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第一章 転移、そして自立
第十八話 人材
しおりを挟む俺は歩きながらこれからの事について考えていた。
色々やりたいことはある。
今挙げただけで、すぐにできる事だけでもいくつか考えられるのだが、それにつけても一人では何もできない。
今までは玄奘様を介して張さん珊さんをはじめ20名以上の方に協力をしてもらい、炭焼きの商いがやっと軌道に乗ったところである。
でも、これだけでは足りない。
今の生活をただ続けていくには充分だが、すぐに破綻するのが見えている。
このままだと、三河の二の舞で、長嶋も一揆に巻き込まれる。
俺にはこの流れを止める力が今はない。
本多様じゃないが力を付けたい。
それには、俺ができることを全力で取り組むしかない。
できるだけ多くの方の協力をもらって、そう考えると、俺が今やらなきゃならないことは、今ある商いを大きくしていき、そこらの大名からでもそう簡単につぶされないくらいの力を付けたい。
難しいができない話じゃない。
この時代には、堺がある、あそこまで影響力が無くても惣村があったはずだ。
これくらいの力を付けなくては話にならない。
そのために、大商いが必要だ。
大商いをしていくアイデアはある。
ただ、足りないのだ。
すべてが足りない。
何より人材の不足が致命的である。
これも、ただやみくもに人を入れれば良いかというと、そうではない。
おかしな人間を入れると、さらに厄介なことになるのは目に見えている。
簡単な話、一向宗の方たちに協力を求めることは多分可能であろう。
しかし、そうすると、見えているのが力を付けた一向宗徒の大暴走だ。
今の一向宗徒を眺めていると、勘違いされている一部の権力者が訳も解らない民衆を扇動しているようにも見える。
三河の一揆もそういう部分がないとは言えない。
あの本多様でさえも、扇動を認めているようだった。
そこの部分を玄奘様が許せなかったようだった。
本田様は、自身の失敗を経て、誤りを認めていたようだったが、全員がそうではない。
歴史を知る俺は知っている。
これからは、更に酷い事に成っていくのである。
できれば、これを回避したい。
俺を助けてくれた玄奘様を救いたい。
俺に力を与えてくれた上人様の理想を助けたいのだ。
気持ちばかりが先走り、取り留めのない考えをしながら、軒を借りている寺に向かって歩いて行った。
寺の傍に近づいて俺は足を止めた。
異様な雰囲気なのだ。
寺の方角が、異様な雰囲気に包まれていた。
人が出ているのが見えた。
門前の市ほどじゃないが人がかなりの数、門前で屯たむろしていた。
彼らが殺気立っているわけじゃないので、一揆の心配はなかった。
ひとまず、ほっとはしたが、では何だという事に成る。
わからないが、このままでは、問題の解決にはならないので、俺は覚悟を決め、寺に近づいて行った。
人の顔がわかるくらいまで近づくと、群衆の中に玄奘様がいるのを発見できたので、俺はひとまず安心できた。
すると次の瞬間に玄奘様も俺を見つけ、すぐさま俺の方に急いで近づいてきた。
何か問題でも発生したかと俺は身構えた。
玄奘様が俺と話ができる距離まで近づくと、急に俺に詫びを入れ始めた。
なんだなんだ、何が起こった。
俺は玄奘様の態度を見て急にパニックに陥った。
「え、え、何、何、なんなのですか玄奘様。」
「空、落ち着いて聞いてほしい。
そして、俺の願いを聞いてほしいのだ。」
玄奘様が、俺に話を始めた。
「玄奘様、落ち着きましたので、初めから分り易く説明願いますか。」
「あ~、我が悪かった。
空よ、俺の願いを聞いてほしいのだ。
その願いとはな、彼らのことだ。
彼らもまた、この生き地獄の犠牲者なのだ。
六角氏と浅井氏との争いの犠牲者だ。
浅井側の乱取のために村をやられ、身寄りもみな殺されたか連れていかれた者たちだ。
彼らが命からがらこの寺まで逃げおおせたが、彼らをこの寺では面倒を見切れないとのことだ。
俺の願いはな、彼ら全員を空の寺で預かりたいのだ。
住む所はさすがにすぐには準備できんじゃろう。
しばらくは本堂にでも泊めて家などを準備していきたいと我は考えておる。
空にお願いしたいのは彼らを空に受け入れいてほしいのだ。
どうじゃろう。」
「寺に受け入れることの判断は玄奘様か上人様にお任せしていこうと考えておりましたから、玄奘様が受け入れ意を決めたのならば俺は反対はしません。」
「他人事のように言わないでくれ。
空に相談しないで受け入れを決めたようになったことは詫びも入れよう。
彼らは、今のままじゃ、生活していけない。
先に連れてきた子供らのように空に受け入れてほしいのだ。
面倒を見てはくれんか。」
「私が面倒を見る分には構いませんが、彼らが俺に従ってくれるのでしょうか。
せっかく、今いる連中で商いが軌道に乗り始めたところなんですが、今いる人より多くの人数がいきなり入ってきて、うまく調和がとれるか心配です。
玄奘様を疑うわけではありませんが、彼らが今の商いを横取りして俺らを追い出すことも可能な状況なんだとそこを心配しております。」
「受け入れは難しいというのか。」
「いえ、人手は確かに欲しいとは思っております。
特に大人の男の人手が不足していることを理解しており、正直彼らを受け入れたいです。
しかし、先の件の心配があります。
どうしましょう。」
「う~~む」
「受け入れの方向で検討しますが、どのように持っていきましょうか。」
「とりあえずは受け入れて貰えるということで良いな。」
「はい、お受けします。」
「では、彼らが落ち着くまではしばらくは我が彼らの面倒を見よう。
彼らに、我が、村長が空だということを理解させよう。
それは約束する。
それでよいか。」
「そこまでしていただけるのならば、俺には言うことはありません。
で、当面の生活ですが、彼らは食料や日用品などはお持ちなのでしょうか。」
「それも空に詫びなければならないことなのだが、食料などの面倒をしばらく空達に見てもらわなければならないのだ。
悪いが、恵んではくれんか。」
「恵むだ何て、聞こえが悪い。
わかりました。
この市で少し食料を買いそろえましょう。
大丈夫です。
先ほど、持ってきた金子を商いで倍に増やしたところだったんで、食料を買うくらいならば大丈夫です。
でも、ここから運ぶとなると大八車の手配は要りますね。
やはり、廃寺の近くで買いますか。」
「大八車ならばこの寺から貰えそうだったんだ。
彼らを引き取る条件で米も2俵を恵んでもらえたので、それを運ぶために車も貰えたのだ。
ほかに買い足すので必要ならばそれに積もう、まだまだ載せられるのでな。」
「いつ出発なさいますか。」
「寺からは早く出て行って、できたらすぐにでも出発したい。」
「では、すぐに出ましょう。」
「買い物は途中の町で済ませましょう。
もしだめでも桑名まで足を延ばせば必要な物は揃います。」
「わかった、それじゃ、まずは空を紹介するでな、俺についてきてくれ。」
その後、俺はこの借りている寺の住職から紹介を受け、その後、これから行動を共にする人たち30人ばかりと会い、玄奘様に紹介された。
紹介された人たちの中には俺が欲しがっていた大人の男の人がいた。
年は25歳と紹介された、この集まりのリーダーのような人を筆頭に6人ばかりの成人男性が含まれていたが、やはり今度も女性の方が多く、7割が女性だった。
10歳くらいの少年が3人いたので、彼らの成長に期待しよう。
彼らは珊さんに鍛えてもらうことにしようと心の中で決めた。
また、珊さんに負担をかけてしまいそうで、申し訳ない気持ちになっていった。
俺らは、城下の市を通り抜けて帰路についた。
帰りは東海道を通て帰ろうかと思っていたら、八風街道などというものがこの傍を通っており、そこを通ると距離が格段に縮まるとかで、人数も多かったこともあり、早々には野盗などから襲われないと踏んで、その街道を通って帰ることにした。
今でいうところの国道421号線で、主要なというより俺の知っている地名のある町や村は通っていない。
当然この時代でも、古くからある街道だったが、1204年に平家の残党の挙兵によりこの道にある八峰峠(八風峠)が封鎖され、人の通りが暫く絶えた道だったそうで、応仁の乱のころに尾張の商人が通ったことで、また使われだすようになったようだ。
それでも、やはりこの時代でも主要な交通路は東海道や東山道であり、人の通りも少なく、途中の村なども数えるほどで、帰りは野宿の連続だった。
それでも距離は魅力で、峠を越えたらあっという間に目的地に着いた。
距離にして70~80kmくらいで途中にある峠がきついために4日はかかったがほかのルートを使うよりは短く日数的にも短くなっている。
このルートは人の往来は少なく途中の宿場も整備されていなかったが、近江商人や尾張の商人が好んで使っているようだった。
移動時間はそのまま儲けにも関係してしまうだけに、さすがは近江商人や尾張商人だ。
これからは、俺らも使わせてもらうことだろう。
幸いこのルートは今通った大人たちは覚えているようだったので、彼らの協力を仰いで、観音寺城下での商いを真剣に考えよう。
本拠地を置いている廃寺に着いたらみんなに紹介し、新たな商材を考えて、このルートを使って大商いをしていこう。
彼らにどこまで協力してもらえるかはわからないが、玄奘様を信じて、彼らも信じてみよう。
今いる連中と同じように彼らも落ち着いたら、文字や計算を覚えてもらい商いに協力してもらうことを玄奘様に話し、彼らの協力を取り付けてもらうことで話はついた。
まずは、塩の生産からだ。
明日からまた忙しくなるぞ。
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