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35怒りに我を忘れる
しおりを挟むミモザは一瞬、雷鳴に打たれたかのような衝撃を受けた。
頭から足先にまで激しい痛みが突き抜ける。心臓に鋭いナイフでも突き刺されたような気がしてその場にうずくまりそうになる。
それでも走ることをやめれない。
セルカークから逃げなくては、ミモザはもたつきながらも憑りつかれたようにその一心で走った。
そして教会の裏手に回り込むとシルヴィと両親のお墓の前に吸い寄せられるように倒れ込んだ。
裏切られたショックとあんな男を信じた自分に呆れて、心も身体も深い沼の底に沈んでしまうようにその場に頽れる。
地面を拳で何度も叩きながら泣き叫ぶ。
「あ”あ”あ”あ…なんてばかなの。あんな男を信じるなんて!どれだけお目出たいの。シルヴィがどんな目にあったかよくわかってるはずなのに…あいつは女と遊び回って私はまるで邪魔者だった。それでも一生懸命セルカークを待って。待って。待って…そして死んでしまったのに…せっかく生きるチャンスをまた無駄にする気なの?もう、いや!あんな男とは二度と「ミモザ!」関わりたくない!」
そこにセルカークがやって来て声をかけた。
「ミモザ?どうしたんだ。いきなり走り出すなんて危ないだろう?転んだのか‥ほら、大丈夫か?」
セルカークは心配そうに走り寄って来る。
「触らないで!あなたなんか不潔よ!信じてたのに…近寄らないで!私に触らないでよ!「どうしたんだ?何が?」あなたなんか信じた私がバカだったわ。セルカーク、あなたとは知り合いでも何でもない赤の他人よ。もう、私に一切関わらないで!「なんの事だ?いったい…」いいから帰ってよ!」
セルカークはミモザが何を言っているのかさっぱりわからない様子で。
「なんだ?一体。ミモザ話してくれなきゃわからないだろう?どうして俺が不潔なんだ?髪は洗ったし昨日は風呂も入ったぞ」
「あなたなんか!私にはいい事ばかり言ってあんな女と遊んでるんじゃない。もう、騙されないからシルヴィみたいに私を騙そうたってそうはいかないわよ」
「はっ?何を言ってるんだ?ミモザ。どうしてシルヴィの事を知ってる?あれはもう20年以上も前の話でミモザは生まれたばかりくらいだろう?それにこの墓をどうして知ってるんだ?」
セルカークはやっと今いる場所がシルヴィと両親の墓の前だと気づいて驚く。
ミモザがあまりに頭に血が上り過ぎて正常な判断が出来る状態ではない。
眼鏡はとっくにどこかに行ってしまった。
涙はぬぐうこともせず溢れ出るままにしてきっと顔は悪魔みたいな恐ろしい形相になっているに違いない。
髪の毛はくしゃくしゃになって服だって泥まみれだろう。
それでもそんな事は構いはしない。
この男が憎い。セルカークを殺してしまいたいほど。
そんな憎悪が身体入から込み上げて彼に向かって罵詈雑言を浴びせる。
「セルカーク。私はあなたがどんな酷いことをシルヴィにしたか知ってるのよ。だって私はシルヴィの生まれ変わりなんだから。前世がシルヴィだったのよ。彼女が死んで私が生まれたのよ。だからあなたがどれだけシルヴィを傷つけたか知ってるのよ。私は大ばかよ。そんなあなたを「ミモザ、それは本当なのか?」信じたなんて!」
セルカークが驚いて話の途中に割って入る。
「ミモザ。それは本当なのか?シルヴィの生まれ変わりって…」
「そうよ。それなのに私ったらまたあなたに騙されて…もう、いや!」
ミモザはたまらなくなってまた立ち上がると走り出す。
身体が焼け付くような痛みで心が押しつぶされそうで無我夢中で突っ走る。
「ミモザ待ってくれ。危ないだろう。おい、そっちへ行くな。戻れ。おい、ミモザ」
セルカークはミモザを追いかける。
火事場のばか力とでも言うのだろうか。ミモザは早かった。
セルカークは必死で追いつこうと走る。
いきなり通りに出たミモザの前に馬車が…
「きゃー……「ミモザ危ない!」……バッシーン!!」
人の叫び声が上がり衝撃音がした。
身体が宙を舞って石畳の道路に叩きつけられる。
「ドーン!!」
折り曲げられた身体は黒いコートの男だった。その男の内側にミモザの身体は守られていた。
ミモザはふらふらしながらその男の腕から這い出る。
そしてその男の顔を見た。
「セルカーク?!どうして?うそ…えっ?な、なんで…私を庇ったの?大変頭から血が…誰か助けて!誰か医者を呼んで!早く!セルカーク!セルカークしっかりして…」
ミモザは意識のないセルカークの名前を必死に叫んだ。
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