崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

文字の大きさ
34 / 1,797
第二話 目指せスキルアップ!

高級馬車の一コマ

しおりを挟む
 馬車の中は、外見の大きさと煌びやかさに似合った悪趣味……もとい、金持ち感全開の中身だった。あちらこちらに金の装飾があって、椅子も床もフカフカだ。ナガレはメロサと向かい合って座っていた。
「でも、いいんですか? 自分で言うのもなんですが、オレみたいな庶民を軽々しく乗せちゃって」
「良いのよ。もし妙なことをすればこの私が蹴っ飛ばしてやりますわ。それに爺やも馬係もとっても強いのよ。十人くらいならアリンコみたいに蹴散らせますわ」
「へぇ~……」
 そういえば故郷にも、そんな人がたくさんいた。そんな護衛をつけているとは、イツマム家当主であるメロサの両親は過保護に違いない。
「ところでメロサ様。ギルドに何かご用事があるのですか?」
「よくぞ聞いてくれましたわ!」
 馬車の中なのにいきなり立ち上がり、天井にゴン! と頭をぶつけるメロサ。
「痛い⁉︎」
「お嬢様、だからあれほど馬車の中で立つなと……」
 爺やと呼ばれた老人が車内を振り向いて、呆れた視線を向けている。
「だ、だまらっしゃい! コホン……実はクエストを依頼しに行きますのよ」
「クエストを?」
 クエストと聞いてナガレが食いついた。彼もいっぱしの冒険者なので、その話題は受ける受けない以前に興味がある。
「ええ、こちらをご覧なさい!」
 メロサはニヤリと笑って一枚の紙をナガレに突きつけた。冒険者ギルドのクエスト依頼申込書だ。
「ん……『カープー森林の調査』? ここにくるまでの途中に見かけたところだ」
 カープー森林はスラガン地方で一番大きい、緑豊かで薄暗い不気味な森。……そうは言っても、この草木育たぬ荒野であるスラガン地方の森であり、他地方と比べてもそう大きくはない。
 確かバッファローの街から、馬車で三十分ほどの距離だったはず。
「ええと……『特定エリアの異変を調査し、あれば記録レポートを提出。報酬十万ダラー』って……十万ダラー⁉︎ すごい報酬金額じゃないですか⁉︎」
「オーッホッホッホ……庶民にとっては大金でも、我々イツマム家にとってははした金ですわ~」
「お嬢様、それではすごいのはお嬢様ではなくイツマム家です。もっと謙遜してくださりませ」
 まだ爺やが振り返って口を挟んできた。正直、ナガレの言いたいことを代弁してくれている……。
「おっ、お黙り! あーた時々辛辣ですわね⁉︎」
「私は当主様よりお嬢様の教育係とボディガードを任されております。これくらいの苦言は聞き入れて貰わねば」
「ああもう、分かりましたわ!」
 機嫌を損ねたように、プイッとそっぽを向いてしまった。貴族にしてはアグレッシブなお嬢様で、ナガレはちょっと親しみが湧いてきたかもしれない。
「でも……調査って書いてますけど、ただの調査じゃないんですよね?」
「ふふふ、よく気がつきましたわね?」
(あ、ご機嫌が戻った)
 メロサの様子はさておき、クエストの依頼がアイテム集めやモンスター討伐ではない『調査』なのが気になる。火のないところに煙は立たぬ、なんて言葉もあるくらいだし何かあったのだろう。
「ええ……実はそうなんですわ。私たち貴族は金ならたくさんありますが、それでもドブに捨てるようなことしませんもの」
「お嬢様……そろそろ突っ込みますが、我々は政治には基本加担しませんので厳密には『貴族』と言うより『名門』『華族』でございます」
「きぃぃぃっ、あーたはイチイチうるさいのよっ! えっとですね、実はカープー森林は元々イツマム家で開発計画がありましたの。周辺地域のことを考えて、結局はお蔵入りになりましたけども……」
 そこまで行ってメロサは、わざとらしく額に手を置いた。
「けども?」
 催促するナガレを見て内心ほくそ笑みながらメロサは芝居がかった様子で「ああ、なんてこと!」と天を仰ぎ……鼻先をまたも天井にぶつけた。
「い、痛いですわ……それで、最近その森の近くで妙な連中を見かけるという噂があちこちで流れていますの。どいつもこいつも不気味で真っ黒なローブを来て、顔も性別も分からないらしくって……困りますわ~」
「ならず者が住み着いたんでしょうか? 騎士の皆さんには頼まないんですか?」
「あそこは我らの土地でしてよ! それにここで騎士を頼めば王国政府に貸しを作ってしまいますわ。我ら貴族……じゃなくて名門イツマム家にそんな屈辱耐えられなくってよ!」
(多分自分がピンチになったら真っ先に泣きつくんだろうな……)
 そう思ったナガレ。もちろん口には出さない。
「そうそう、ナガレ様はもしや冒険者? よろしければこの依頼、受けてみなくってよ?」
「いや……オレはぺーぺーのDランク冒険者ですから遠慮しておきます。もし成長したら、その時はまた紹介してください!」
「残念ですわ……」

「ナガレ様、小島に到着いたしました」
「おっ! ありがとうございます」
 そんなことを話しているとようやく到着したようだ。安全運転のスピードとはいえ、こんな長話ができるほどの道のりだったとは驚きだ。ナガレは馬車から器用に飛び降りた。
「それではこれで! ありがとうございました、イツカメ家の黒羊・マオウさん!」
「オーッホッホッホ、よろしくってよ~! あと私はイツマム家の黒い薔薇・メロサですわ……って、もう行ってるし」
 すぐに人混みに紛れて、ナガレの姿は見えなくなった。
「全く、たまには庶民と話すのも面白いですわね」
「お嬢様」
「あらどうしたの爺や? もうお説教は良くってよ」
 いつのまにか爺やが馬車の中に居た。うんざりした目でそちらを睨むサロメーラだが、彼の目は鋭かった。
「らしくないですな。彼とは初対面なのでしょう? やけに『おしゃべり』でしたじゃないですか」
「うーん、そうよねぇ……」
 メロサはボリボリ頭をかく。さっきまでのお嬢様らしさがウソのようだ。ナガレの前ではそう繕っていたのかもしれない。
「なぜだか彼とは初めて会った気がしなかったのよ……。爺や、ナガレ様の名前、どこかで聞いたことないかしら?」
 そう聞かれた爺やは首を捻る。
「はて……どうでしたかな。この爺、記憶は衰えてはおりませぬが、しかし覚えがありませぬ。気のせいではないでしょうかの?」
「そうかしら? ずっと昔に会ったことがある気がしますのよ……」
「そうですな……でしたらアーサー様にお聞きになってはどうでしょう。お嬢様とご婚約なされたのは十年も前ですので、他家との交流が多い彼ならば覚えていらっしゃるやも知れませぬ」
「そうよね……では無駄話はここまでよ。爺や、ギルドへ向かいなさい!」
「は、かしこまりました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...