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6せっかくの夕食が
しおりを挟む夕食に呼ばれて本邸のダイニングに座っている。
一番奥にガストン侯爵、その横に奥様。ネイト様が座って隣にメリンダ様が座っている。
私はふたつ離れた一番端の椅子に座って食事が始まった。
静かだった。衣擦れの音ひとつ。呼吸するのでさえ気が引けた。
そんな中メリンダ様がパミラ様(メリンダ様専属の侍女)に小さな声であれこれ指示を飛ばしている。
グラスやナプキンなど奥様専用のものがあるみたいだ。
メリンダ様はご自分のグラスやカラトリーを受け取って食事をしている。
「コホン。それでみんなもうわかっておると思うが今日から我が家に来てくれたミーシャ嬢だ。みんなよろしく頼むぞ」
静寂を破るようにガストン侯爵が改まってみんなに紹介してくれた。
私はスープを掬い掛けていたが、慌ててスプーンを置くと椅子から立ち上がり挨拶をした。
「不束者ですが、皆さまどうぞよろしくお願いします」
「「「ええ、よろしく」」」3人が声を揃えて言う。
そしてまた会話のない食事が始まった。
私は言いを殺すようにして食事をした。
スープを飲み込む音さえ気を付けてナイフの音を立てないようにゆっくりナイフを引きフォークを持つ手に力を込めて…
せっかくのごちそうも味さえ感じない。
パンがふかふかで柔らかいのが救いだった。飲み込むのに苦労しなくていいから…
(ああ~こんなにおいしい食事がちっとも美味しいと感じない…)
やっと食事が終わりガストン侯爵が席を立った。それに続いて奥様、メリンダ様が席を立った。
「私はまだ仕事があるから書斎にいる」
「わかりました。後でお茶を運ばせます」
「ああ、頼む」
そこで夫婦の会話が終わったらしい。
「そうそう、ミーシャ。あなたもゆっくり休んでちょうだい。では、おやすみさない」
私は急いで返事をした。
「ありがとうございます。おやすみさない」
メリンダ様も応えたが私の方は見ようともしなかった。
「おやすみなさいお母様……あの、あなた、お忙しいの?」
今度は若夫婦の会話だ。
ネイト様はまだ席に座ったままで答えた。
若奥様(ここで私の中でマーガレット様が大奥様になりメリンダ様が若奥様に変換された)の顔さえ見ようとしていない。
食事の後書類を開いていてそれを目で追っている。
「ああ、父の手伝いがある」
「では私は先に休ませて頂きますわ」
「ああ、そうしてくれ。私は自室で休む」
「わかりました。では、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
メリンダ様は寂しそうに見えた。
(若奥様にも冷たいの?ああ~それって絶対いけない行為ですよご主人様。いくら何でも若奥様の顔は見て話をして下さいよ。私がそんな事言える立部ではないですけど…)
「あの…では、私も休ませて頂きます。ご主人様おやすみなさい」
私は立ち上がりネイト様に挨拶をした。
ネイト様ががばりと顔を上げた。
彼はきゅっと眉根を寄せて銀色の瞳が細め冷たい印象がさらに強くなる。
(ひぇ、な、なんでしょうか?)
「ミーシャ、俺は今夜を逃せばしばらく忙しくなる。早速で申し訳ないが今夜離れに行ってもいいだろうか?」
その声音は優しいわけでもなく威圧的でもない。
事務的な感じだった。
(ゲッ!心の準備がまだなんですけど…いやいや、ここに来た段階でそれはもう思ってはいけない事だろう)
私は背すじが伸び上がる。顔は驚いた表情になっただろう。しかし!きゅっと顔を引き締め答える。
「も、もちろんです。私はそのためにここに来たのですから、では、お待ちしております」
「ああ、何か飲むか?ワインか酒でも」
「いえ、お酒は飲まないので」
「そうか、では後程」
それだけ言うとネイト様はまた書類に目を落とした。
なぜか私はがっかりした。
(ふっ、期待などする方がおかしいじゃない。これは契約なのよ。ふたりの間には感情なんかあるはずもないんだもの)
「ミーシャ様、ご案内します」
さっとカティが機転を利かせてくれた。おかげで助かった。
私は強張った脚を必死に前に進ませてやっと離れに戻った。
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