あと6日で王太子を振り向かせたい王女は護衛にドキドキしている場合ではない!

ハートリオ

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12 変わり始める王太子

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ランチタイム。

王立学校の生徒は殆どが貴族だが食堂はバイキング形式で給仕などはつかない。

だが王族には給仕は勿論毒見係も揃った特別室が用意されている。

「…何だこの肉の山は…私は注文していないぞ」
「は、お連れ様が3時限目の休憩時間に注文されました。『朝から精力使いまくったから補充しないとね』と仰って…」
ガチャン!

思わずグラスを乱暴にテーブルに置くテナークス。

給仕を責めることは出来ない。

『お連れ様』とは婚約者ピウス・カラクテリスティカ王女ではなく、この半年懇意にしているクピドゥス・ドロースス男爵令嬢。

彼女を特別室に伴うのを納得していない風の給仕長に『今後は昼食のメニューを彼女に任せる。彼女が食べたい物が私の食べたい物だからな』と言って彼女が特別である事を示したのは6か月前のテナークス自身だ。

(思えばピウス姫とここで食事をした事が無い)

3年前共に入学したのに――

(最初からつまずいていた…入学当時はピウス姫が王宮に住まず修道院に滞在する事に腹を立てていた…離れて暮らす婚約者が結婚準備の一環として留学して来てやっと自由に会える様になったと喜んでいたのに彼女の私を避ける様な態度が許せなかった…そうだ…何故彼女は私を避けるようになった?)

3年前の出来事を思い出そうと瞑目するテナークスだが、その思考は騒々しい足音と声に邪魔される。

「お待たせぇ~~、って、あらぁ、先に食べていたのねぇ…ま、いいわ」
「何がいいんだ」
「私を待っていなかった事よぉ‥ふふ、当たり前でしょ?」
「王太子の時間は厳しく決められている。私が時間をずらせばそれに伴い大勢の者の時間も影響を受けるのだ…前にも言ったはずだが」
「ええ、聞いたわよ?…でもその頃と今とでは私達の関係、変わってるでしょぉ?ん?」

――こんなに下品な女だったか?

今朝、馬車から降りるまではクピドゥスの礼儀を無視した言動を魅力だと感じていた事をすっかり忘れてテナークスは眉間に皺を刻む。

「面白いものを見学してたから遅くなっちゃったの!‥ねぇ、何だと思う?」

そんなの知るはずがないし聞く気もないテナークスは耳に栓をしようとするが‥

「あの王女様よ!中庭でバスケットいっぱいのサンドイッチを護衛と二人で食べてるのよ!アハハッ!王女サマが!私が言った通りに護衛と!ミジメもいいとこよねぇ?テナ様に断られて平民とランチだなんて!もういっそそのまま平民になれ~~って‥」
ガタッ!

険しい顔で席を立つテナークスにギョッとするクピドゥスと給仕達。

「殿下!?」
「テナ様?なに‥」
「‥のだ」
「え?何ですって?」
「私のだ!私のチキンサンドイッチを護衛が食べるなど断じて許さん!」

テナークスはそう叫ぶと首に掛けたナプキンを荒々しく外し、特別室を飛び出して行く。
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