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しおりを挟むけれど、ロズヴィータはお構い無しだ。 あんなに、取り澄ました態度しか見せないフレデリックがタジタジなのが可笑しくて、笑ってしまいそうになる。
「まぁ、リシェさんというの? 素敵なお名前ね。私もリシェと呼ばせてもらっていいかしら? 」
頷こうと思ったら、フレデリックがロズヴィータとの間に入ってきた。
「叔母上、少しお待ち下さい。まだ、紹介さえさせてもらっていないんですよ? 」
「お名前は今聞いたわ。私のことだって、もう馬車の中で教えているのでしょう? 」
「それでも、ですね 」
ヒョイヒョイと、フレデリックが後ろに隠したリシェをロズヴィータの目から遠避ける。リシェには、二人の攻防が、フレデリックの大きな背中に阻まれ見えなかった。
すると、遂にイライラしたロズヴィータが大きな声をあげる。
「あー、もう! 大切にしているのは分かるけど、隠さないで。貴方がこんなに独占欲が強いなんて思わなかったわ。まさか、リシェさんの顔色が悪いのも、旅の疲れだけではなく貴方が毎晩…… 」
「ロズヴィータ叔母上!」
今度はフレデリックが、ロズヴィータに詰め寄る。
「本っ当にっ、本気でやめてもらっていいですか!今、俺は真剣に口説いてる最中なんです!」
「あ、あら? プロポーズを受けてくれたのではなくて? 」
「受けてはくれましたが、まだ契約は交わしていないんですよ! 逃げられたら、叔母上のせいですからね! 」
「じゃあ、まだ、夜を共には…… 」
「当たり前です! 叔母上と一緒にしないでください!」
「……っ?! ちょっとフレドっ! それは、ギジェルモが手が早いとでも言いたいのっ?! 」
興奮した二人の声は、ヒソヒソ声で話してはいるがリシェには丸聞こえだった。
口説くとか、夜を共にとか、恥ずかしいから、こっちが本当にやめて欲しい。
その一心で、リシェは二人に恐る恐る声を掛けた。
「あ、あの…… 」
「なぁに? 」「何んだい? 」
ロズヴィータも、フレデリックも、競る様にこちらを見るから、変な迫力にリシェは固まってしまった。
それでも、声を掛けた以上、何かを言わない訳にはいかない。リシェは覚悟を決めて、話し出した。
「あの、フレデリック様は馬車で、ペゼンティからブーランジェは目と鼻の先とおっしゃっていましたけれど、ランツァの西の端に位置しているペゼンティは、ブーランジェとは相当距離があると思うんです 」
二人は黙って聞いている。リシェはこんな所で聞くことではなかったと後悔し始めていた。
もしかしたら、私には分からないと思って、安心させるために言っただけだったのかも知れない。でも、どうしても気になっていた事だったから。
「ランツァとブーランジェは、ロズヴィータ様がペゼンティ辺境伯様と結婚されていることからも友好国という事も分かりますが、それにしても 」
すると突然、ロズヴィータが、「フレデリック・ド・ノアイユ・グラヴェロット 」と、フレデリックの名前を呼んだ。
今までに無い、厳しい声にリシェは身体を震わせる。
だが、呼ばれた当のフレデリックは、余裕そうな顔でリシェの方を見ていた。
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