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第二話 目指せスキルアップ!
ギンギラギンの金持ち華族
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「……さて、オレも行くか」
ジョーを見送ったナガレは大通りを歩き、長ーい橋の前に立つ。
「うーん、スキル鑑定はどこでやればいいんだか……いや、考えてても仕方ない。聞き込みだー!」
分からないことは聞くしかない。ナガレは人通りが多い場所を目指して走り出した。
数十分後。
「も、もうダメ……全力で飛ばしすぎて走れない……」
あの後結局街のどこを探しても見つからず、ヘトヘトの状態で通行人に聞いてみた。なんとあの橋の向こう、ギルド本部のすぐそばにあるらしい……。そして力尽き、橋の手すりにもたれて座り込んでしまう。ノドがカラカラだ……。しかし水筒なんて持ってない。飛び降りれば湖の水を飲み放題だが、もう立ち上がる気力もない。
「うへ~……」
とりあえず体力が回復するまで待つことにした。げっそりした表情で、橋の隅っこで仰向けになる。時々馬車や通行人が横を通るが、酔っ払いに思われているのか見向きもしない。
……いや、一人だけこちらに気づいた人物がいた。
「もしもし、もしもし! そこな殿方、大丈夫かしらん?」
「ん……?」
声に気づいて顔を上げると、そこにはめっっちゃギラギラした悪趣味な馬車が止まっている。その窓から一人の女性が身を乗り出してこちらを見つめていた。
バタン! コツコツコツ……。
「貴方、大丈夫かしら? さっきまではあんな元気いっぱいに走っていらしたのに。どこか怪我でもしましたの?」
ギラギラした馬車の扉が開き、まん丸なお目目をした一人の女性が降りてくる。まず目につくのは、赤いハットから覗く黒髪のドリルツインテ! 白い肌に整った顔立ちなのだろうが、少々濃いめのメイクがちょっとキツい。黒がベースのゴスロリ風ドレスをフリフリしながら近づいてきた。
「だ、大丈夫です……ぢょっど喉が渇いだだげで」
「まぁ、声がガラガラですわ! 爺や、こちらの庶民にお飲み物を差し上げて?」
「はっ、かしこまりました」
丸目のお嬢様の一声で、馬車からタキシードの老人が降りてきて、ナガレの側に跪く。手にはちっちゃなカップとティーポッドを持っていた。非常にお上品な仕草でカップに紅茶を入れてナガレに手渡す。
「どうぞ」
「え、あ、どうも……」
ナガレは素直にカップを受け取り、一息に飲み干した。
(ヴ……ニ、ニガイ……! なんだこれ……!)
それは高級ハーブティーなのだが、庶民にとってはゲキニガの紅茶。それでも気を使って言葉を飲み込んだが、思わず口がへの字に曲がってしまった。
「あらまあ、お口に合わなかったのかしら?」
「お、お、美味しいです……」
必死で弁解するナガレを見て、いかにも貴族な女性はけらけら笑う。
「オーッホッホッホ! 気を使わなくとも良くってよ。そちらは希少種ハーブを使った漢方紅茶。苦いのは当たり前ですわ」
「はぁ、そうですか……ん、確かになんか元気出てきたかも」
「ごめんあそばせ、今はそれしか飲み物がなかったのですわ。目的地も近いし、普通の水は馬に飲ませてしまいましたのよ」
なんだか疲労が取れてきた気がする。ナガレはすぐに立ち上がり、素直に頭を下げた。
「どちら様か分かりませんが、ありがとうございます。ダッシュで渡ってたもんだからヘトヘトだったんだ」
「知ってますわ~! ゆっくりとはいえ馬車をダッシュで追い抜いていきましたもの。貴方、この街は初めてでしょう?」
「え、はい。オレは冒険者のナガレっていいます」
「あらそう……私はメロサ・イツマム。イツマム家長女の美しき黒薔薇メロサとは、この私ですわ~」
(興味無さそうだな……てか、自慢ったらしい自己紹介だよホント)
相手はいかにもな貴族。ナガレのような一庶民のことなど覚える必要すら無さそうだ。てかイツマム家なんて、別地方から来たこっちは聞いたことがない……。それでも自分も名乗ってくれた辺り、もしかしたらいい人なのかもしれない。
「じゃあ、オレはこれで。ハーブティー、ありがとうございました」
水も飲めたので、今度は歩きながら行くことにする。しかしメロサは「あら、お待ちなさい!」と呼び止めてきた。
「な、なんですか?」
「そんなフラフラした歩き方で、ギルドまで行くつもりかしら⁉︎ 途中でぶっ倒れますわよ! このイツマム家長女のメロサが、馬車に乗せてあげますわ」
『イツマム家長女の』と言う部分を強調して言うメロサ。自分でもフラついていたのが分からなかった……タフなナガレでも全力疾走はこたえるようだ。
「爺や、庶民のナガレ様のために席をお空けなさい!」
「かしこまりました。それでは私も馬を繰るのを手伝いましょう」
「でも、いいんですか?」
「なーに、ほんの『ついで』ですわ。もっと感謝してくれても良くってよ。このサラブレッドにかかればほんの十分ほどで着きますわ」
「じゃあ、お願いします!」
正直ナガレとしては願ったり叶ったり! メロサの後に続いて、ナガレも馬車に乗り込んだ。
ジョーを見送ったナガレは大通りを歩き、長ーい橋の前に立つ。
「うーん、スキル鑑定はどこでやればいいんだか……いや、考えてても仕方ない。聞き込みだー!」
分からないことは聞くしかない。ナガレは人通りが多い場所を目指して走り出した。
数十分後。
「も、もうダメ……全力で飛ばしすぎて走れない……」
あの後結局街のどこを探しても見つからず、ヘトヘトの状態で通行人に聞いてみた。なんとあの橋の向こう、ギルド本部のすぐそばにあるらしい……。そして力尽き、橋の手すりにもたれて座り込んでしまう。ノドがカラカラだ……。しかし水筒なんて持ってない。飛び降りれば湖の水を飲み放題だが、もう立ち上がる気力もない。
「うへ~……」
とりあえず体力が回復するまで待つことにした。げっそりした表情で、橋の隅っこで仰向けになる。時々馬車や通行人が横を通るが、酔っ払いに思われているのか見向きもしない。
……いや、一人だけこちらに気づいた人物がいた。
「もしもし、もしもし! そこな殿方、大丈夫かしらん?」
「ん……?」
声に気づいて顔を上げると、そこにはめっっちゃギラギラした悪趣味な馬車が止まっている。その窓から一人の女性が身を乗り出してこちらを見つめていた。
バタン! コツコツコツ……。
「貴方、大丈夫かしら? さっきまではあんな元気いっぱいに走っていらしたのに。どこか怪我でもしましたの?」
ギラギラした馬車の扉が開き、まん丸なお目目をした一人の女性が降りてくる。まず目につくのは、赤いハットから覗く黒髪のドリルツインテ! 白い肌に整った顔立ちなのだろうが、少々濃いめのメイクがちょっとキツい。黒がベースのゴスロリ風ドレスをフリフリしながら近づいてきた。
「だ、大丈夫です……ぢょっど喉が渇いだだげで」
「まぁ、声がガラガラですわ! 爺や、こちらの庶民にお飲み物を差し上げて?」
「はっ、かしこまりました」
丸目のお嬢様の一声で、馬車からタキシードの老人が降りてきて、ナガレの側に跪く。手にはちっちゃなカップとティーポッドを持っていた。非常にお上品な仕草でカップに紅茶を入れてナガレに手渡す。
「どうぞ」
「え、あ、どうも……」
ナガレは素直にカップを受け取り、一息に飲み干した。
(ヴ……ニ、ニガイ……! なんだこれ……!)
それは高級ハーブティーなのだが、庶民にとってはゲキニガの紅茶。それでも気を使って言葉を飲み込んだが、思わず口がへの字に曲がってしまった。
「あらまあ、お口に合わなかったのかしら?」
「お、お、美味しいです……」
必死で弁解するナガレを見て、いかにも貴族な女性はけらけら笑う。
「オーッホッホッホ! 気を使わなくとも良くってよ。そちらは希少種ハーブを使った漢方紅茶。苦いのは当たり前ですわ」
「はぁ、そうですか……ん、確かになんか元気出てきたかも」
「ごめんあそばせ、今はそれしか飲み物がなかったのですわ。目的地も近いし、普通の水は馬に飲ませてしまいましたのよ」
なんだか疲労が取れてきた気がする。ナガレはすぐに立ち上がり、素直に頭を下げた。
「どちら様か分かりませんが、ありがとうございます。ダッシュで渡ってたもんだからヘトヘトだったんだ」
「知ってますわ~! ゆっくりとはいえ馬車をダッシュで追い抜いていきましたもの。貴方、この街は初めてでしょう?」
「え、はい。オレは冒険者のナガレっていいます」
「あらそう……私はメロサ・イツマム。イツマム家長女の美しき黒薔薇メロサとは、この私ですわ~」
(興味無さそうだな……てか、自慢ったらしい自己紹介だよホント)
相手はいかにもな貴族。ナガレのような一庶民のことなど覚える必要すら無さそうだ。てかイツマム家なんて、別地方から来たこっちは聞いたことがない……。それでも自分も名乗ってくれた辺り、もしかしたらいい人なのかもしれない。
「じゃあ、オレはこれで。ハーブティー、ありがとうございました」
水も飲めたので、今度は歩きながら行くことにする。しかしメロサは「あら、お待ちなさい!」と呼び止めてきた。
「な、なんですか?」
「そんなフラフラした歩き方で、ギルドまで行くつもりかしら⁉︎ 途中でぶっ倒れますわよ! このイツマム家長女のメロサが、馬車に乗せてあげますわ」
『イツマム家長女の』と言う部分を強調して言うメロサ。自分でもフラついていたのが分からなかった……タフなナガレでも全力疾走はこたえるようだ。
「爺や、庶民のナガレ様のために席をお空けなさい!」
「かしこまりました。それでは私も馬を繰るのを手伝いましょう」
「でも、いいんですか?」
「なーに、ほんの『ついで』ですわ。もっと感謝してくれても良くってよ。このサラブレッドにかかればほんの十分ほどで着きますわ」
「じゃあ、お願いします!」
正直ナガレとしては願ったり叶ったり! メロサの後に続いて、ナガレも馬車に乗り込んだ。
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