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しおりを挟むそのころ瑠衣は一人部屋に取り残されたまま考え込んでいた。
近衛兵は瑠衣を部屋に入れると何も言わずさっさと出て行ったのだ。
もう、どういう事?
全く理解できなかいから…
それもそのはず。今まで民主主義という自由な国で育って来た。
瑠衣にとっては、あんな奴が国王だなんて信じられない。
それに国王があんなに横暴だとは思ってもいなかったわ。
一国の国王ならみんなの言うことに耳を傾け、立派な政治をしようと努力するはずよ。なのにイエルク国王ときたら、政治には全く関心はないみたい。おまけに自分は女と遊ぶことばかり考えているなんて…ったく!
あんな偉そうにして、なによ!
おまけに脂ぎったあの唇…ああ、思い出すだけでもゲロしそう…
ああ…そんな事より、どうしようあんな事を言わなければよかった。
レオナルドを死罪にするなんて許さないんだから!
瑠衣は何とか逃げ出せないかと、窓の鉄格子を思いっきり引っ張ったり揺らしてみたりする。だが、そんな事ではびくともしなかった。
何とかレオナルドに危険が迫っていることを知らせなければ‥‥
とは言ってもどうすることも出来ない。
瑠衣はまた頭を抱え込んだ。
もう…どうしよう。やっぱり言い伝え通りになってしまうの?
ううん、そんなの絶対に嫌よ。何とかして逃げる方法を考えるのよ。だが、目ぼしい考えは浮かんでは来なかった。
そんなところにドアがノックされる音がした。
「はい、どなた?」
瑠衣はまた何をされるかとビクッとなった。
ドアの外で兵士の話し声が聞こえてすぐにドアが開いた。
「やあ、聖女様。こんなことになってさぞかし辛いだろうな」
「あなたは…ロンダ副隊長!あのどうしてここに?もしかしてわたしを助けてくれるとか?」
「いくらわたしでもそんな権限はないので、それにあなたがレオナルドと番の印を交わしていたとは驚いた」
「それは…レオナルドがわたしを守ろうとして…でも結果的に悪い方に行ってしまいました。わたしレオナルドを助けたいんです。彼に死んでもらうためにあんな事をしたんじゃないんです。ロンダ副隊長!お願いします。わたしをここから逃がして」
ロンダは不意に妹のイアスが可哀想に思えてきた。今だリンパ腫の治療をして苦しんでいるというのに、レオナルドはこの美しい聖女に恋い焦がれているとは…おまけに番にすると決めた。あんなに短い期間の間に‥‥
ロンダの頭に不意に言い伝えが浮かんだ。
「聖女様こそ、自分の身を案じたほうがいいんじゃありませんか?レオナルドはあなたが思っているような男ではないんですよ。聖女様はご存じないでしょうが…」
瑠衣はロンダをにらんだ。
でも、ハッとする。わたしったらいつの間にレオナルドが殺されるかもって思ったらどんなことをしてでも助けたいと思ってたけど…
なに?
もしかして…ひょっとして‥‥彼の修仁のようにひどい男とか言うつもりじゃないわよね?
「何です?その知らない事って」
瑠衣は興味はないふりをして聞く。
「実はわたしの思うととレオナルドは結婚の約束をしてたんです。でも妹は病気になって可哀想に妹は自分から結婚を断ったんです。自分は彼の妻にふさわしくないと言って…」
「そんな…レオナルドは彼女を見捨てたんですか?」
「まあ、言い方は悪いですが…」
瑠衣は絶句する。レオナルドに婚約者がいた。おまけにその相手が病気になって‥‥なんて薄情なの。彼がそんな冷たい男だったなんて知らなかった。
しょせん男なんて…瑠衣の心は、いつ割れるともわからない薄い氷の上に立ったような心細い気持ちになる。
「それで妹さんは?具合はどうなんですか?」
「まだ治療を続けていますよ。見ていても痛ましいくらいです」
「まあ、お可哀想に…早く良くなるといいですね」
瑠衣はかきむしられるような胸の痛みを隠した。でも、もし彼女が亡くなってでもいたら、もっと彼を許せなくなる気がした。
だからご両親が躍起になって新しい相手をレオナルドにと?
そりゃ病気の妻をもらうより健康で丈夫な赤ちゃんを産んでくれるお嫁さんの方が言いに決まってるもの…‥変なところに納得してしまう。
「あの…聖女様。こんなことを言っていいのかわかりませんが…聖女様も言い伝えはご存知ですよね?」
「えっ?ええ、まあ‥‥結ばれた相手が死んでしまうってあの言い伝えですよね?」
男は一度死ぬけど聖女が身代わりになって生き返るっていう話よね?
何だか噓みたいな話だけど、もしレオナルドが死んだら?
いやだ…そんなのだめ。
えっ?待って、そうだ。慌てなくていいのかも。だってわたしがレオナルドを生き返らせればいいんだから…
「それにロンダさん‥‥わたしを聖女って言うのはやめて欲しいんですけど。わたしの事は瑠衣って呼んでもらえませんか?」
「はい、では瑠衣さん。でも男は生き返ってその後このアディドラ国の国王となるんです。それはご存知ですか?」
「まだ、続きがあったんですか?知りませんでした」
って言うことは?
次々に話の展開が早くて頭が付いて行かないが、結局男が一番得をしたって話よね。この話って‥‥
「つまり?」どういう事?
「瑠衣さん。レオナルドはこの国の国王になるつもりかも知れませんよ」
ロンダは自分の言った事なのに、ハッとした。
最初にこの部屋に来るまでそんなことは思いもしなかった。だが、よくよく考えてみるとレオナルドが殺されれば瑠衣は必ず彼を生き返らせるだろうな。そうなれば国民はレオナルドを国王と認めるに違いない。
確かにイエルク国王は嫌な奴だが‥‥
今までレオナルドが何を考えているかよくわからない男だと思っていたが、聖女様と出会ってそんな野心を起こしたのか?
大変だ。ジャミル宰相に報告してすぐに出発しなければ。今は一刻も早くレオナルドを捕らえなければならなくなった。
「レオナルドが国王に?そんなバカな‥‥いい加減な事言わないでよ!」
瑠衣も驚いた。まさか…そんなことあるはずないから…
「これは言いすぎでした。気にしないでください。瑠衣さんはここにいれば安全です。今の国王はあなたに手出しは出来ませんから」
彼は慌ててさっきの言葉を否定した。
「では、わたしは仕事がありますので失礼します」
そう言うとロンダは急いで部屋を出て行った。
残された瑠衣は余計に悶々とした。
レオナルドに結婚したいって言われて舞い上がっていた。
でもよく考えてみればロンダさんの言うことの方が納得できる。
すべて彼の野心のため、わたしは利用されたの?
うへっ、また男に騙されたって事?
そう言えばロンダさんは急いでいた。彼がレオナルドを捕まえに行くのだろうか?ロンダはきっとレオナルドを恨んでいるに違いない。先日はまだ紳士的だったけれど、こうなったら容赦はしないだろう。
こうしてはいられない。何とか脱出する方法を考えないと‥‥
でもレオナルドは嫌な男かも知れないのよ。
修仁よりもっと…‥
でもここにいれば国王の妻にされてしまう。どっちにしてもここから逃げ出さなければ‥‥
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