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第三話 誇りとプライドを胸に
ナガレの決意
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「「「「えぇーーっ⁉︎」」」」
みんな一斉に驚きの声を上げた。レンにいたっては文字通りひっくり返り、床に尻餅をつく。
「ふえぇ、何をいうのじゃナガレ君! 考え直すのじゃあ! ほ、ほら、ガラガラマムシは途中で引き返すかもしれぬし……」
「それでも不安だ。オレはここで待って、アイツが来たら迎え撃ってやる!」
「お、おい、何考えてんだよナガレ! 状況が分かってんのか! 相手はガラガラマムシだぜ⁉︎」
タネツがナガレの胸ぐらを掴んで、焦ったまま激しく揺さぶった。
「そうよ、残ってどうするつもりなのーっ! 危険度S級ってどういうことか分かってる? Sクラス冒険者じゃないと歯が立たないってことよ! あなた、自分のランクが分かって言ってるの⁉︎」
ヒズマもその横から攻め立てる。しかしナガレはタネツの手を掴み返した。
「そうだよ、オレはDランクでスキルも無くて素質も才能もない冒険者だよ!」
「……っ!」
タネツは手を離した。ナガレの目は真剣だ。危険度や実力差を理解した上で、ナガレは町に残ろうとしている。それを何とかしてやりたいと思っている本人だからこそ、タネツとヒズマは何も言えなくなってしまった。
「……どういう理由なんだ、ナガレ君? ヤケを起こしたってんなら俺が容赦しないぞ」
ただ一人冷静なアルクルが尋ねた。心配だからこそ、厳しい目でナガレを見つめる。
「ヤケなんかじゃない、ジョーと約束したんだ、この町でまた会うって。オレは約束を破りたくはない」
「……この状況は、さすがに仕方ないんじゃねえのか? モンスターに襲われて、町がぶっ壊されちまった。これのどこにナガレ君を責める要素がある? そのジョーって奴のことは知らないけど、きっと許してくれるって」
アルクルの言い分は正しい。モンスターに町が襲われるというのは、地震や豪雨と同じ突然起こること。半ば自然災害のようなものだ。もしナガレが凄腕の冒険者だとして、それで逃げたなら、少なからず批判はあるだろう。しかし彼はまだ駆け出しのDランク冒険者である。力が無いのは罪では無い。そんな彼が逃げたとして、誰が責められようか。
「だから、ここは逃げよう。もし戦うことになって死んじまったら、ナガレ君の成り上がりはどうなっちまうんだ」
「……ッ」
成り上がりと聞いて、わずかにナガレの表情が歪む。努力でAランク冒険者まで成り上がる、それは彼自身の目標だった。
だが、それでもナガレは首を横に振った。
「それでも、約束は守る。何としても守りたいんだよ! ジョーはオレと約束してくれた……それを破ったりしたくないっ!」
ナガレの目には、固い決意が宿っていた。
ずっと昔、彼がまだ子供だった頃に、あのアーバンが言ったのだ。友達との約束は、必ず守ると。今ここで逃げたら、それを否定することになる。ジョーが自分のことを何と思っているのかは分からないが、それでも彼は約束してくれた。……ナガレにとって、それはどんな言葉よりも重いものだった。
「……だから、どうか止めないでくれ。ここで逃げたら、オレは自分を許せなくなる。一生後悔するに決まってる……だから、頼むよ」
「ナガレ……」「ナガレ君……」
一同、何も言えなかった。止めたい気持ちは山々だが、何を言ってもナガレは止まらないだろう。それを理解したのだ。
「……はぁ~っ、この分からず屋のバカチンめ。命より大切なもんなんて無いに決まってンだろうが」
沈黙を破ったのは、アルクルの大きなため息だった。
「分かった……俺はもう止めねえ。お前にとってその約束は、その命よりも、俺たちの言葉よりもずーーっと大事なもんなんだな。……ああクソ、よーく分かったよ」
「アルクル……ごめん、ありがとう!」
パッと顔が明るくなったナガレ。アルクルは「た、だ、し!」と一本指を立てた。
「逃げろとは言わねえ。だが……倒れても傷ついても町がぶっ壊れても、たとえその約束を破ることになろうとも……必ず生きて帰れ。これだけ約束しろ」
「……分かった!」
「私も、もう何も言うまい……。じゃが分かってくれナガレ君、君がもし死んだら悲しむ人間……いや、エルフはここに一人いる。それを忘れないでほしいのじゃ」
続いてレンも力無く肩を落とした。ナガレを信じて送り出すことにしたのだ。
「マスター……すいません、感謝します。タネツさんもヒズマさんも、ここはオレに任せてください……って、ん?」
ナガレは先輩二人の方を見る。……なぜかヒズマもタネツも明らかなほどガチガチに緊張している。
「あ、あのー?」
「な、ナガレ君……本当に、怖く無いのか?」
タネツの言葉に、ナガレは少しだけ下を向いた。
「そりゃ……ショージキ、オレだって怖いです。相手は自分よりもずーーっと強いし、下手したら死んじゃうかもしれない。情けないっすけど……オレ、死ぬのが怖いです」
そこまで行ったナガレは、初めてブルブルと震えた。
「そうよね。そんなの絶対に怖いわ。それでも行くんでしょ? ……勇気があるのね」
ヒズマは本気で感心して、一人でうんうん頷いた。どんな偉人でもどんな最強戦士でも、死ねばそれまで、一貫の終わり。恐れるのは仕方がない……自分がナガレの身分なら、ヒズマは一も二もなく逃げ出しただろう。
「でも、オレは逃げたくないんです。……それに、死ぬつもりなんてありません」
ナガレの震えが止まった。キッと前方を睨みつけ、ぎゅっと拳を握りしめる。
「タネツ先輩、ヒズマ先輩。だいたい一ヶ月間、オレの特訓に付き合ってくれてありがとうございました。何度もボロボロになっても立ち上がれたのは、先輩たちが共に頑張ってくれたおかげです。だから……オレを信じてください!」
「「…………」」
ナガレはハッキリと言い放った。その目は少しだけ不安に揺れている。しかしその気持ちを押し殺し、約束のため、そしてタネツとヒズマとの特訓を信じ、ナガレは立ち向かうのだ。
(共に頑張ってくれた、か……。そんなことねえよ。俺だってお前がいたから、希望を持てたんだ。もう一度頑張ろうって、心の底から思えたんだ! くそっ、何を弱気になっていやがるんだ、俺って野郎は……!)
(な……何よっ! 私なんて、もうダメだと思ってたのに。ダメ女でいるのに、もう慣れきってたのに……。それが間違ってるって気付かせてくれたのは、ナガレ君じゃない! あなたを死なせたりなんかしない……私も仲間なんだから!)
そしてその言葉は、先輩二人の胸を打った。死の恐怖から逃れるのではなく、仲間を守るために立ち向かう……その感情ひとつあれば、人間はどんな困難にも立ち向かえる!
「く、くそ……ええいっ、ままよ! ナガレ君、お、俺も手伝うぜ! おおお俺も戦わせてくれっ!」
「え⁉︎」
今度はナガレが驚く番だ。タネツは緊張でガチガチになったまま言葉を続けた。
「ち、ちょっと怖いけど、お、お前が心配なんだ。ほ、ほっといて死なれでもしたら、目覚めが悪い……なら、お前を助けた方がいい! 俺も、た、戦うぜ!」
言い切ったタネツ。その横から、震えるヒズマも顔を出した。
「わ、私もよ~! ふ、二人が戦って私だけ避難するなんて嫌! そ、それに三人ならなんとか倒せるかもし、しれないし……。わ、私はナガレ君の先輩なの! こ、ここで逃げたら冒険者の名が笑うわっ!」
二人とも格上のガラガラマムシを恐れてはいる。だがそれでも、腹を括っているようだ。ナガレを放っておけない、この一心で立ち向かおうとしている。
「タネツ先輩、ヒズマ先輩……! 大歓迎ですよ! ありがとうございますっ!」
こうして弱小冒険者の三人による、バッファロー防衛部隊が結成された!
みんな一斉に驚きの声を上げた。レンにいたっては文字通りひっくり返り、床に尻餅をつく。
「ふえぇ、何をいうのじゃナガレ君! 考え直すのじゃあ! ほ、ほら、ガラガラマムシは途中で引き返すかもしれぬし……」
「それでも不安だ。オレはここで待って、アイツが来たら迎え撃ってやる!」
「お、おい、何考えてんだよナガレ! 状況が分かってんのか! 相手はガラガラマムシだぜ⁉︎」
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「そうよ、残ってどうするつもりなのーっ! 危険度S級ってどういうことか分かってる? Sクラス冒険者じゃないと歯が立たないってことよ! あなた、自分のランクが分かって言ってるの⁉︎」
ヒズマもその横から攻め立てる。しかしナガレはタネツの手を掴み返した。
「そうだよ、オレはDランクでスキルも無くて素質も才能もない冒険者だよ!」
「……っ!」
タネツは手を離した。ナガレの目は真剣だ。危険度や実力差を理解した上で、ナガレは町に残ろうとしている。それを何とかしてやりたいと思っている本人だからこそ、タネツとヒズマは何も言えなくなってしまった。
「……どういう理由なんだ、ナガレ君? ヤケを起こしたってんなら俺が容赦しないぞ」
ただ一人冷静なアルクルが尋ねた。心配だからこそ、厳しい目でナガレを見つめる。
「ヤケなんかじゃない、ジョーと約束したんだ、この町でまた会うって。オレは約束を破りたくはない」
「……この状況は、さすがに仕方ないんじゃねえのか? モンスターに襲われて、町がぶっ壊されちまった。これのどこにナガレ君を責める要素がある? そのジョーって奴のことは知らないけど、きっと許してくれるって」
アルクルの言い分は正しい。モンスターに町が襲われるというのは、地震や豪雨と同じ突然起こること。半ば自然災害のようなものだ。もしナガレが凄腕の冒険者だとして、それで逃げたなら、少なからず批判はあるだろう。しかし彼はまだ駆け出しのDランク冒険者である。力が無いのは罪では無い。そんな彼が逃げたとして、誰が責められようか。
「だから、ここは逃げよう。もし戦うことになって死んじまったら、ナガレ君の成り上がりはどうなっちまうんだ」
「……ッ」
成り上がりと聞いて、わずかにナガレの表情が歪む。努力でAランク冒険者まで成り上がる、それは彼自身の目標だった。
だが、それでもナガレは首を横に振った。
「それでも、約束は守る。何としても守りたいんだよ! ジョーはオレと約束してくれた……それを破ったりしたくないっ!」
ナガレの目には、固い決意が宿っていた。
ずっと昔、彼がまだ子供だった頃に、あのアーバンが言ったのだ。友達との約束は、必ず守ると。今ここで逃げたら、それを否定することになる。ジョーが自分のことを何と思っているのかは分からないが、それでも彼は約束してくれた。……ナガレにとって、それはどんな言葉よりも重いものだった。
「……だから、どうか止めないでくれ。ここで逃げたら、オレは自分を許せなくなる。一生後悔するに決まってる……だから、頼むよ」
「ナガレ……」「ナガレ君……」
一同、何も言えなかった。止めたい気持ちは山々だが、何を言ってもナガレは止まらないだろう。それを理解したのだ。
「……はぁ~っ、この分からず屋のバカチンめ。命より大切なもんなんて無いに決まってンだろうが」
沈黙を破ったのは、アルクルの大きなため息だった。
「分かった……俺はもう止めねえ。お前にとってその約束は、その命よりも、俺たちの言葉よりもずーーっと大事なもんなんだな。……ああクソ、よーく分かったよ」
「アルクル……ごめん、ありがとう!」
パッと顔が明るくなったナガレ。アルクルは「た、だ、し!」と一本指を立てた。
「逃げろとは言わねえ。だが……倒れても傷ついても町がぶっ壊れても、たとえその約束を破ることになろうとも……必ず生きて帰れ。これだけ約束しろ」
「……分かった!」
「私も、もう何も言うまい……。じゃが分かってくれナガレ君、君がもし死んだら悲しむ人間……いや、エルフはここに一人いる。それを忘れないでほしいのじゃ」
続いてレンも力無く肩を落とした。ナガレを信じて送り出すことにしたのだ。
「マスター……すいません、感謝します。タネツさんもヒズマさんも、ここはオレに任せてください……って、ん?」
ナガレは先輩二人の方を見る。……なぜかヒズマもタネツも明らかなほどガチガチに緊張している。
「あ、あのー?」
「な、ナガレ君……本当に、怖く無いのか?」
タネツの言葉に、ナガレは少しだけ下を向いた。
「そりゃ……ショージキ、オレだって怖いです。相手は自分よりもずーーっと強いし、下手したら死んじゃうかもしれない。情けないっすけど……オレ、死ぬのが怖いです」
そこまで行ったナガレは、初めてブルブルと震えた。
「そうよね。そんなの絶対に怖いわ。それでも行くんでしょ? ……勇気があるのね」
ヒズマは本気で感心して、一人でうんうん頷いた。どんな偉人でもどんな最強戦士でも、死ねばそれまで、一貫の終わり。恐れるのは仕方がない……自分がナガレの身分なら、ヒズマは一も二もなく逃げ出しただろう。
「でも、オレは逃げたくないんです。……それに、死ぬつもりなんてありません」
ナガレの震えが止まった。キッと前方を睨みつけ、ぎゅっと拳を握りしめる。
「タネツ先輩、ヒズマ先輩。だいたい一ヶ月間、オレの特訓に付き合ってくれてありがとうございました。何度もボロボロになっても立ち上がれたのは、先輩たちが共に頑張ってくれたおかげです。だから……オレを信じてください!」
「「…………」」
ナガレはハッキリと言い放った。その目は少しだけ不安に揺れている。しかしその気持ちを押し殺し、約束のため、そしてタネツとヒズマとの特訓を信じ、ナガレは立ち向かうのだ。
(共に頑張ってくれた、か……。そんなことねえよ。俺だってお前がいたから、希望を持てたんだ。もう一度頑張ろうって、心の底から思えたんだ! くそっ、何を弱気になっていやがるんだ、俺って野郎は……!)
(な……何よっ! 私なんて、もうダメだと思ってたのに。ダメ女でいるのに、もう慣れきってたのに……。それが間違ってるって気付かせてくれたのは、ナガレ君じゃない! あなたを死なせたりなんかしない……私も仲間なんだから!)
そしてその言葉は、先輩二人の胸を打った。死の恐怖から逃れるのではなく、仲間を守るために立ち向かう……その感情ひとつあれば、人間はどんな困難にも立ち向かえる!
「く、くそ……ええいっ、ままよ! ナガレ君、お、俺も手伝うぜ! おおお俺も戦わせてくれっ!」
「え⁉︎」
今度はナガレが驚く番だ。タネツは緊張でガチガチになったまま言葉を続けた。
「ち、ちょっと怖いけど、お、お前が心配なんだ。ほ、ほっといて死なれでもしたら、目覚めが悪い……なら、お前を助けた方がいい! 俺も、た、戦うぜ!」
言い切ったタネツ。その横から、震えるヒズマも顔を出した。
「わ、私もよ~! ふ、二人が戦って私だけ避難するなんて嫌! そ、それに三人ならなんとか倒せるかもし、しれないし……。わ、私はナガレ君の先輩なの! こ、ここで逃げたら冒険者の名が笑うわっ!」
二人とも格上のガラガラマムシを恐れてはいる。だがそれでも、腹を括っているようだ。ナガレを放っておけない、この一心で立ち向かおうとしている。
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