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第一章 転移、そして自立
第十九話 廃寺に帰る
しおりを挟む現在本拠地を置いている廃寺に玄奘様と一緒に総勢32名で到着した。
流石に張さんたちは俺たちを見つけた時には驚いていたようだが、連れてきたみんなの姿が、つい最近寺に着いたものと同じように着の身着のままである事と先頭に歩いていたのが俺と玄奘様なのですぐに落ち着いたのだ。
寺に入ると、張さんの指示で付いてきたみんなに飲み水を振舞っていた。
流石張さんだ、気が利いている配慮だった。
全員が水を貰い感謝をしていた。
全員が落ち着いた頃を見計らって、この寺にいる全員をこの場所に集めてもらった。
ちょうどこの日は今まで継続して行われている勉強会の日にあたっており、全メンバーが揃っていた。
ちょうど良かったので、玄奘様に全員の顔合わせのための紹介をしてもらった。
かなりの時間がかかったが、とりあえずこれで全員は顔見知りだ。
俺から、これからのことについてみんなに話を始めた。
後から連れてこられた30名については、この地に慣れてもらえるまでの当面の間、玄奘様が責任を持って世話の手伝いをされることを説明した。
当面の面倒として、先行してこの寺にやってきた20名の方たちに面倒を見てもらうことで話は付いた。
それで、これからのみんなの目指す方向として、この寺で自立していけるように生活力をつけていくことは今までと変わらない。
変わったこととしては、メンバーの総員が倍以上に増えたことで、今までの延長では苦しくなっていきそうなので、商いを広げていくことを説明した。
最初にやることは、全員が炭焼きの商いを協力していけるようにしていくことだ。
それと並行して、今やっている識字率の向上と計算力の強化だ。
早い話が、全員が読み書き算盤ができるようにしていくように今日のように全員で勉強会をしていくことを確認した。
その際に張さんから、提案があった。
早くも、習熟にバラつきが出てきたようだった。
勉強会を初めて1ヶ月も経っていないのにできる子と苦手な子が出てきてしまった。
この件については後ほど玄奘様を交えて張さんと協議していくことで一時保留した。
説明を追え、先行組に案内をしてもらい連れてきた全員を宿坊の空いている部屋に連れて行き、落ち着かせた。
その上で、改めて、連れてきた30名のリーダー的存在の男性と女性の方に本堂まできてもらい、ついでに先行組の大人の男性と女性も同行してもらった。
そこで、玄奘様を交えて、張さん珊さんと車座に座り、このあとのことについて話し合った。
今までは、女性を張さんに統括的に面倒を見てもらい、男性は珊さんにお願いしていた。
流石に人数も多くなってきたので、生活面で、それぞれの集まりの大人にまとめてもらい、商売や勉強等については、別途まとめ役を変えてやってもらう方向で話し合った。
いつまでもここにやってきたグループだけでまとまっていてはこの寺での団結はありえない。
団結がなければ、この先絶対に生き残れないことは明白だったが、急な膨張のために理想とは違う方法で対応していかなければ秩序が保てない。
何より、現在この寺の実質的なトップが見た目がガキの俺なのだ。
舐められてもしょうがないのだけれど、こちらの指示に従ってくれないと、団結どころか商いそのものも危ないのだ。
先行組の方は、実質張さんや珊さんの指示に従ってくれているようなので、また、その張さんも珊さんも嫌がらずに素直に俺の指示に従ってくれている。
本当にこのふたりには頭が上がらないのだ。
また、先行組の方たちは、上人様より俺のことをしっかり聞かされているようだったので、今現在は俺のことを舐めてくるようなことはないので、ひとまず安心していた。
しかし、新たに加わった方たちについては全くの未知なのだ。
彼らが、今後どのような態度で臨んでくるかわからないのだ、最悪ここを乗っ取ることもできるのだ。
そうならないために玄奘様もしばらくはここに滞在してくれるとのことだ。
俺の今後の振る舞い次第なのが辛いことなのだが、やるしかない。
それも踏まえて、ここに主だった人を集めて、俺から事情を説明して、協力を求めているのだ。
先行組の方は何度も俺から話しているし、また、張さんや珊さんから俺のことを聞いているようなので、問題はなさそうなのだが、後から加わった人たちは俺の説明が突飛なのか驚いていた。
反抗的ではないようだが、今は、まだ落ち着いていないのでわからない。
これから、落ち着いていくうちにガキから指示されることを面白くないやつも出よう。
そんな時にどうすればよいかについては全くアイデアは浮かばない。
でも、俺たちは先に進めなければならないのだ。
既に総勢で50名を超え、このままでは1月もしないうちに食料が尽きる。
既に恵んでもらえたコメの2俵のうち半分近くは消費されていた。
今回も2俵は恵んでもらえたが、その分人数も増えている。
商いは順調のようで少しずつ蓄えもできてきたが、今回の人数の増加でその蓄えもすぐに吐き出すことになるだろう。
夏前は食料の価格が高騰するので、今のうちに蓄えを崩してでも食料の確保に走らないといけないくなっている。
悩ましいところだ。
これから俺のやりたいことは圧倒的に人手が足らないのも事実なので、本当に悩む。
願証寺に泣きつくことはできないし、何もせずにいることは許されない。
あまりゆっくりはできないが、今いる人間をひとまず落ち着かせることが先決だった。
なので、炭の生産と販売の方法を先行組から教わり、慣れてもらう事で話をつけた。
そこまでで、一旦この集まりを解散させた。
ただ、解散する前に、このような集まりを7日ごとに行っていくことを決め、集まったみんなに了承を得た。
その上で、張さんと珊さんには残ってもらった。
不在の間についての報告を聞きたかった。
外から見た範囲には、寺はすっかり綺麗になっていた。
張さんが嬉しそうに報告してくれたことには、この寺にお茶の木が少なからず生えていたことだ。
手入れをしていなかったので、かなりひどいことになってはいたが、お茶の木だそうだ。
また、寺の周りには椿の木をかなりの数見つけたとのことだった。
朗報である。
お茶の商売は売り先が難しいが、手入れをすることで話し合った。
椿については、付近を探してもらい、椿の実を集めてもらうようにお願いした。
まだ、実が落ちているはずである。
それから油が採れる。
お茶の実も集めて油を取ろう。
珊さんからもいろいろ聞いたが、このあたりには野生の鹿もいるとのことで、できれば鹿を狩って肉も食したい。
この時代の人たちは鹿や猪の肉は食べるのかな、中国から来た張さんや珊さんは食べるだろうけれど、ほかの人はどうなのだろう。
食うものがなくなれば食べるだろうけれど、とりあえず、近い将来的にはそれらの野生の動物も狩って食料としていこう。
最後に驚く報告が張さんからもたらされた。
なんと、今まで大事に持っていた張さんの衣装箱??~あのゲームや漫画で出てくるところの宝箱のようなこの時代の旅行者??が船に積んでいく身の回りの品を入れて置く箱のことだが、その中に、最後まで残っていた、張さんの親御さんの大切な商品にじゃがいもとさつまいもが入っていたのだった。
それも種芋の数には十分と思われる数が入っていたのだ。
それをこの場のみんなのために使いたいと申し出てくれたのだった。
正直、張さんはこれがどのようなものかは詳しくはわかっていなかったが、もしかしたら俺ならばわかるかもと見せてくれたのだ。
それを使ってくれと言ってくれたのだ。
嬉しかったね~~。
これをこの寺で育てよう。
これならば小さな子供でも世話ができる。
本当に手分けして力をつけていける目処が立ってきた。
これからならば、秋には収穫に間に合う。
明日からこの寺の邪魔にならない日当たりの良い場所に畑を作ることにした。
俺は、ここに来て、決心をした。
この寺のそばに窯を作り、完全に拠点をここに置くことを決めた。
今の炭焼き窯を大きくし、寺のそばに作り、近くの斜面に登り窯の真似事を作ることにも挑戦する。
人数も増えたこともあり、今ある川原の窯を利用して器も作ることにした。
その際に、色々実験し、売り物までにしていきたい。
これから、いろいろ作って、門前で商売をしていくことで、今日の話し合いを終えた。
ところで、この寺、なんて名前なんだろう。
そろそろ名前がわからないと色々と困るんだけれどな~
玄奘様に聞いてみたがわからないとのことで、俺らに名前をつけろと言ってきた。
いつまでも廃寺じゃないだろうということなのだ。
そのうち上人様にも相談しよう。
さ~これから、ここで、俺の知識を最大限使ってチートしていくぞ。
ここに本格的に根を下ろすことに決断できたことを今は喜ぶことにした。
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