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11ネイトの胸の内
しおりを挟む俺は帰りたくない気持ちをぐっとこらえてミーシャから離れた。
もっとキスしたい。抱き締めていたい。
俺がそんな気持ちになるなんておかしいと思った。
いや、最初にミーシャを見た時から俺の心はざわついた。
だから逆にいやだった。
それなのにミーシャが初めてだってわかった途端箍が外れた。
もちろん妾の話は最初はいやだった。何だか自分がずるい人間になったみたいに思えた。
でも、両親からはせっつかれ後に引けなくなった。最初はやったふりでもしようかとも思った。
でも、母は事がなされたかを確実に確かめる気配だった。
だから仕方なく義理でその行為さえすればいいと思ってここにやって来た。
いや、ミーシャが嫌そうならしばらく様子を見てから決めようかとさえ思っていた。
なのに…
いや違う。
俺だって限界だった。
何もかも1年前兄のブルーノが病気で亡くなってすべてが狂った。
兄の婚約者だったメリンダを妻にしろと父から言われた。
はッ?俺が。騎士団もやめて領地経営の勉強をしながら王宮の事務官をしろとも言われた。
何かの間違いだろう?
俺には無理だろう。
だが、それからすべてが変わった。
学園に通う頃は1歳違いの兄はもてていた。貴族令嬢から言い寄られ兄も悪い気はしていなかったと思う。
だが、我が家は男女交際には特に厳しかった。きっと祖父の影響だろう。祖父はかなり女性からもてたらしい。
結婚前からかなり女遊びが激しく何度も色恋沙汰を起こしていたと聞く。
結婚してからも浮気は絶えず愛人を作り子供も出来た。そのせいで父が成人したあと離縁になり後釜にその愛人と結婚した。
もちろん父との間に出来た子共で侯爵家の後継者問題が勃発したが祖母の鶴の一声で決まった。散々浮気をして来た祖父の言うことなど聞けないと。
そして長男の父が後継者になった。
そして祖父と後妻は領地に引き込んだ。父の異母弟のマーロは子爵令嬢と恋に落ち今は平民として暮らしている。
そんなことがあって祖母は父を厳しくしつけた。女性問題を軽んじると大変な事になると。そして男女交際も厳しく目を光らせた。
そのおかげか父は生真面目で結婚して初めての女性が母だったらしい。
その教えは俺達兄弟にも引き継がれ俺達は学園に通う間、厳しく管理された。
兄は学園を卒業してすぐに見合いをした。それがメリンダだった。兄はメリンダに夢中になった。
童貞の男が恋に落ちると恐ろしい。
可愛いあのストロベリーピンクの髪、美しい宝石のような碧色の瞳。お人形のように庇護欲をそそる可愛らしさ。
まあ、そうかもしれないが俺は好みじゃない。まったく。あんな女のどこがいいんだ。
俺は仕方なくメリンダと結婚。
結婚してやっぱりだった。
可愛いばかりのメリンダはわがままで潔癖症。人に触れられるのも病的に嫌だし自分がふれるのも嫌だと言う。
持ち物はすべて次女のパメラが揃えてくれたものに限られる。
部屋から出てくることは滅多にないしパーティーの同伴だって大ごとだ。
手袋をして完璧に自分の身を防御して会場に入る直前にやっと俺の腕にふれないよう腕を組む。
ダンスなんかいつもパス。
母がさすがにまずいんじゃッて言うがその度に気分が悪くなったと言って先に帰ってしまう。
今夜だってそうだ。久しぶりに家族そろっての食事だったが、メリンダはカラトリーをパミラに持って来させグラスも取り換えた。
使用人に失礼だと思わないのか?
俺の家はそんなに不潔かよって言いたくなった。
まあ、滅多にそろって食事などしないし、今日はミーシャも同席していたからぐっと我慢したけど。
そんな俺達の結婚生活は真っ白い。メリンダとは一度も閨を共にしていない。
両親も薄々感づいた。メリンダとは真っ白い結婚だという事に。
それで妾の話になったってわけだが。
俺は学園を卒業して騎士隊に入った。
女と何か手も繋いだこともないほど純情な青年だった。
そんな俺に先輩たちは娼館と言う魅惑的な場所を教えた。しばらく好みの女の所に通い詰めた。
でも、その女が別の男にべったり抱きついてキスをしている所を見て現実に気づいた。彼女は俺に好意を持っているわけではない。あれは仕事でしている行為だと。
それからは定期的に性のはけ口に利用するだけになった。
結婚まで女と付き合ったこともなかった。
そして期待した初夜は拒絶された。その後俺だって何度か試した。
でも、今だ真っ白い結婚生活。俺は1年よく我慢したと思う。
だからってミーシャを見て無理やり行為に及ぶなんて…
きっと嫌われたな。
どんだけ飢えてたんだって今頃ミーシャは呆れてるかもしれない。
あっ、でもミーシャは始めてだったから…
いや、夫とは一線は越えなくてもそれなりの行為はした経験はあると言っていたから…
でも、前の結婚では相手は不能だったんだ。
恐がらせたな。きっと…
俺はひとり自分の部屋で悶々とした。
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