1,013 / 1,797
第二十八話 正義の羽音
陰謀
しおりを挟む
「おーい! みんなーっ!」
手を振るルックの声を聞いて、みんなも手を振り返したのだった。
~☆~☆~☆~☆~☆~
その頃、スラガン地方……ではない、どこか荒廃した土地。
周囲には春なのにも関わらず、しんしんと雪が降りしきっている。夏は熱射の太陽、冬は乾燥した大荒野のスラガン地方に雪が降るなんてありえない。
真っ白になった森の中に、小さな小屋がいくつか立っていた。
小屋の中は、どれもシンプルなログハウス。こんな雪が降る寒い日なのに、窓を開けていた。木の温かみと普通の家具が無造作に置かれていた……。
が、目を引くのは家のど真ん中にある変な机。普通のティーテーブルのようだが、机の板と足の間に、なぜか毛布が被せてある。
東洋文化のコウヨウ地方発端の『コタツ』という暖房器具だ。実はテーブルの下には小さな穴があり、そこには竹のケースで覆われた、熱い炭が入っている。その温かさを使って、中をあったかくしているのだ。
「……はぁ~、やっぱ失敗やなぁ。スカルウルフも不発かいな」
コタツに入っているのは、銀髪の青年。片目は髪で隠れている、穏やかそうなイケメン。山吹色の浴衣に、紺のどてらを羽織っている。どんぶりに入った『ウドン』という麺類を食べていた。
……イビル教団の幹部である、恐ろしい蜘蛛人間。その名もジョロウだ。
「カカカ……浮かばれへんのう、生贄に放り込んだ人間も。別の人間に殺されてまうとは哀れなこっちゃ」
彼こそ、スカルウルフを送り込んだ張本人。ナガレたち集団のお手並み拝見とばかりに、捨て駒としてスラガン地方へ追い立てたのだ。そのスカルウルフが死んだことも、当然理解していた。
ズルズルとウドンをすすったところ、扉がコンコンとノックされる。
「ジョロウ様。ご報告がございます」
「おう、入らんかい」
すると扉が開いて、黒いローブの男女が部屋に入ってくる。頭にちょっとだけ雪が積もっていた。……死んだような目で、ジョロウを見つめている。イビル教団の忠実なるしもべだ。
「なんや寒そうやのう。おどれらも食うか?」「……スカルウルフの一件で、先ほど隠れていた使者から手紙が届きました」
「連れへんのう。真面目なやっちゃ。そんでなんなんや?」
「……ええ、読み上げます。『ジョー・アックスとその他冒険者の殺害及び、ナガレ・ウエストの捕獲に失敗』です」
「なんや残念やのう。今度こそあのナガレ・ウエストをコマして抱けると思うたのに」
恐ろしいことにこのジョロウ、ナガレを狙っているらしい。捕まったら一体どんな目に遭わされるのだろうか。
「ま、ええわ。続きがあるんやろ?」
「……はい。『謎の冒険者の妨害あり。ブリーダマン、を名乗る者、乱入。ナガレ・ウエストを助太刀す。メタルカブトンを操る者。現在タイガス近郊へ潜伏中。指示を求む』とのことです。……以上にございます」
「ほーん……メタルカブトンを操っとんか」
ジョロウは少し考えてから、ウドンをズルズル……とすすって飲み込む。……そしてニヤリと笑った。
「……ブリーダマンか。なんやおもろいことが出来そうやのう……おいっ、お前!」
「はっ」
平伏した黒ローブの男女に、ジョロウは指示を飛ばす。
「あのお子ちゃま司祭様に連絡や! 適当な生贄寄越すように言うとけ!」
「はっ、かしこまりました」
「それと、急いで準備せぇ! これからスラガン地方に行くで! ククク……カッカッカッ……!」
不気味に笑うジョロウ。その背中からは、細長く鋭い四本の肢が揺れていた……。
手を振るルックの声を聞いて、みんなも手を振り返したのだった。
~☆~☆~☆~☆~☆~
その頃、スラガン地方……ではない、どこか荒廃した土地。
周囲には春なのにも関わらず、しんしんと雪が降りしきっている。夏は熱射の太陽、冬は乾燥した大荒野のスラガン地方に雪が降るなんてありえない。
真っ白になった森の中に、小さな小屋がいくつか立っていた。
小屋の中は、どれもシンプルなログハウス。こんな雪が降る寒い日なのに、窓を開けていた。木の温かみと普通の家具が無造作に置かれていた……。
が、目を引くのは家のど真ん中にある変な机。普通のティーテーブルのようだが、机の板と足の間に、なぜか毛布が被せてある。
東洋文化のコウヨウ地方発端の『コタツ』という暖房器具だ。実はテーブルの下には小さな穴があり、そこには竹のケースで覆われた、熱い炭が入っている。その温かさを使って、中をあったかくしているのだ。
「……はぁ~、やっぱ失敗やなぁ。スカルウルフも不発かいな」
コタツに入っているのは、銀髪の青年。片目は髪で隠れている、穏やかそうなイケメン。山吹色の浴衣に、紺のどてらを羽織っている。どんぶりに入った『ウドン』という麺類を食べていた。
……イビル教団の幹部である、恐ろしい蜘蛛人間。その名もジョロウだ。
「カカカ……浮かばれへんのう、生贄に放り込んだ人間も。別の人間に殺されてまうとは哀れなこっちゃ」
彼こそ、スカルウルフを送り込んだ張本人。ナガレたち集団のお手並み拝見とばかりに、捨て駒としてスラガン地方へ追い立てたのだ。そのスカルウルフが死んだことも、当然理解していた。
ズルズルとウドンをすすったところ、扉がコンコンとノックされる。
「ジョロウ様。ご報告がございます」
「おう、入らんかい」
すると扉が開いて、黒いローブの男女が部屋に入ってくる。頭にちょっとだけ雪が積もっていた。……死んだような目で、ジョロウを見つめている。イビル教団の忠実なるしもべだ。
「なんや寒そうやのう。おどれらも食うか?」「……スカルウルフの一件で、先ほど隠れていた使者から手紙が届きました」
「連れへんのう。真面目なやっちゃ。そんでなんなんや?」
「……ええ、読み上げます。『ジョー・アックスとその他冒険者の殺害及び、ナガレ・ウエストの捕獲に失敗』です」
「なんや残念やのう。今度こそあのナガレ・ウエストをコマして抱けると思うたのに」
恐ろしいことにこのジョロウ、ナガレを狙っているらしい。捕まったら一体どんな目に遭わされるのだろうか。
「ま、ええわ。続きがあるんやろ?」
「……はい。『謎の冒険者の妨害あり。ブリーダマン、を名乗る者、乱入。ナガレ・ウエストを助太刀す。メタルカブトンを操る者。現在タイガス近郊へ潜伏中。指示を求む』とのことです。……以上にございます」
「ほーん……メタルカブトンを操っとんか」
ジョロウは少し考えてから、ウドンをズルズル……とすすって飲み込む。……そしてニヤリと笑った。
「……ブリーダマンか。なんやおもろいことが出来そうやのう……おいっ、お前!」
「はっ」
平伏した黒ローブの男女に、ジョロウは指示を飛ばす。
「あのお子ちゃま司祭様に連絡や! 適当な生贄寄越すように言うとけ!」
「はっ、かしこまりました」
「それと、急いで準備せぇ! これからスラガン地方に行くで! ククク……カッカッカッ……!」
不気味に笑うジョロウ。その背中からは、細長く鋭い四本の肢が揺れていた……。
0
あなたにおすすめの小説
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる