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14その手には乗りません
翌朝目覚めるとミモザはひとりで立ち上がって見た。
少し痛いが何とか歩けそうだ。
ゆっくり支度をして顔を洗い髪をとかして準備をし終えた。
そこにセルカークが声をかけた。
「ミモザ夫人起きてますか?」
「はい、どうぞ」
扉が開いて驚く。彼は朝食を持って来たらしい。
「大したものは作れないが…パンと卵とスープだけなんだが食べれそうか?」
そう言ったわりにはきれいなオムレツが…(へぇぇ、こんな事も出来るようになったのね。私といた頃はお茶でさえ煎れる事も出来なかったのに)
何だか女たらしっぷりがさらにパワーアップしたみたいで複雑な気持ちになる。
「まあ先生が?申し訳ありません。無理なさらなくてよかったのに…」かなり厭味ったらしくなった。
「って言うか、一人で支度したのか?無理するなと言っただろう。脚はどうだ。痛むか?」
「いえ、もうほとんど痛みはなかったので支度でいました。ご心配かけて申し訳ありません」
「そうか。でも、ここにいる間は無理をするな。少しでも食べろよ」
サイドテーブルにトレイを置くとセルカークは一歩下がった。
「しまった。お茶がいるな。すまん。淹れてくる」
「先生、大丈夫です。スープがあるんです。これで充分ですから」
(なんだ?この展開は?まるで病気の妻をいたわるすごく優しい夫のような…ううん。これは彼のいつもの手だって知ってるでしょ!)
おかしな妄想が頭をよぎってミモザはおかしくなる。
「何かおかしかったか?卵は焦げたからな。それとも俺か?うん?髪が跳ねてるとか?それとも髭が…?」
セルカークはせわしなく髪や頬を触る。
「いえ、すみません。こんなふうにされるとなんだかくすぐったい気がして…」
(やだ。私ったら彼のペースに巻き込まれてるじゃない)と思うがすっかりペースにはまっている。
(何てこと!違うから…そうよ。結婚して夫となったライオスからはこんな優しくされたことはなかったからよ。もう、ばかみたい!)
「君はひどい目にあったんだ。少しは優しくされてもいいさ。さあ、冷めないうちに食べて、もう少ししたら出掛けよう。今日は午前中は休診にするから」
「何だか申し訳ありません。すぐに食べますから」
「ゆっくりでいい。食器は後で取りに来るから」
セルカークはそう言うと部屋から出て行った。
そして昨日乗って来た馬車でまた王宮に向かう。
御車は頼めば近所の人がしてくれるらしくよく見ると昨日とは別の人らしい。
ミモザは自分で下りれるといい張ったがどうしてもだめだと言われ諦めてセルカークに抱かれて階段を下りた。
もちろん腕は彼に回したりしない。彫像でも抱くかのようにミモザは彼に抱かれて身動き一つしなかった。
「ミモザ夫人、あの…腕を回して私にもたれていただけるとこちらとしても運びやすいのですが…」
「いえ、そういうわけには参りません。私、離縁の手続きが控えておりますので誤解のないようにと思いまして」
「まあ、そういう事なら仕方ありません。その代りじっとしていて下さいよ」
セルカークは仕方ないなぁ…みたいに苦笑する。
「昨日はそんな事はおっしゃらなかったのに」
「昨日は公爵家から連れ出したんです。そんな事言えるわけありません。その後もあなたは傷ついていた」
「そうですね」
(来たぁぁぁぁぁ!女たらし炸裂。離縁が決まりそうな女をあなたが放っておくはずがないわよね。美味しい餌をさあどうぞと言わんばかりに…そんな手に引っ掛かるとでも?)
「でも、少しは私を信じて下さってもいいのでは?」
「もちろん信じてます。でも、それとこれはまた別の事ですから」
「もういいです」
セルカークはむすっとして黙った。
階段をおりるとまだ抱いて行こうとするセルカークにミモザはせめて入り口から馬車までは歩くといい張りセルカークから離れた。
さっと彼が杖を差し出す。ミモザは杖をついてゆっくり玄関から馬車まで歩いた。
杖があると痛みもほとんど感じずに歩けてほっとしたが、馬車に乗るのは無理だった。
セルカークがうれしそうな顔でミモザに近づく。
「ここは無理ですよ。さあ。あなたは私の患者なんですよ」
手を出されて仕方なく手を借りる。抱かれて馬車に乗り込む。
床には座布団が敷いてありその上にゆっくりと下ろされた。
そして馬車の中では彼はすぐ隣に座った。
ミモザは距離を置こうと端に寄った。
セルカークはそれ以上近づくことはなかった。
(何考えてるんです?気持ち悪いんですけど…)
そんな気持ちのまま馬車は王宮に入って行った。
(どんな事をしても離縁できるようにしなきゃ、そのためならセルカークも利用させてもらう)
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