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しおりを挟む「う、うーん…‥」
瑠衣は体をもぞもぞ動かした。
「瑠衣?瑠衣?気が付いたのか?」
誰だろう?わたしを呼ぶのは…あっ、そうだ修仁?目を開けようとしてみるが瞼が重くて、それになにより体が鉛のように重い。
「瑠衣大丈夫か?ああ…瑠衣何とか言ってくれ」
その声はひどく心配そうで、そして温かく感じる。
「誰なの?わたしを呼ぶのは…」
瑠衣はかけ布団から手を伸ばしてその人を探す。
いきなりざらついた大きな手に手をつかまれると、瑠衣の心に温かい液体が流れ込むような気がした。
瑠衣は驚いてふっと目を開けた。
目の前には古ぼけた天井が見えた。
「瑠衣、気が付いたのか?」
聞き覚えのある声がして瑠衣はそちらに向いた。
レオナルドじゃない。どうしてあなたがここにいるの?
わたしの脳はしばらく休眠状態だったらしく、何があったのかまだ思い出せずにいた。
「あれから丸二日君はずっと眠ったままだった。俺はもう瑠衣が死んでしまうんじゃないかって心配で心配で…良かった気が付いて…」
レオナルドはそれはもう目を見張るような最高の笑顔でわたしを見つめていた。瞳はきらきら潤んで、涙をためているように見える。おまけに耳はフルフルと揺れている。
わたしが死ぬ?
あっ!わたしの記憶は一気に蘇った。
修仁に殴られて、この世界に来て女神が現れて、おまじないで病気の人を助けて…それから、それから…井戸の水を…そうだった。そしてわたしは意識を失った。
「レオナルド?」
わたしは目をしばたかせて彼を見る。よく見るとレオナルドの顔色は悪く頬はこけて目の下には隈が出来ていた。
もう、レオナルドったらわたしの事をこんなに心配して?
「瑠衣…良かった…」
「もう、それはこっちの言いたいことよ。どうしてそんなにわたしを心配してるのよ。あなたの方が倒れそうじゃない?」
「俺の事なんかどうでもいいんだ。君さえ無事なら…」
わたしは彼を見つめた。
”どうしてそんなにわたしの事を構うの?
どうしてこんなになるまでわたしを心配していたの?
どうしてそんなにわたしを愛してるっていうの?
いいからもう放っておいてよ!”
心の声をは、彼に向かって醜い毒をまき散らしそうになる。それをぐっとこらえて彼を見つめた。
レオナルドは、眩しいほどイケメンでそんな顔で見つめられていると、うなじのあたりがぞくぞくしてくる。
わたしはぎゅっと目を閉じる。本当にこれは現実?決まってるじゃない。
本当は素直に彼を信じてしまえばいいのに…
それが出来ない自分が嫌だとも思う。
瑠衣の脳はシャッフルでもされるみたいに揺れまくる。
大体ねぇ、わたしは今までこんなに優しくされたことはないんだから、両親が亡くなって祖母に育てられたけど祖母は厳しくてわたしを決して甘やかしたりしなかった。人を頼らず自分の事は自分でやるのが当然だと思っている人だったから…そして結局祖母は亡くなった。おまけにその後出会った修仁の優しい言葉にわたしはすっかり騙された。もう、ばかだった。彼がわたしを好きだと思いっきり勘違いして…彼はもう最悪な男だったじゃない。
レオナルドがすごく優しいのはものすごくうれしいし、彼の甘い言葉をささやかれてわたしはいい気分にもなる。彼はほんとわたしにすごく優しいって言うか優しすぎるのよ。わたしにはやっぱり信じれないから…
だってそうじゃない。わたしはレオナルドからそんなに優しくされる理由がないんだもの。
おまけに愛なんて、笑わせないでよ。そんなものわたしが信じれるはずがないじゃない。愛は妄想で現実には存在しないものよ。わたしは身をもってそのことを学んだのよ!
そうだ!もしかしたらわたしがあの不思議な力を持っているから、彼はこんなに優しくしてくれるのかも
そうよ。最初に会った時わたしは不思議な力を彼に使った。だからきっとわたしを大切に扱うのよ。
わたしったらすっかりレオナルドがわたしを愛しているかもだなんて思ってしまって…そんなことあるはずないじゃない。
瑠衣のちっぽけな脳みそはやっとスロットルマシンが止まったみたいに彼が優しい理由をはじき出した。
瑠衣はそっと目を開けた。レオナルドは疲れているのだろう。目を閉じてうとうとしているように見えた。
そっと声をかける。
「レオナルドあなた疲れてるのね。心配かけてごめんなさい。そう言えばわたしがここにいたらお邪魔よね?そうだ!わたしを使用人として雇ってもらえないかしら?それなら使用人の部屋とか用意してもらえるんでしょう?」
「瑠衣何を言ってるんだ。君に働いてもらおうなんて思ってない。君は心配しなくていい。ここにいればいいんだ」
ああ…なんて優しい言葉なの。もしこれが彼の心からの言葉ならどんなに嬉しいか知れない。でも彼はなにか魂胆があってわたしを大切にしているんだから、今まで見たいに彼の優しさにうっとりしてはいられないから……
「そんなこと出来ないわ。だってここはあなたの部屋だし、騎士隊の隊員はみんな男性でしょう?あなただけわたしをここに置いたら何て言われるか。わたしあなたに迷惑かけたくないの。わかってくれるでしょうレオナルド?」
レオナルドに気づかれないように彼を遠ざけなければならない。
「瑠衣君はなんて優しいんだ。そんなに俺の事を思ってくれているなんて…そうだな。今すぐというわけにはいかないから取りあえず君の部屋を用意させよう。それから服を用意したから、後で着替えるといい。もし必要な物があったら言ってくれ、すぐに用意させるから」
その途端瑠衣のお腹が鳴った。
「ぐぅー…いやだ。わたしったら…」瑠衣は真っ赤になる。
「悪かった。お腹がすいたろう?気が付かなくてごめん、すぐに何か用意させるから待っててくれ!」
レオナルドはどこまでも優しい。笑われるかもと思ったが反対に心配している。彼は急いで部屋を出て行った。
レオナルドはすぐに食事の用意をさせて食事を持って来た。
トレイの上にはスープにパン。チーズやハムのほかにもブドウに似た果物ズーラや木の実などがあった。
「瑠衣、何か食べるんだ。これはどう?それともズーラの実は?」
レオナルドは次々に手にとっては瑠衣に見せてくれる。
瑠衣はスープを手に取った。
いけないと分かっているのに、そんな優しさに甘えたくなる。手を差し伸べて彼に触れたくなる。そして甘いキスをして欲しいとせがみたくなる。
だって、彼とのキスで、生まれて初めてキスがあんなに甘いと知ったから…
ビリビリと流れ込んで来るそんな思いに唇をかみしめた。
「どうした瑠衣?スープが冷めてしまうぞ」レオナルドがわたしの手にそっと触れる。
「ええ、そうね…」わたしは急いで皿からスープをすくって口に運んだ。
野菜の甘みとチキンの旨味がきいたスープはお腹にも優しくすごく飲みやすかった。
一度食べ物を口に入れると、体がエネルギーを欲していたのか、一気にスープを飲んでしまった。
「すごくおいしい」
レオナルドがスープ皿を受け取ってくれる。
「パンやチーズは?」
「じゃ、こっちがいい」瑠衣はズーラの実を指さす。
「ズーラか?ああ、その方がいいかもな。いきなり食べたらお腹が驚くかもしれないからな」
レオナルドが赤紫色をしたズーラの実を取って瑠衣の口もとに持ってくる。
「瑠衣、口を開けて、ほら、あーんしてご覧」
瑠衣は手を出して受け取ろうとすると彼は首を横に振った。どうしても自分で食べさせたいようで頑としてズーラの実をどかさない。
瑠衣は諦めて口を開ける。
「あーん…うん?甘ーい。おいしい…」瑠衣の顔が思わずほころんだ。
「そうか。おいしいか?もうひとつ…」
レオナルドはまた数粒ズーラの実を瑠衣の口に運ぶ。
瑠衣は何度もズーラの実を口に運んでもらった。
何度かズーラを口に運んでもらううちに、レオナルドの指を一緒にくわえてしまった。
「瑠衣…」レオナルドの声が震えている。
レオナルドと言おうとしたけど、彼の指を離したくなかった。代わりに瑠衣は彼の指を強く唇で吸って舌先を這わせた。
彼の肩がぶるっと震えたかと思うとレオナルドが身をかがめてきた。
瑠衣の唇がふさがれる。
柔らかな感触が唇に触れただけでそこから甘い疼きが下半身に伝った。ピクンと花芽が起き上がり、ドクンと心臓が波打った。
これはただの欲望。体が彼から受けた愛撫を思い出して勝手に反応しているだけよ。
離れなくっちゃ!今すぐに…
瑠衣は唇を引き離そうとした時、レオナルドの腕が瑠衣をしっかりと掻き抱いた。
瑠衣はもう逆らえなくなった。彼の引き締まった熱い筋肉。伝わって来る力強い鼓動。その一つ一つの感触に思わずぞわりと肌が粟立つ。
「瑠衣…愛してる」
低温の艶めいた声でささやかれついこくんとうなずいてしまう。
「レオナルド…」
彼を見上げる。その妖艶な赤い瞳に吸い込まれそうになる。
ああ…いっそ夢であって欲しい。
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