崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第二十八話 正義の羽音

陰謀

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「おーい! みんなーっ!」
 手を振るルックの声を聞いて、みんなも手を振り返したのだった。


~☆~☆~☆~☆~☆~


 その頃、スラガン地方……ではない、どこか荒廃した土地。
 周囲には春なのにも関わらず、しんしんと雪が降りしきっている。夏は熱射の太陽、冬は乾燥した大荒野のスラガン地方に雪が降るなんてありえない。

 真っ白になった森の中に、小さな小屋がいくつか立っていた。
 小屋の中は、どれもシンプルなログハウス。こんな雪が降る寒い日なのに、窓を開けていた。木の温かみと普通の家具が無造作に置かれていた……。
 が、目を引くのは家のど真ん中にある変な机。普通のティーテーブルのようだが、机の板と足の間に、なぜか毛布が被せてある。
 東洋文化のコウヨウ地方発端の『コタツ』という暖房器具だ。実はテーブルの下には小さな穴があり、そこには竹のケースで覆われた、熱い炭が入っている。その温かさを使って、中をあったかくしているのだ。

「……はぁ~、やっぱ失敗やなぁ。スカルウルフも不発かいな」
 コタツに入っているのは、銀髪の青年。片目は髪で隠れている、穏やかそうなイケメン。山吹色の浴衣に、紺のどてらを羽織っている。どんぶりに入った『ウドン』という麺類を食べていた。

 ……イビル教団の幹部である、恐ろしい蜘蛛人間。その名もジョロウだ。
「カカカ……浮かばれへんのう、生贄に放り込んだ人間も。別の人間に殺されてまうとは哀れなこっちゃ」
 彼こそ、スカルウルフを送り込んだ張本人。ナガレたち集団のお手並み拝見とばかりに、捨て駒としてスラガン地方へ追い立てたのだ。そのスカルウルフが死んだことも、当然理解していた。

 ズルズルとウドンをすすったところ、扉がコンコンとノックされる。
「ジョロウ様。ご報告がございます」
「おう、入らんかい」
 すると扉が開いて、黒いローブの男女が部屋に入ってくる。頭にちょっとだけ雪が積もっていた。……死んだような目で、ジョロウを見つめている。イビル教団の忠実なるしもべだ。
「なんや寒そうやのう。おどれらも食うか?」「……スカルウルフの一件で、先ほど隠れていた使者から手紙が届きました」
「連れへんのう。真面目なやっちゃ。そんでなんなんや?」

「……ええ、読み上げます。『ジョー・アックスとその他冒険者の殺害及び、ナガレ・ウエストの捕獲に失敗』です」
「なんや残念やのう。今度こそあのナガレ・ウエストをコマして抱けると思うたのに」
 恐ろしいことにこのジョロウ、ナガレを狙っているらしい。捕まったら一体どんな目に遭わされるのだろうか。
「ま、ええわ。続きがあるんやろ?」
「……はい。『謎の冒険者の妨害あり。ブリーダマン、を名乗る者、乱入。ナガレ・ウエストを助太刀す。メタルカブトンを操る者。現在タイガス近郊へ潜伏中。指示を求む』とのことです。……以上にございます」
「ほーん……メタルカブトンを操っとんか」
 ジョロウは少し考えてから、ウドンをズルズル……とすすって飲み込む。……そしてニヤリと笑った。
「……ブリーダマンか。なんやおもろいことが出来そうやのう……おいっ、お前!」
「はっ」
 平伏した黒ローブの男女に、ジョロウは指示を飛ばす。

「あのお子ちゃま司祭様に連絡や! 適当な生贄寄越すように言うとけ!」
「はっ、かしこまりました」

「それと、急いで準備せぇ! これからスラガン地方に行くで! ククク……カッカッカッ……!」
 不気味に笑うジョロウ。その背中からは、細長く鋭い四本の肢が揺れていた……。
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