20 / 84
20手当て
「こっちだ」
急いでラキスさんについて行く。
騎士団の救護所にはたくさんの怪我人がいた。
その奥の部屋に血だらけのラヴァード副隊長が横たわっていた。
「しっかりしろラヴァード!すぐ手当てをするからな。頑張れ!」エバン様が傷口を止血している。
「うあ”、ぐはぁ~」
かなり痛むのだろうあの冷血漢が顔を歪めて脂汗もたらたらだった。
見れば腹が開いている。
うわぁ、これもう無理かも‥私は顔を背けた。
でも。
「フレイシア、来てくれたのか」
エバン様がほっと安心したような顔をした。それだけで私はやる気が出た。だって私を頼っているってわかったから。
「はい、でもこんなひどい傷治せるかわかりません。でも、やってみます」
「げほっ‥余計な事をするな。俺は自分の怪我は自分で何とかする。いいから他の奴の治療を‥ゴホッゴホッ‥」
「ばか、ラヴァード。いくらおまえでもこれは無理だ。いいから俺達に任せろ。フレイシア頼む」
「はい、やってみます」
(キア、お願い)
(任せてフレイシア。さあ、力を込めて‥)
手のひらを傷口にかざして満身の力を困るつもりで。
手のひらから神々しいほどの光があふれ出る。
その光がぱっくりと開いた腹を覆うように光の粒子が傷口を包み込む。次第に傷口が閉じて行く。
完全に傷口が閉じた事を目視すると私は手のひらの力を緩めた。光は一気に吸い込まれるように消えた。
どたん!
私は力を使い過ぎたのかよろめいて尻もちをついた。
(フレイシアやったね。すごいよ)
(うん、キア。良かった‥)
「フレイシア!大丈夫か?こんなになるほど君は‥ありがとう。おかげでラヴァードは命拾いした。ほんとにありがとう」
エバン様が私を抱き上げて頬ずりして来る。
私は当然の事をしただけだと言いながら意識が遠のいた。
*~*~*
私は目が覚めると身体が気だるかった。
「わたし‥?」
「気が付いたのか?良かった。フレイシア無理をさせて済まなかった」
ベッドに横たわったままエバン様がすぐそばでそう言った。
「無理?ああ、そう言えばラヴァード副隊長は?」
「ああ、無事だ。フレイシアのおかげですっかり傷は治っている。安心して。それより気分はどう?」
「ええ、大丈夫です。あんなに力を使ったの初めてだったからきっと身体がびっくりしただけだと‥」
「そうか‥」
「あの、今何時ごろでしょうか?私どれくらい気を失ってました?」
「4~5時間かな。ああ、そう言えばフレイシアあのミニピザはどうしたんだ?マリンがフレイシアが作ったって聞いたぞ。みんなに食べさせて欲しいからって、もう、みんな大喜びで食らいついてたぞ。ったく、俺はまだ食べてないと言うのに!」
エバン様はほっとした顔をしたのも束の間、今度は驚いた顔をして次に悔しそうに拳を握りしめた。
「それって‥エバン様はずっと私についててくれてたって事で、す?」
「当たり前じゃないか。俺達の為にこんな事になったのに、すまなかった。ほんとうにありがとう」
そこに扉がノックされる音が。
「フレイシアさんは気が付いたみたいですね?すみません、声が聞こえたので食事をお持ちしましたよ。さあ、旦那様の分はきちんと残してありますからどうぞ一緒に召しあがって下さい」
「マリン!」
エバン様の耳が赤くなっている。
「だって残ってるかご心配だったんでしょう?もちろんわかってますよ。フレイシアさん気分はいかがです?心配しましたが旦那様が私達を入れて下さらなくって」
「マリン!」
「だって、本当の事です。あっ、騎士の皆さん美味しい美味しいってあっという間に平らげてました。フレイシアさんにお礼を言って欲しいと頼まれました」
「そうですか。よろこんでいただけてよかったです。マリンさんありがとうございます。そうだ!あの、冷蔵箱にプリンがあるので良かったらマリンさんやマクベルさんで召し上がって下さい。一つだけエバン様にも持ってきていただけると‥」
「まあ、そんなサプライズが!?もう、フレイシアさんったら!すぐにプリンお持ちしますね」
マリンさんはあっという間にプリンをふたつ持ってきてくれた。
「では、ごゆっくり」
「いえ、マリンさんも一緒に‥」
「フレイシアさん、私を失業させる気ですか?旦那様後はよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をするとマリンさんはさっさと出て行った。
「エバン様。わ、わたし自分で食べれますから、お気遣いなく」
「はっ、あれほどの貢献をしたフレイシアにそんな事をさせられると?いいから口を開けろ!あ~んだ」
何だかエバン様の顔がものすご~く威圧的で‥その眉間の皺。何とかなりませんか?と言いたくなるが‥
「ほら、あ~ん」
「はぃ、あ~ん」ミニピザが口の中に。次はスープが。
エバン様は合間にミニピザを口に運んではうまいうまいと次々に食べて行く。
良かった。みんなが喜んでくれて。
「さあ、今度はお待ちかねのプリンだ。ほら、口を開けてあ~ん」何だかもうあ~んするのも慣れてると言うか完全にエバン様のペースにはまっている。
「あ~ん。ごくん。う”っ!」のど越しマイルドなプリンが口の中でほぐれて行く。
ああぁぁぁ~やっぱり裏ごし5回やって良かった。なに、このまろやかな舌触り。今までで最高じゃない?
なんて歓喜に震えプリンを堪能してしまう。
わちゃわちゃと感激している私を楽しそうに眺めていたエバン様がごくりと喉を鳴らした。
「うまいか?じゃ、俺も‥う”う”う”ぅぅぅぅぅ~何だこれは‥こんな美味いプリン初めて食った。これ最高じゃないか?フレイシアお前ってやつは~。これは俺以外の奴には食わせるなよ!隊長命令だ。絶対にだ!!いいな」
エバン様の顔が戦闘態勢みたいに、いかついた顔になっていた。
「あの‥マリンさんたちはいいですよね?」
「‥‥‥」
ぐっと目つきが鋭くなって考え込んだ。
あっ、これだめってこと?
そんなにプリン好きだったんだ。
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。