崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

第二十八話 正義の羽音

ムシ干渉の一コマ

「え、そうなのか？」
「……この甲殻は斬撃も打撃も効かないだろう。ムシはよく燃えそうだが、コイツには雷魔法以外効果無しのはずだ。中身はそれほど固くないが、狙いをつけるのは難しいだろうな」
　さすがはジョー、戦闘を重視した着眼点である。ナガレと一号は顔を見合わせた。
「なかなかユニークでバーサーカーなお友達だな、ナガレ」
「ははは、クールだけどいいヤツだから気にしなくていいよ」
「おおー、オーラルクワガタンか。こうして見るとやっぱしデケェな」
「そうじゃのう」
　すると後ろからレンとアルクルまでやって来た。二人もオーラルクワガタンに興味があるようだ。
「ナガレ君、オーラルクワガタンは結構珍しいモンスターなんじゃ。幼虫の時から一メートルほどに大きいのじゃが、体は柔らかく動きも遅い。なのですぐ、たった三日ほどでサナギになるんじゃが……」
「それまでは、他のモンスターの絶好の獲物だ。幼虫のうちは立派なツノも硬い甲殻もない。おまけに栄養満点と来たもんだ。だから野生化で生きてるオーラルクワガタンやメタルカブトンは強いけど希少なんだ」
「へぇ～、そうなのか……それじゃあ一号、よく育てたな」
　ナガレが感心すると、一号は頷いた。
「あぁ。実はずっと前、ポーツ地方の……あぁ、オレと二号は普段ポーツ地方の牧場で働いてるんだ。どこかはナイショだけどな。森を散歩してたら運良くメタルカブトンとオーラルクワガタンのタマゴを拾ってよ」
「ほうほう」
「親が死んでたからまさかと思って近くを探すと、地面の浅いところに二つの卵が埋まってた。近くにテント貼ってそいつらを観察してたら卵が孵ってなぁ……オレも心配だったから、牧場に連れてったんだ。大変だったけど、意外とトントン拍子にサナギになって、一ヶ月後にゃこの姿よ」
　メタルカブトンとオーラルクワガタンの誕生秘話はこんな感じらしい。
　しかし、生まれた頃から一号(と二号)に育てられたようだ。二匹との絆の深さにも納得である。
「まぁ、牛やら豚やら鶏やらは大パニックだったけどな。いやあ、虫の世話よりそっちの方が大変だった……今は牧場の仕事も手伝って、家畜も気を許してくれるんだけどな。親父が経営者じゃなかったら追い出されてたぜ」
「へぇ～……あっ！」
　ナガレはふと遠くを見て、それから声を上げた。そこにはメタルカブトンの姿が小さく見える。地面近くを低空飛行しながら、こちらへ近づいてきた。
「おーい一号ー！」
「二号！　おかえりーー！」