のほうこそ、二重の大きな瞳とハーフアップの髪型がかわいらしさ抜群で、その上スタイルが良くてモデルみたいだから、男性からのアプローチも多い。
「美桜、次探そ! このビルの会社の人なら、高学歴で高収入でしょ」
「え、そこ?」
どこまで本気で言ってるのかわからないが、蘭が拝金主義的な発言をするから笑ってしまった。だけど彼女がそんなタイプでないのは知っている。
このオフィスビルにいると普通の一般男性を格下に見る女子社員も中にはいるけれど、蘭は違う。
男性を好きになるときには、セレブかどうかよりも中身で判断していると思う。私が知る限り、蘭の今までの恋愛はそうだった。
三雲さんの一件があって、三ヶ月が過ぎた頃。
「美桜さん、俺と結婚してほしい」
これはいわゆる、デジャヴだろうか。指輪こそ差し出されてないものの、三ヶ月前にも同じようにプロポーズされた。
偶然、場所も同じフレンチレストランだけれど、もちろん今回の相手は三雲さんではない。
「仁科さん、あの……」
今、目の前にいるのは、最近よく食事に誘ってくれるようになった男性の仁科さんだ。
仁科さんは経済産業省の官僚で、仕事でうちの会社を訪れたことがきっかけで知り合った。
現在は担当が変わったらしく、こちらには来なくなったけれど、個人的にこうして食事をする仲に発展したばかり。
まだそれだけの関係なのに、まさかプロポーズされるとは思わなかった。
「君のことが好きなんだ。だから結婚したい」
「でも私たち、付き合っていませんよね?」
なんだか気まずくて、右手で髪を耳にかけながらうつむいた。三ヶ月前にもまったく同じ言葉を三雲さんに言った気がする。
「結婚を前提に、付き合おう!」
比べてはいけないのだけれど、三雲さんと仁科さんでは、三雲さんのほうが年上だからなのか余裕が感じられた。どっしりと落ち着いたプロポーズだった。
かたや仁科さんは、どことなく表情からおどおどとした焦りが感じられる。
正直、仁科さんのほうが見た目はハンサムだけど、余裕のない態度はけっこうなマイナスポイントだ。彼が緊張しているせいかもしれないけれど。
「すみません、結婚のお話は唐突すぎて……」
そこまで言ったところで、とんでもない事件が起きた。
かなり踵の高いハイヒールを履いたスタイルのいい女性がこちらに靴音を立てて近づいてきて、テーブルの上にあった赤ワインのグラスの中身を仁科さんの顔にピシャリと勢いよくかけたのだ。
私は何が起こったのかわからず、驚いて呆然としてしまう。
その女性は明らかに敵意むき出しで私を睨んだけれど、すぐにまた仁科さんのほうへと視線を移す。もちろん、怒っているので鬼の形相だ。
「瑠璃子……なにするんだ」
赤ワインを浴びたYシャツの襟元をおしぼりで静かに拭いながら、仁科さんは女性を“瑠璃子”と呼んだ。
頭が混乱する中で、わかったことがひとつだけある。
ふたりは過去に付き合っていたか、今も付き合っているのか……とにかく、ただならぬ仲だということだ。
「そんなことないでしょ」
「いやほんとだって! 女性らしくて色気のある美桜と食事に行っただけで、たいていの男は骨抜き」
言いすぎだと思うけれど、蘭は私のことをこうしてよく褒めてくれる。
蘭のほうこそ、二重の大きな瞳とハーフアップの髪型がかわいらしさ抜群で、その上スタイルが良くてモデルみたいだから、男性からのアプローチも多い。
「美桜、次探そ! このビルの会社の人なら、高学歴で高収入でしょ」
「え、そこ?」
どこまで本気で言ってるのかわからないが、蘭が拝金主義的な発言をするから笑ってしまった。だけど彼女がそんなタイプでないのは知っている。
このオフィスビルにいると普通の一般男性を格下に見る女子社員も中にはいるけれど、蘭は違う。
男性を好きになるときには、セレブかどうかよりも中身で判断していると思う。私が知る限り、蘭の今までの恋愛はそうだった。
三雲さんの一件があって、三ヶ月が過ぎた頃。
「美桜さん、俺と結婚してほしい」
これはいわゆる、デジャヴだろうか。指輪こそ差し出されてないものの、三ヶ月前にも同じようにプロポーズされた。
偶然、場所も同じフレンチレストランだけれど、もちろん今回の相手は三雲さんではない。
「仁科さん、あの……」
今、目の前にいるのは、最近よく食事に誘ってくれるようになった男性の仁科さんだ。
仁科さんは経済産業省の官僚で、仕事でうちの会社を訪れたことがきっかけで知り合った。
現在は担当が変わったらしく、こちらには来なくなったけれど、個人的にこうして食事をする仲に発展したばかり。
まだそれだけの関係なのに、まさかプロポーズされるとは思わなかった。
「君のことが好きなんだ。だから結婚したい」
「でも私たち、付き合っていませんよね?」
なんだか気まずくて、右手で髪を耳にかけながらうつむいた。三ヶ月前にもまったく同じ言葉を三雲さんに言った気がする。
「結婚を前提に、付き合おう!」
比べてはいけないのだけれど、三雲さんと仁科さんでは、三雲さんのほうが年上だからなのか余裕が感じられた。どっしりと落ち着いたプロポーズだった。
かたや仁科さんは、どことなく表情からおどおどとした焦りが感じられる。
正直、仁科さんのほうが見た目はハンサムだけど、余裕のない態度はけっこうなマイナスポイントだ。彼が緊張しているせいかもしれないけれど。
「すみません、結婚のお話は唐突すぎて……」
そこまで言ったところで、とんでもない事件が起きた。
かなり踵の高いハイヒールを履いたスタイルのいい女性がこちらに靴音を立てて近づいてきて、テーブルの上にあった赤ワインのグラスの中身を仁科さんの顔にピシャリと勢いよくかけたのだ。
私は何が起こったのかわからず、驚いて呆然としてしまう。
その女性は明らかに敵意むき出しで私を睨んだけれど、すぐにまた仁科さんのほうへと視線を移す。もちろん、怒っているので鬼の形相だ。
「瑠璃子……なにするんだ」
赤ワインを浴びたYシャツの襟元をおしぼりで静かに拭いながら、仁科さんは女性を“瑠璃子”と呼んだ。
頭が混乱する中で、わかったことがひとつだけある。
ふたりは過去に付き合っていたか、今も付き合っているのか……とにかく、ただならぬ仲だということだ。
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