妾に恋をした

はなまる

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30ミーシャが来る。メリンダ妊娠報告(ネイト)

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 ミーシャから手紙が届いたのはそれから1か月後だった。

 ~ガストン侯爵様

 
 突然こんなお手紙を出す事をお許しください。

 契約がなくなり私がこんな手紙を出す事もおかしなお話だとお思いでしょう。ですがどうしてもご相談しなくてはならないことが出来ました。

 どうか一度そちらに伺うことをお許しください。 

 お返事を待ってと言うようなお話ではないのです。

 私はこの手紙送った翌日にはこちらを立とうと思います。

 皆様には大変ご迷惑をおかけするかもしれなせん。どうかお許しください。

 それではよろしくお願いします。 

                               ミーシャ・ベルランド~
 

 俺はミーシャとの契約を勝手に終わらせていた。父はその事を知らない。彼女の所に行ってもうしばらく実家にいるとみんなには伝えていた。

 「ネイト一体どういうことだ?ミーシャは契約がなくなったと書いて来たぞ」

 「ああ、1か月ほど前にミーシャのところに行ったと言っただろう。父さん実はあの時もう妾はいらないと断わったんだ。勝手なことをして済まない」

 「それでいいんだな?」

 父は怒らなかった。

 それに父に内緒にしたせいでミーシャの荷物もまだ片付けていなかった。

 来るならちょうどいい。荷物を持って帰らせよう。

 これでほんとにお別れだ。

 俺は何だか寂しい気持ちになるが、何でもないふうを装って言葉を吐きだした。

 「ああ、だからミーシャがここに来る事はないはずなんだが…」

 「だが、この様子だと何か困ったことが起きた様子だが?」

 「子爵が病気にでもなったとか?」

 「ああ、お前が妾の契約を切ったならそれくらいしかないな…まあ、出来る事はしてやるつもりだが…」

 「ああ、頼むよ父さん。きっと家しか頼るところもないんだろう」

 父がミーシャが来ることをみんなに伝えた。

 俺は父と話をして少し安心した。


 その夜の夕食時だった。

 いつもは会話ひとつないメリンダが声を上げた。

 「お父様。お母様。私やっとうれしいお知らせをお伝え出来ますわ」

 氷のような冷たい雰囲気を醸し出しているメリンダが微笑みながら話す。

 「まあ、一体何かしら?」当然母が聞いた。

 「はい、お母様。私、どうも子が出来たらしいんです。いえ、まだお医者様に見て頂いたわけではないんです。でも、悪阻だと思うんです。それにきっちり来るはずの月のものもないですし…」

 父が上ずった声を上げた。

 「ね、ネイト?お前覚えはあるのか?」

 「はっ?…」俺の脳裏に半月ほど前の嫌な記憶がちらついた。

 「そ、そう言えば…あったかも」

 「そうか。いつの間にお前たち…メリンダ明日にでも医者に行って来なさい。それから十分気を付けるんだぞ」父の顔が笑顔に変わった。

 「ええ、メリンダ、気分は?まあ、あなたほとんど食べてないじゃない。料理長何か食べれそうなものを作ってやって!」母も急いで立ち上がり調理場に走った。

 「はい、お父様。お母様。大丈夫ですから」

 メリンダが笑った。

 俺は地獄の光景を見た気がした。


 (ミーシャがもうすぐここに来る。どうするんだ?って言うか何を慌てているんだ俺は…メリンダは妻だ。ミーシャとは子を成せないと決心した結果だろう?)

 なのにこの焦燥感はなんだろう。

 俺は狼狽えた。

 父は嬉しそうに言った。

 「まあ、とにかく明日メリンダの妊娠がはっきりするまでは待とう。すべてはそれからだ」

 「ああ、でも、ほとんど決まりなんだろうメリンダ?」

 「ええ、私絶対に自信があるの」

 「そうか。俺は仕事があるからお先に…メリンダ子が出来て良かった。気を付けてな」

 「はい、ネイトありがとう」

 メリンダは勝ち誇ったように笑った。


 そして翌日妊娠がはっきりした。

 うそのように喜ぶメリンダに俺は違和感を覚えた。

 そんなに子供好きだったか?

 あんなに子供を作る行為も、子供も嫌だって言ってたのに。

 俺は心から喜べない気持ちに悪者にでもなった気がしていた。

 だって、俺の子だろう?

 一応。

 湧き上がる嫌悪感。

 俺は生れてくる子供を可愛がれるのだろうか?

 まあ、そんな事を今考えても…

 明日はミーシャに会える。

 今はそのことだけを考えていたかった。

 ミーシャ。俺の唯一の女神。



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