悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる

文字の大きさ
15 / 45

15離縁の手続きに

しおりを挟む

 無事に王宮に着くと私たちは二階にある法務院を訪ねた。

 もちろん階段は有無を言わず抱かれそうになったが、歩く練習だと断固拒否した。

 一歩一歩ゆっくり杖を突いて階段を上がった。

 セルカークはそれを心配そうに見ながら後ろからついて来た。

 運のいい事二法務院の執務室は階段を上がって一番最初にある。歩く距離も少なく何より宰相の執務室には程遠い距離なのだ。

 義理父は今頃出仕してもう執務室にいるかもしれない。ライオスもそろそろ顔を出すかもしれない。

 でもそんな事で諦めるわけにはいかない。


 まず最初に法務院の入り口で受付をしなければならない。

 受付で女性から用紙を渡される。この人は法務補助員だろう。

 「まず、こちらの用紙に要件をご記入下さい。その後必要書類を書いていただきます」

 ミモザは離縁手続きと書いて必要書類を貰う。

 書類には名前、住まい、理由を書いていく。

 もちろん義理母から跡取りを切望されているとか、夫の愛人がいるからとか理由にはならない。そんな貴族はたくさんいるからだ。

 もっと直接的な精神的苦痛や身体的な苦痛を受けている事でなければ受付さえしてもらえないだろう。

 (ほんとに全部書くつもり?こんな醜態をたくさんの人が知るなんて…屈辱的だわ…)

 ミモザの手が動かなくなる。

 「大丈夫。ここは法務院。すべての者に守秘義務があるから君の事が誰かに漏れる心配はない」

 セルカークがミモザの子悪露を読み取ったかのようにそう助言した。

 はっとセルカークを見上げる。

 (彼って背も高かったのよね。ほんとに憎たらしいけどいい男)

 「ええ、そうね」

 (何のためにここに来たのよ。まったく、しっかりしなさいよ私)

 ミモザは気を取り直して義理父の暴力。義理母の強要の事。そして夫と閨の関係がない事を書いた。

 それにセルカークとライオスに書いてもらった証明書も付けた。

 「お願いします」

 受付で書類を出す。受付の女性はちらりと書類を見る。

 「離縁の手続きですね。こちらでお待ちください」

 「はい」

 あっけなくそう言われて拍子向けする。

 「そちらの方もご一緒ですか?」

 セルカークに問いかけた。

 「そうだ」

 ミモザは首を振る。

 「先生、ここからはひとりで大丈夫です。きちんと話を聞いてもらえそうですから」

 (だって、義理父にされた事とか話すかもしれない。もう帰ってほしい)

 「いや、俺も一緒に…いいから心配するな。ひとりじゃ帰りだって困るだろ?」

 「でも」

 「ご本人がそう言われてますのでお連れ様は…」受付の女性が退室をと言いかける。

 「そうだ。リック執務官はいるか。俺は身内なんだが呼んでもらえないか?」

 女性の顔色が変わる。

 「失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

 「失礼。セルカーク・ペルサキス。弟だ」

 「すぐに呼んでまいります」

 受付の女性はにこやかにほほ笑むとすぐにはそばを離れない。むしろセルカークに色目を使っているように見えた。

 「まだ何か?」

 セルカークはそんな女性をじろりと見る。

 女性はすぐに部屋に中に入って行った。



 ミモザは驚く。脳内でセルカークの行動分析を始めた。

 (あれ?セルカークってそんな男じゃなかったわよね。こんな時は大抵女性の近くによって髪の毛のひと房でもすくってウインクのひとつもして女の気を引くの。そうやって自分の言うことを聞かせるのよ。そしてその後必ずデートの約束とかするのよ。おかしいわ。ああ‥まだ朝だもの。そんな話は出来ないか?いや、法務院の受付でから?ううん、さすがに離縁しようとしている女の前では都合が悪いと思ったから?まあ、そんな事私には関係ないし、どうでもいいわ)

 
 「セルカークどうしたんだこんな所に来るなんて、まさかお前何かやらかしたのか?」

 そう言って出て来たのはセルカークの兄リックらしい。

 彼はセルカークと同じ黒髪だが瞳は蒼色だった。かなり年が離れているらしく中年のおじさんと言った感じだったがきちんとした身なり整えられた髪でかなりやり手の法務官ではと思えた。

 「リックそれはないだろう?これでも医療師なんだ。それより彼女の話を聞いてもらいたいんだ。事は急を要する。とにかく中に入れてくれ」


 セルカークはそう言ってミモザと一緒に中に入った。

 呼ばれてもいないのに強引だとは思ったが受付して用紙を提出してもすぐに話を聞いてもらえるわけだはなかったらしいと後で知った。

 だからセルカークは兄を呼んでくれと言ったらしいことも。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?

gacchi(がっち)
恋愛
名ばかり公爵令嬢のアリーは生贄になるために王宮で育てられていた。そのことはアリーには秘密で。ずっと周りに従順になるように育てられていたアリーだが、魔術で誓わされそうになり初めて反発した。「この国に心も身体もすべて捧げると誓いますね?」「いいえ、誓いません!」 たまたまそれを見ていた竜王の側近ラディに助けられ、竜王国に働きに行くことに。 アリーは名前をリディに変え、竜王国で魔術師として働く予定だったが、どうやら普通の人ではなかったようで?

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

処理中です...