間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜

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第6章 少年期〜青年期 学園6学年編

10話 和気藹々

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 ・・・所変わって、時間を少々遡り、衛兵隊の詰所で貴族冒険者達の事情聴取が始まっている頃・・・

 アトリー達は、やっと店内に案内されて、メニューを開き、何を注文しようかと、和気藹々と過ごしていました・・・

「そう言えば、このお店、“抹茶“だけではなく、“お茶“全般を使ったお菓子が有名らしいね。皆んなはどれか気になるお菓子はある?」

ソル「そうですね。僕はこの紅茶を使ったケーキが気になりますね」

ベイサン「俺は、ケーキより、このマンゴー茶?と言う、飲み物が気になるなぁ」

ロシュ君「僕は“よもぎ茶“?と、言う薬草を使ったお茶のお団子が気になります!」

イネオス「自分は、こっちのリンゴと紅茶を使ったタルトが気になりますね」

リリ嬢「そうですね、私はこのイチゴと紅茶を使ったパイが気になりますね。あと、お茶でこの“花茶“と言うものが気になります」

へティ「まぁ、そちらの“花茶“、私も気になってましたの!お菓子の方も“花茶“を使ったクッキーが気になってますの♪」

リリ嬢「まぁ、私、そちらには気づきませんでしたわ、確かにそちらも気になりますわね♪でも、こちらも・・・」

へティ「あら、確かにそれも・・・」

 と、それぞれ、目に留まったお菓子や飲み物の話題で盛り上がり、女子2人に関しては、どの品も魅力的のようで仲良く会話が弾んでいる。

(しかし、この世界でもお茶類は、地球と同じお茶の木から全て作られているかと思いきや、お茶の種類ごとに専用のお茶の木があるとは思わなんだ・・・(*´ー`*))

 そう、例えば、緑茶ならば緑茶用のお茶の木があって、その若葉を摘んで適切に乾燥させれば、緑茶になる、と言ったお手軽製法なのだ。
 もちろん、何もせずに放置して時間が経つと黒ずんだりカビたりするが、なぜか、“緑茶のお茶の木“から摘んだ若葉を人為的な発酵を促しても発酵茶にならずに普通に腐っていくそうだ・・・
 そして、“紅茶“のような発酵茶の場合は特別な製法や発酵を促すのではなく、適切に乾燥させて置いておくと勝手に発酵し出し、“紅茶“なら“紅茶“の発酵度合いで自然と発酵が止まり、“紅茶“、になるそうだ、その他の発酵茶である、白茶や黄茶、青茶(ウーロン茶や鉄観音茶はこの部類)や黒茶(プーアル茶はここ)なども似たようなものらしい・・・(発酵が勝手に止まるって、不思議だね!さすが異世界!!( ・∇・))

 ただ、どの“お茶の木“も、若葉を摘む時に若葉の選別したり、雑味のもとになる物の排除や、乾燥の時も、その乾燥の仕方の工夫などして、細やかな品質の向上的な作業工程をする分には味の品質にそれなりの差が出るため、ただ適当に若葉を摘んで乾燥させれば良いと言うことではなく、各お茶の木から派生しているお茶の種類も、お茶の木が生えている土壌や若葉の育成状態でお茶の味が変わって、お茶の種類の名称が変化するらしいので、それぞれのお茶の品質を維持するのはそれなりの育成方法や選別の技術が必要だとか・・・
 *ついでに言うと、“抹茶“は本当の“抹茶“と同じ製法らしいよ!それと、ロシュ君が言っている“よもぎ茶“も前世と同じ製法らしいよ!でも、この“よもぎ茶団子“って言う商品は僕からしたら、ただの“よもぎ団子“なんだよねぇ・・・( ̄▽ ̄)

 なので、全てのお茶の木も前世と変わらない品質維持という手間があるのは同じなのだが、リリ嬢やへティが気になっている“花茶“は、僕の前世で知っている、“中国茶の花茶“とは全く別物で、実はこの“花茶“、“ダンジョン“の魔物、“アルラウネ“、正確に言うなら“フラワーティー・アウラウネ“と言う、植物系の魔物を倒すとほぼ確実にドロップする、“ダンジョン産“のお茶の一種なのだ・・・
(多分、ティーナちゃんがこの世界のお茶の木を考え終わった後に、“中国茶の花茶“の存在を知って、無理やり“ダンジョン“限定の魔物として作ったものなんだろうと、僕は予想しているよ・・・(*´Д`*))
 *この考察、ほとんど正解だったりする、正確に答えるなら、主神リトスティーナが“中国茶の花茶“を知った時に、その製法や種類が多岐にわたっていた為、それぞれの専用のお茶の木を作るのを面倒に思い、でも、自身が気に入った“花茶“を広く普及させたいと言う目的もあって思いついたのが、魔物の“アウラウネ“から着想を得て、その頭の上に咲いている花の種類に応じた“花茶“をドロップするように改良されたのが、“フラワーティー・アウラウネ“だったりする。(“ジェムシードwiki天華“参照・・・)

 と、そんな、メタな事を考えていると・・・

ソル「それで、アトリー様は何を注文なさいますか?」

 ぼんやり考え事をしている間に、僕以外の人達はもうすでに注文していたようで、ソルにそう話しかけられてやっと気づいた僕は、

「ん、ああ、僕は今1番話題の“抹茶“のマフィンを頼むよ、飲み物も“抹茶ミルク“で・・・」

ベイサン「アトリー様の注文は“まっ茶“尽くしですね?」

 と全く悩む事なく、ベイサンが言うように“抹茶尽くし“の注文をした。その僕の注文を聞いていた皆んなが、それで良いのか?と言いたげだったが、

「うん、気になったからね」

(“抹茶“のお菓子には“抹茶“の飲み物!これは外せませんぜ!!( ゜д゜))

ジュール『気合いの入れようが凄いね・・・』 夜月『アトリーの中では鉄板ってやつなんだろうな・・・』 天華『まぁ、それだけ“抹茶“が好きなんですね・・・』

 と、何か言われていたが、内心のテンションの高さをアルカイックスマイルで覆い隠し、注文した品が来るのをソワソワしながら待つのだった・・・

 ・・・そして、待つ事、数分・・・

「わぁ・・・」(おぉ!!久しぶりの抹茶菓子!!抹茶ミルクも良い匂い!!どれも見た目美味しそう!!)

へティ「まぁ♪綺麗な緑色ですわね?アトリー様の注文なさった“まっ茶“のマフィンは以前、アトリー様がお考えになった“ほうれん草“のマフィンの色に似てますけど、少し“まっ茶のマフィン“の方が色が濃いですわね?」

「ふふっ、そうだね」

(いやー、あの時は面白かったなぁー、僕が、前世で見たことがある野菜を使った、色とりどりのお菓子のレシピを再現して作った野菜クッキー、野菜の自然な彩りがついたお菓子が、この世界では珍しかったみたいで、特にほうれん草の緑色したお菓子は最初は皆んな、食べれるの?このクッキー?、と、言った感じで遠巻きに見ているだけだったけど、僕や一緒に作ったソルが、ほうれん草が入ったクッキーだと言って食べてみせたら、皆んなも恐る恐るだけど食べてくれてたっけなぁ(*´Д`*)、あの時の皆んなの恐る恐る食べていた時の顔が、ちょっと面白かったんだよねぇ~ふふっ)

 と、ずいぶん昔の出来事を回想して、思い出し笑いしていると、

(・・・そう言えば、家族にもそのお菓子を振る舞った時に、母様があのレシピをご婦人方のお茶会でのお茶請けにしていいか?って聞いて来たから、良いよって気軽に返事して以降、母様があっちこっちの茶会で手土産として持って行ってからは、貴族間でいっとき話題になってたなぁ~。(*´Д`*)
 なんか、砂糖不使用のお菓子のレシピとしてお菓子が好きだけど、体型を気にしてあまりお菓子が食べられないって人に人気が出たとかで、そのおかげかは知らないけど、この国で色とりどりのお菓子が流行り出して、緑色したお菓子を見ても誰も気にしなくなったんだよねぇ( ̄▽ ̄)
 だからか、今、この緑緑しいこの“抹茶“のお菓子や飲み物を見ても、誰も嫌な顔をしない・・・
 そう思うと、あの時あのレシピが流行ってなかったら、このお店も出店できたとしても、ここまで流行ることはなかったのかな?(・・?))

 同じように思い出したその時の出来事で、見た目からの忌避感が薄れて、今の彩りのあるお菓子文化があると思うと、なんだか感慨深いなぁと、思っていると・・・

天華『それはあるでしょうけど、肝心の“味“はどうなんでしょうね?』

(ん?“味“かぁ、ここまで話題になっているから、“味“は問題ないと思うけど、“抹茶“は人によるからなぁ・・・それに、“抹茶“の“味“って、手間暇かけたものはかなり美味しいとは聞くけど、酷く不味いって事にはならないから、大丈夫だとは思う・・・・)

 天華に“味“に関して聞かれたので、そう言いながら、一口大にちぎって食べた、

 ぱく・・・もぐもぐ「!・・・美味しい・・・」ふわっ ザワッ!

(ほわぁ~~~っ!!久しぶりの“抹茶“だぁ~!!・:*+.\(( °ω° ))/.:+これだよ!これっ!!この独特のほろ苦さと砂糖の甘みが良いバランス!!香りも焼いた香ばしさの中に“抹茶“の良い香りがして最高!!このマフィンなら毎日食べたい!!(о´∀`о))

 久しぶりの“抹茶“のお菓子に気分が舞い上がって、夢中で、でも品よく食べ進める・・・*あ、“抹茶ミルク“も普通に美味しかったよ!!

*この時、僕は気づいていなかったが、僕達が店内に入ってきた時から、店内の店員はもちろん、他の客達が、ずーっと僕達の様子を伺っていた、僕が珍しい組み合わせでした注文に驚いていたり、僕がお菓子を食べた時、店内の全員がその表情を見て頬を染めたりしていたそうだ・・・

(なんでだろ言うね?(・・?))

夜月『(アトリーのあの幸せそうな表情に誰もがノックアウトされたんだろうな・・・)』

天華『(本人は無意識だから、タチが悪いんですよねぇ・・・)』

ジュール『(アトリー、本当に嬉しそうに食べてたもんねぇ・・・)』

 と、言われていたり、いなかったり・・・

 内心テンション高くお菓子を食べている僕の様子を、皆んなはニコニコ笑顔で見ながらも、自分の注文したお菓子や飲み物を食べて、その美味しさに同じように顔を綻ばせた。

 そうして、美味しいお菓子を食べながら、楽しくおしゃべりして、この日の放課後は和気藹々と過ごし、帰り際にこのお店のスィーツを全種をソルがお持ち帰り用に購入していた。

(・・・ソルさんよ、その数のスィーツ、どうするつもりなんだ?家族のお土産にしては多すぎるんじゃないか?(・・?)・・・あ、でも、ソルは“収納“スキルがあるから、傷まないから大丈夫か(*´Д`*)て、事は自分用のおやつか?・・・)

天華『多分、お屋敷の料理人に食べさせて、研究させるんじゃないですか?』

夜月『特にアトリーの好きな“抹茶“のお菓子をな・・・』

(えっ・・・そこまでする?( ・∇・))

ジュール『すると思う』

(そうかぁ?(・・?)個人のお茶請け用、もしくは今後の僕達の食後のデザートじゃなくて?)

 と、ソルのお菓子の購入量を不思議に思った僕に、天華達は僕の為に“抹茶“のお菓子を研究するためでは?と言っているが、僕自身はただのお菓子ストックではないか?と予想したのだが・・・
 後日、どこから“抹茶“を仕入れてきたか分からないが、デューキス家のティータイムや食後のデザートに“抹茶“を使ったお菓子が並び始めて、僕の予想が大外れしたのは言うまでもない・・・・

(そこまでしたかぁ(*´Д`*)・・・ま、いつでも“抹茶“のお菓子が食べれるようになったのは良い事だから良いけど・・・あ!、今度“抹茶ビスコッティ“作って貰おう!!( ・∇・))

 予想が大外れしても気にせず、自分の好きなお菓子を“抹茶“味にする事を思いつき、また、商業登録するレシピが増えていったのは仕方がない事だったりするのだった・・・・

 そして・・・

「ふぅ、“抹茶“のお菓子、美味しかった、また今度あそこのお店に食べに行きたいね」

へティ「そうですね。他の種類のお菓子も気になりますから、また別のお菓子でお茶したいですね♪」

リリ嬢「えぇ、私もそうしたいですわ♪」

 と、キャッキャと次の放課後の約束をして、その日は解散し帰宅した。

 自宅に戻り、夕食を食べ終わり、お風呂に入って後は寝るだけとなって、ベットでゴロゴロしていると、今日の放課後のことを思い出していた。

(はぁ、久しぶりに食べた“抹茶“のお菓子、美味しかったなぁ~、今度、“抹茶“自体を探しに行こう、そしたら、自分で色々、料理やお菓子が作れるし・・・明日、オーリーに探してって頼んでみよう♪あ、そう言えば、ヘリー姉様が言っていた変なアクセサリー屋さんってどこのお店だったんだろう??)

 そんな、今日1日のまったりと過ごした事を思いながら、ゴロゴロしているうちに、いつの間にか寝ていたのだった・・・・











 
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