いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる

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 もともと一つの国だったリンドラ王国は獣人と人間との争いで戦争をしていた。国の乱れを止めるため神が聖女をこの世界に遣わされる。聖女は獣人と恋に落ちるが、獣人は人間に殺されてしまう。聖女は悲しみ人間と死んだ獣人の前で身代わりになって死んでしまう。そして代わりに獣人は生き返る。聖女が身代わりに息絶えたのを見てひどく苦しむが聖女の思いを無駄にしてはいけないと、新しくアディドラ国を作りその国の王となるお話だった。


 瑠衣はそんな事はもう考えまいと思っていた。でもやっぱりこれは本当のことなんだと思うとまた迷い始めた。

 ふとレオナルドを見ると彼はさっきと同じように窓の外を見ていてどんな様子はわからなかった。

 レオナルドは本当に国王になるためにわたしを利用しているの?

 もしそうなら、わたしは彼について行ってはいけないの?

 レオナルドを愛している気持ちにだけではもうすまされないの?


 でもこれだけははっきりしている。

 この国を混乱と争いに巻き込んではいけない。モルクたちを苦しめるようなことをしてはいけない。

 だけど国王の妻になんかなれるはずがない。でも、このままレオナルドと行けば彼には死が待っている。でもお話によれば彼は生き返ってこの国の王となる。それはわたしが死ぬことで…


 女神様の話によると、それはわたしがあちらの世界に戻ると言うことなのだろうか?

 もし、わたしが死んでしまったら、もしくは帰ってしまったら彼は悲しんでくれるのだろうか?彼はわたしを求めて苦しむのだろうか?

 瑠衣はますますどうすればいいかわからなくなった。


 お話を読み終わるとグレタがパンケーキを持ってきてくれた。

 とろりとはちみつのかかったパンケーキは見るからにおいしそうで瑠衣は喉をごくりと鳴らした。

 モルクは元気になったようでそのパンケーキをほおばって食べ始めた。

 「さあ、おふたりもどうぞ、どうぞ。おかわりもありますから遠慮なく食べてください」グレタにそう言われると瑠衣はパンケーキにかぶりついた。

 ああ…おいしい~

 瑠衣はレオナルドにも進めてふたりはパンケーキをお腹いっぱいごちそうになった。

 食べ終わるとレオナルドはすぐに出発するからと言った。

 瑠衣はもう少しここにいたかったが、いつまでもここにいては迷惑になると気づいて腰を上げた。

 グレタとモルクは名残を惜しんだが、そんなわけにも行かないからとレオナルドが言いきった。

 グレタはそれならばと馬を用意してくれた。

 そしてレオナルドと瑠衣はふたり馬に乗って地主の家を後にした。


 レオナルドは馬に乗ったことのない瑠衣を前に乗せると後ろから瑠衣を支えてくれた。

 「瑠衣?辛くないか?」

 「ええ、大丈夫。あなたが後ろにいてくれるから…」

 「ああ、離れるもんか、これからはもうずっと一緒だ」

 ずっと一緒って?一緒になんかいられないと分かってるくせに…もう、やっぱり口がうまいのね。修仁と同じだ。彼は愛してるとは言ってくれなかったけど…それに優しくもなかったけど…

 瑠衣の中に沸き上がった不安は抑えようがなかった。

 「でも、一体どうするつもりなの?」そうよ、聞いてみたい。

 「取りあえずあの洞窟に行こうと思っている。瑠衣と出会ったあの洞窟だ。瑠衣も覚えてるだろう?」

 「ええ…」そもそもの始まりの場所…

 レオナルドは瑠衣をしっかりと抱え込むように腕をまわして馬をゆっくり走らせていた。

 「あそこなら洞窟を奥に進めばエレナ山の向こう側に出れる。プリンツ王国側にいれば追ってもそこまでは来れないだろうから、しばらくそこに隠れていて、それからゆっくり落ち着けるところを探して一緒に暮らそう。何、田舎で畑でも作ってのんびり暮らせばいい。瑠衣、お前がいればもう何もいらない」

 それって?国王になるつもりはないって事?じゃあ、わたしは?レオナルドも死ぬことはないって事なの?

 「待ってレオナルド。さっきモルクの所で絵本を読んだじゃない?あのお話では聖女と恋に落ちた男は一度死んで生き返りこの国の国王になるんじゃなかった?」

 レオナルドが大笑いした。

 「瑠衣?まさかあんな話を信じてるのか?あれはただのお伽話だ。子供の絵本なんて…瑠衣はそんなことを信じてたのか?まあ、国王でさえあのくだらん話に惑わされているんだから、仕方がないとかもな。いいか、俺はそんな気はさらさらない。君を番にすると決めたのは瑠衣を愛してるから、もうどこにも行ってほしくないからで…どうした瑠衣?」

 これって…今日二度目の愛の告白ってやつ?どうしよう。本気でレオナルドはわたしを愛してるって事?これって夢なんかじゃないんでしょうね?

 瑠衣は思いっきり頬をつねった。

 「痛い!夢じゃないわ…うん、レオナルドそれっていいわたしもいいアイディアだと思う」

 「そうか?じゃあ洞窟までなるべく急ごう。だがその前に食料や必要なものを揃えなければな…ヘッセンでは難しいだろうから、エサムに寄ろうか」

 「でもお金はないわよ」

 「この馬を売ればいい。そうすれば当座の食料や着替えなんかも準備できるだろう」

 「でもお風呂はどうするの?」

 もう、わたしってば…彼と交わるのにお風呂にも入れないんじゃあなんて考えてる場合?

 「ばかだな瑠衣、泉があったじゃないか」

 「あっ、そうか!レオナルドって頭いいのね。でも石鹸は買っといてね」布団はレオナルドが狼になれば問題ないし…もうこれで必要なものは…

 「後は…鍋とか皿とスプーンもお願い」

 「ああ、わかったよ。俺の奥さん!」

 もう、奥さんだなんて…レオナルドったら…

 彼の中ではもと婚約者の事はとっくに終わった話だったんだ。もうわたしったらあれこれ心配しすぎなのよ。心に引っかかっていたものがするりと落ちると瑠衣はすっかり舞い上がった。



 一方その頃ロンダは、前日の昼過ぎにはヘッセンの騎士隊本部に到着した。

 「すぐに騎士隊長のところに案内しろ!」

 ロンダの到着を聞いてすぐにジャックが出てきた。

 「これはロンダ副隊長、今日はどうされました?」

 「ジャック。騎士隊長はどこだ?すぐに会いたい」

 「すみません。騎士隊長は見回りに出かけています。自ら隊員のお手本にならなければと日々隊長自ら見回りに行かれるんです」

 「それでいつ帰って来るんだ?」

 「今日はあちこち見回ると言われていたのできっと夕食までには帰ってくると思いますが…」

 「もういい!どのあたりに行ったか教えてくれ。探しに行く」

 「まあ、そんなに急がなくても…はっきりとは聞いてないので場所をお教え出来ないんです。それより皆さんもお疲れでしょう?ゆっくりして隊長が帰るのを待てばいいじゃないですか」

 ロンダは仕方がないと、兵士たちに馬を下りて休むよう伝える。

ジャックはロンダ副隊長をもてなそうと、使用人にごちそうの準備を頼んだ。

 ロンダ副隊長は騎士隊の様子が見たいと言って訓練場を見てまわった。

 ジャックは隊員の一人に案内を頼んだ。

 だが、レオナルドがいないことがばれるのはもう時間の問題だった。



 その日の夜になっても騎士隊長であるレオナルドが帰って来ないと分かりとうとうロンダ副隊長は切れる。

 「一体どういうことなんだジャック?何か隠しているんじゃないのか?もしそんなことをすればただじゃすまないぞ。これはジャミル宰相直々の命令なんだからな」

 「ですがわたしにはさっぱりわからないんです。どうして隊長が戻ってこないのが」

 その時兵士の一人が駆け付けてきた。

 「ロンダ副隊長大変です。騎士隊長は今朝からいないようです。さっき使用人が話をしていたのを聞いたんです。朝早くにここを出たと…」

 「なに?それでどこに行ったか分かるのか?」

 「いえ、それは…何でも私たちがエサムいたことを知ったみたいで」

 「クッソ!やられた!」

 ロンダは歯ぎしりして悔しがる。

 「すぐに取って返す。馬を引け!」

 ロンダはジャックの胸ぐらをつかんで言う。

 「お前も一緒に来るんだ。ただじゃ澄まさないからな。覚えておけよ。時間がない、すぐに出発だ」

 ロンダ副隊長はジャックに一緒に来るように言った。ジャックは命令と言われ仕方なく一緒について行くことになった。本隊は急いでエルドラに向けて引き返し始めた。




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