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19ほっと一息
しおりを挟む食事を済ませるとマリンさんが声をかけた。
「あの、旦那様は魔物が出て出かけられましたし、買い物は今は控えた方がいいので‥フレイシア様‥」
「マリンさん、私の事はフレイシアでいいです。それでエバン様は大丈夫でしょうか?」
あんないつもの事みたいみんなは言ってたけど‥
「まあ、ええ、旦那様は大丈夫です。辺境は魔物には慣れていますから、只外に出るのはやめておいた方がよろしいかと」
「そうなの?マリンさんが言うならそうなんでしょうね。じゃあ、何をすれば?」
「もし良ければ‥その差し出がましいかもしれませんが、その服がきつそうなのでもし良かったら手直しをしましょうか?」
「えっ?そんな事が出来るんです?」
「はい、胸周りは広げて別布を当てて裾にはレースで丈を伸ばせばとりあえずは窮屈でなくなると」
「まあ、それはいいわ。私、繕いは出来るから教えてもらえる?」
「そうなんですね。では一緒に」
そして部屋に戻って聖女服に着替えると着ていたワンピースの手直しを始めた。
胸のところを20センチ程きり開いてそこにマリアさんが持ってきてくれた別布を切り開いた部分に当てて縫い付け襟ぐりを始末すれば胸周りはずいぶんゆったりした。裾には幅広のレースを貰ってそれを縫い付ければひざ下まで丈が伸びた。
「うわぁすごい。まるで違う服になったわ。こうすればまた新しい気分で着れますね。マリアさんありがとう」
「とんでもありません。それにしても縫物お上手ですね」
「手持ちの聖女服のほころびを塗っていましたから‥」
「そんな事まで?でも、どんな事でも自分に付けた技術はどこかで役立つものです。こうやって‥」
「ええ、そうですね。そうだ。私これでも料理も出来るんですよ。母が早くに亡くなって父と二人でしたから料理は自然と私が作るようになって‥いえ、余計な事を」
「余計だなんて、ここではどこも人手が足りてなくて屋敷の料理人は騎士団の賄いもやってまして、夕食はいつも騎士団と同じメニューなんです。まあ、みんな食べれれば満足って人ばかりなので。でも、フレイシアさんとお呼びしても?」
そう聞かれてこくこく頷く。
「フレイシアさんが作りたければ調理場を使えるように頼むことも出来ますけど」
「あはっ、でも、長い事やっていませんから‥期待に添えるものが作れるかも」
「とんでもありません。さっきも言ったようにここの人たちは何でも食べますから、良かったら気分転換にでも料理されますか?」
「そうですね。やってみましょうか」
「ええ、フレイシアさんも今まで苦労されたんでしょう?旦那様と結婚されればきっと幸せになられます。あっ、ちなみに旦那様は甘いものがお好きです」
「いえ、婚約と言っても結婚するかは‥」
「また、ご心配には及びません。旦那様のお顔を見ればわかりますよ。旦那様はフレイシア様にぞっこんです」
「そんな‥」
私は真っ赤になってしまう。そんなはずがある訳ない。彼は罪人の私を守るためにとりあえず婚約者という事にしただけ。まあ、罪人ではないと分かってくれているとは思うが他の人はそうではないんだから。
あっ、でも、マリアさんはそうは思ってないのかな?だってすごく優しいから。
そんな訳で私は騎士たちが帰って来た時に食べれるものを作る事にした。
可愛い花柄のエプロンを借りて早速調理場に赴いた。
調理人のマクベルさんには調理場の貸してほしいとマリアさんが頼んでくれていたので彼に挨拶をして調理場を借りた。
マクベルさんは快く調理場を使えと言ってくれた。年配の気さくな人だと思った。
辺境は軍馬を育てるほど牧草地帯があって放牧もさかんらしい。牛乳やチーズはたくさんある。その代り穀類が作りにくいらしい。魔物被害も多く作物を育てるのも大変とか。
なので小麦は貴重らしいからグラマリンの郷土料理とも言えるタタロイモを使って作る。
タタロイモはこの辺りでもたくさん撮れるらしい。粘りがあるのですりおろして卵と小麦粉を少し入れて種を作る。
そこに葉物野菜を刻んで入れてそれを焼くだけだ。我が家ではちょっとした辛みを足すのがいつもの事で調理場にあった唐辛子をほんの少し載せて熱いうちにチーズをのせる。
体力を使う騎士にはピッタリじゃないかなと我ながらいいアイディアだと思いつつ鉄板に小判型ほどの種を落としてたくさんミニピザ風な焼き物を作った。
テーブルの上に大皿に乗せたミニピザを置いて行った。
そして母に教わった具沢山スープも。これは残り野菜などで作る簡単料理で仕上げにすりおろしたジンジャーを入れるのがみそだ。久し振りに香るスープの匂いに母が亡くなった後も良く作ったなぁなんて懐かしくなった。
そしてさらにもう一品牛乳と卵と言えばプリンだと思い付きプリンも作った。
だけどプリンはたくさんは作れなくて10個ほどしか出来なかった。
申しわけないけどプリンはエバン様やマリンたちだけってことにしよう。この屋敷の人はみんな私を温かく迎え入れてくれた感謝も込めて。
卵を何度も裏ごしして牛乳と混ざ合わせて行った。
プリンも出来上がって冷蔵箱で冷やす事に。
「聖女さん手を貸してくれないか。騎士が怪我をして」
そう言って調理場に飛び込んで来たのはラキスさんだった。
「ラキスさんじゃないですか」
「ああ、俺は辺境騎士団に入るって言っただろう。今日は魔物が出たって駆り出されたんだ。そんな事より、とにかく急いでくれ!副隊長が魔物に襲われてひどいけがなんだ。普通の手当てじゃ助からない。助けてくれ!」
「副隊長?」あの辛辣な事を言った人が。
一瞬どうしようって迷う。だって、私に出来るかどうか‥ジェリク殿下にひどく怒られた記憶が蘇る。
”ったく、この程度の傷も治せないのか。俺の立場を考えろよ。せっかくお前を指名してやってるのに、なんで期待に応えれないんだ。それでも聖女か?役立たずが!!”
(フレイシア、大丈夫私が付いてるわ。完治できなくてもある程度傷を治せればいいんだから、さあ、勇気を出して)
(そうだった。キアがいてくれるものね。私頑張る)
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