悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる

文字の大きさ
34 / 45

34男なんて最低

しおりを挟む

 
 翌朝はいつもより早く目覚めた。寝坊してはいけないと思ってもいたし何より周りが騒がしかった。

 人の行きかう音や扉の閉まる音。いつもは聞きなれない音がしていた。

 ミモザは朝食をみんなと取ると部屋の掃除をして診療所に向かった。

 そこに血相を変えた見知った男が走って来た。

 「ミモザ!お前ヴィオラに何を言った?」

 「ライオス様?一体どうしたのです?ヴィオラさんに何かあったのですか?」

 ライオスはミモザの胸ぐらをつかんだ。そのせいで掛けていた眼鏡がずれた。

 運悪く連れは先に行ってミモザは最後だったので周りに人がいなかった。

 「な、何を…」

 首が締まって苦しい。

 ライオスが首元を放して押した。

 ミモザは転びそうになったが何とか踏みとどまった。

 「お前ヴィオラを待ちぶせて言ったらしいな。お前のような卑しい身分の者が公爵夫人になるなんて絶対無理だってばかにして笑ったそうじゃないか。どういうつもりなんだ?」

 「何をおっしゃってるのか意味が分かりません。私はヴィオラさんにそんな気持ちになった事はありません。結婚はあくまで政略結婚でした。最初からあなたには好きな人がいると分かっていましたし、私が嫌だったのは跡取りを産ませるために義理母様に無理強いさせられた行為が我慢ならなかったのです。それに離縁出来てものすごく喜んでおります。そんな私がヴィオラさんが貴方の妻になるからといて邪魔するはずがないじゃありませんか?むしろ応援したいくらいです。おふたりが結婚出来て良かったと。それなのにばかな事を言わないでいただけます?」

 ライオスの唇はわなわな震えている。

 ミモザは眼鏡を直してライオスを睨む。


 「で、でも、ヴィオラは泣きながら俺とは結婚できないって…お前に悪いからって。あいつは優しいからお前を追い出したと勘違いしてるんだ。だって今日ここにいるのもヴィオラを待ち伏せしてるからだろう?ヴィオラはここで手伝いをしてるってどこで知った?おい、いい加減なことを言うと許さないからな!」

 「何をばかな事を…私はここの診療所で働くのです。だって平民ですから仕事をしなければ生きてはいけませんでしょう?あの日は面接でここに来ていました。ヴィオラさんが来ることなど知りませんでした。待ち伏せもしておりません。偶然会って義理母様からうるさく言われて淑女教育が嫌だとおっしゃってました。そうそう、あなたなんか愛していないとも言われてましたよ。愛人で贅沢な暮らしをさせてくれるからそばにいるんだって、苦しい思いまでして結婚したくはないとも。ライオス様。この際ヴィオラさんにはっきりお気持ちをお聞きになった方がよろしんじゃないんです?」

 「お、お前は何を言ってるんだ!ヴィオラが俺を愛してないなんてあるはずがないだろう?ふん!ヴィオラに負けたからって負け惜しみか?ばかなやつだ。ああ、お前にはこんな所で働くのが似合ってる。いいか。二度とヴィオラに近づくなよ」

 「だったらあなたがヴィオラさんを監視して下さい。こんな所には来ないように。だって公爵夫人になるんですもの。ねぇぇ」

 「クッソ!覚えてろよ。今に泣いて助けてくれと言って来ても絶対に知らないからな。ふん!」

 ミモザは頭に来た。

 掛けていた眼鏡をライオスに投げつける。ライオスは一瞬驚いて飛び上った。

 腰に腕をあててライオスにずんずん詰め寄る。

 「あなたこそ。ずいぶん姑息な事をされるんですね。私があの診療所でお世話になっているからって薬を売らないようにしたり違法な薬物を診療所に置いて密告までして…まあ、ほんとにやることが小さいったらあなたのあそこと同じですわ」

 ふん!と顔を背けてやる。

 ライオスが目を丸くしたが今度は巻き返そうとする。

 「なっ?誰がそんな事をする?おまえとうとう頭がおかしくなったんじゃないのか?被害妄想もいい加減にしろよな!どんな手を使っても俺はお前とよりを戻すことはないからな。いいな?ったく。勘弁しろよ!!」

 ライオスの怒鳴り声はまったくの空回りだったが、何とか体裁を保ったと背筋をしゃんと伸ばすとさっさと教会を後にした。


 (ふん、最低な男。まったく。腹が煮えくり返るから!)

 ミモザは気分を害されたが遅くなったと急いで診療所に向かう。

 そうだった。ここは診療所だ。

 ミモザは気持ちを入れ替えて看護助手の仕事を始めた。

 セルカークの元で少しばかり手伝いをしたことで包帯の巻いたり言われた薬剤を準備することにも困らず何とか午前中の仕事を終えた。

 その後昼食を食べに食堂に向かう。

 その途中でミモザはセルカークがやって来るのを見た。

 うれしくて手を上げようとした。その時だった。

 「せんせ~い」

 派手な服装の露出の多い服を着た見るからに娼館にでもいるような女性がセルカークに声をかけた。

 彼はその女性を見ると嬉しそうに顔をほころばせた。

 「……」声は聞こえなかった。

 その女性はセルカークに縋るように腕にまとわりつく。

 彼はそれを振り払うでもなくふたりで楽しそうに話をしている姿が見えた。

 ミモザの目の前が真っ赤になった。

 (私、なんてばかだったの…彼を信じるなんて…どの男も最低!)

 とっさに走り出した。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

割込み王女に祝福を(婚約解消いただきました。ありがとうございました)

久留美眞理
恋愛
 没落貴族の令嬢ベアトリックスは、父を亡くした後、母の再婚相手のブライトストーン子爵の養女となった。この義父の借金を返済するために、義父によって新興成金の息子エドワードとの縁談を画策されてしまう。家門を救い、母を守るため、彼女はこの結婚を受け入れる決意をし、エドワードと婚約が成立した。ところが、王宮の茶会で会った王家の第三王女が、エドワードにひと目惚れ、ベアトリックスは婚約を解消されてしまった。借金を肩代わりしてもらえたうえ、婚約破棄の慰謝料まで貰い、意に添わぬ結婚をしなくてよくなったベアトリックスはしてやったりと喜ぶのだが・・・次に現れた求婚者はイトコで軍人のレイモンド。二人は婚約したが、無事に結婚できるのか?それともまた一波乱あるのか?ベアトリックスの幸福までの道のりを描いた作品 今度の婚約は無事に結婚というゴールにたどり着けるのか、それとも障害が立ちはだかるのか?ベアトリックスがつかむ幸福とは?

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)
恋愛
エテルネルの筆頭公爵令嬢プリムローズ・クラレンスは、周りが誰もが認める才女。 わずか10歳で自国の学業を終えて、孤高の島国ヘイズへ意気揚々留学をしに向かっていた。 彼女には何やらどうも、この国でしたい事があるようだ。 未開の地と他国から呼ばれる土地へお供するのは、専属メイドのメリーとヘイズに出身で訳ありの護衛ギル。 飼い主のプリムローズと別れたくない、ワガママな鷹と愛馬までついて来てしまう。 かなり変わった、賑やかな珍道中になりそう。 その旅路のなかで、運命的な出逢いが待っていた。 留学生活はどうなるのか?! またまた、波乱が起きそうな予感。 その出会いが、彼女を少しだけ成長させる。 まったりゆったりと進みますが、飽きずにお付き合い下さい。 幼女編 91話 新たなる王族編 75話 こちらが前作になり、この作品だけでも楽しめるようにしております。 気になるかたは、ぜひお読み頂けたら嬉しく思います。

【1月18日完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

銀鷲と銀の腕章

河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。 仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。 意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。 全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

人生のやり直しを夢見た私は異世界で人生のやり直しを始めた

来実
恋愛
現実世界で人生のやり直しを願った主人公が、別世界で新たな生活を送るシンデレラストーリー。 主人公のみさきは、国の穢れた魔力を浄化し、人々の救済となる存在「マリア」として目を覚ます。 異世界に来てから記憶が抜け落ちた部分はあるものの、ある場所でカイリと出会い、そこからただの日常が急激に変化して行った。 空白の記憶。そこに秘められた過去。 聖女系と溺愛のつもりで書いてます。 前置き長くて4話くらいからどうぞ

毒姫ライラは今日も生きている

木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。 だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。 ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。 そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。 それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。 「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」 暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。 「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」 暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。 「お前を妃に迎える気はない」 そして私を認めない暴君。 三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。 「頑張って死んでまいります!」 ――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。

処理中です...