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第二章 国取り?
第六十三話 初めての政
しおりを挟む俺は、九鬼様たちに連れられて、城の中に入っていった。
城は戦の跡をそこら中に残してはいたが、荒れているという状態にはなっていなく、少し拍子抜けした気持ちや安堵した気持ちが入り乱れちょっと複雑な気分だった。
奥に入っていくと、やはり戦後の血糊や火縄銃の弾痕の跡があちこちに見られ、
「化けて出てくるやつはいないよね」と隣を歩いている藤林様に聞いてしまった。
彼は、俺のことを優しく微笑みながら、
「いるかもしれませんね。
彼らとて、未練はたくさんあったでしょう。
しかし、我々勝者には、彼らの未練を断ち切るべくこの地を導いていかねばならぬ責任が発生します。
頑張っていきましょう」
何恐ろしいこと言っているんだよ。
俺関係ないよな。
俺は何もしていなかったから、そもそもこの地は九鬼様のものだろう。
俺を開放してくれと、心の中で言ってはみたものの、解放されるはずはなく、なぜか俺が頂点に祭り上げられているんだよな。
しかし……
どこで間違えたのだろう。
俺の計画では、心根の良い者に協力してこの辺の地を治めてもらい、その傘下に入り守ってもらう予定だったのだが、なんで九鬼様が俺の傘下に入るんだよ。
俺、子供だよ。
子供の下についても良いのかよ。
いくら心の中で愚痴を言っても始まらないよね。
あの時、張さんすら俺のことを大名だという扱いをしてたしね。
俺の味方は葵たちだけか。
(いえ、葵と幸は、まだ、この世の中の政に興味がなかっただけです。←著者)
そうこうするうちに城主の私室に入っていった。
さすがに城主の部屋だけあって、ほとんどここには戦の跡は見られなかった。
この城を預かっていた者は先の戦では安宅船に乗って海上で九鬼様たちと戦った後、北の方に逃げていったと聞いた。
俺はみんなに促され、上座にほとんど無理矢理に座らされた。
全員が座ると、開口一番に九鬼様が俺に早速聞いてきた。
「戦の折に我々に合流しようとしていた勢力と、降伏した勢力の扱いを決めなければなりません。
殿、差配をお願いします」
いきなりかよ……俺の考えは船の中で決めていたから良いけれど、その前に九鬼様の気持ちを聞かないと始まらないので、質問に対して質問で返す失礼をあえて行って九鬼様に聞いてみた。
俺が城主ならばそれくらいの失礼は許されるよね。
いきなり無礼者なんてないよね、ってもういいから俺は単刀直入に聞いてみた。
「その前に九鬼様とその配下の皆様の気持ちを確認したいのだけれど。
彼らに対して、恨みなどありませんか。
なにせ、九鬼様の父や兄を討ち滅ぼした連中の仲間だったんでしょ。
正直に教えてください」
「恨みがないとは正直言えませんが、その恨みの矛先は彼らではありません。
大体のところは雑賀党や藤林殿のところで打倒されたのを確認しております。
仮りに、そのまま全員を仲間に引き入れても殿には含む所はありません。
殿の判断通りに従います」
「それじゃ、俺の考えを言うから、ここに集まったみんなで一緒に検討しよう。
だって、俺武士じゃないし、その辺の常識を知らないから、その辺も含めて一緒に検討してね」
「で、殿のお考えはどのようになりますか」
「うん。
この城を戦って落としてくれた今そこの中庭で騒いでいる人たちと、後から合流する人たちとでは一緒にはできないよね。
そもそも、今庭にいる人達って九鬼様が流浪した時から、いや、その前から九鬼様の一族を裏切らずに従ってくれた人たちだよね。
なので、彼ら全員には、あの場でも言ったとおり、この志摩国の武士として働いてもらいます。
彼らの禄については、後できちんと考えるとして、残りの人たちの扱いだけど、合流しようとしてくれた人たちには、ほとんど今までどおりに海での仕事を任せます。
ただし、武士にはしません。
当然、政にも加わらせません。
降伏してきた人たちと、合流しようとしていた人たちも一緒の扱いでは色々とまずいよね。
だから、彼らには今後海での仕事はさせずに畑仕事をやってもらいます。
追々ですが、三蔵にある村人たちに吸収させます。
どうだろうか、こんな感じで」
すると藤林様が、俺に聞いてきた。
「あの時にも疑問に思っておりましたが、今回戦った者たちには、我々甲賀衆も含むのですか」
「そうだよね、説明が不足していたよね。
原則戦える人たちは全員武士になってもらおうかなと考えております。
後で詳しく説明していきますが、我々三蔵の衆は、かなり大きくなってきたよね。
今では小さいながら一国すら支配してしまったよね。
直ぐに隣の伊勢すら配下に置こうとしているし、ここらで、きちんとしておこうかなと考えています。
村方たちと今まで相談しながら村を運営してきたけれど、それもさすがに限界かな」
「そうですね、そもそも殿のことをもう村長とは呼べませんしね。
して、どのようにするお考えなのですか」
「あのね、三蔵の衆を大きく3つの組に分けて考えようかなと考えています。
1つ目は、この城から初めて行う、政(まつりごと)を専門にしていく組。
当然、この組には戦も頑張ってもらうので、この組に所属する人たちには全員武士になっていただきます。
なので、今中庭で酒を飲んでいる人たち全員がこの組に入ります」
「では、残りはどのようになっていきますのか」
「今、三蔵の村にいる人たちを中心に生産と商いを中心に行っていく人たち。
で、最後は、まだ形になっていませんが、物を運ぶ仕事を中心に行う人たち。
主に海運関係を強化していきたいのですよ。
今回、合流してくる人たちには、おもにこちら方面で活躍してもらおうかなと考えております。
また、八風峠での問題があった、峠の運搬などもこのグループに入ります」
「え、何ですか、そのグルー何とかとは?」
「え、ごめん、もう一度言いますよ。
八風峠だけじゃないけれど、ロバや馬が手に入り次第、馬借をしていくつもりだけれど、前に話したよね。
この馬借とそれに加えて船を使っての海運をまとめてひとつの組として、こちらには藤林様のところの戦に不向きな方たちを中心に組織していきたいかな」
「殿、そうすると、我々志摩に残り政をしていく組と、三蔵村の商いの組、それにまだ何もないけれど直に作られる馬借や廻船の組の3つにしていくというのですか」
「そうだよ、その3つにはそれぞれ長を決め、今後は三蔵の衆の決め事は村方から離れ、この新たな長の集まりの合議で決めていきたいと考えています」
「随分変わったやり方ですね。
皆ついてこれるかな」
「多分大丈夫だと思います。
変わるのは上の3人とそれを補佐する人間だけで少数だから、その人たちには俺が分かるまで説明していきます。
こんな感じなのだけれど、皆さんのご意見をお聞きしたいのですが」
九鬼様が少し難色を示しながら、
「こればかりはやってみないとわかりませんな。
某は新参の身なれば、ほかの方のご意見に従うまでです」
すると藤林様が、苦笑いを浮かべながら、
「いつも殿のやり方には驚かされます。
私は、殿に拾ってもらった時から従う覚悟を決めておりました。
まだ、よくはわかりませんが私は殿のやり方に賛成致します」
「そうなると、もう一度聞きます。
九鬼様はどうしますか」
「判りました。
まだどうなるか分かりませんが、殿に賛成致します」
「済みませんね、内輪の話ばかりで、それで、雑賀の皆様のことですが、今回は本当にありがとうございました。
で、これからのことですが、これからも私たちに力を貸してくれますか」
「我らは傭兵の身なれば、そこまで改まる必要はなかろう。
それよりも、空殿、いや殿とお呼びしたほうが良いかな」
「あの~~~、できれば今までどおりでお願いします。
私自身は殿もできれば呼ばれたくはないのですが…ね」
「分かりました。
で、空殿にお聞きしたかったのは、戦った連中の件ですが、あやつらも武士に取り立ててくれるということですかな」
「できれば孫一氏も一緒に我々の仲間になって欲しいのですが、他家の事なのであまり口を挟めません。
気持ち的にはそうしたいのですが、それは無理ですよね。
お約束通りお金で精算させていただきます」
「イヤイヤ、すぐには流石に無理なのだが、我々もいつまでも根無し草のような生活はできないと考えておりました。
武士として仕官できればそれに越したことはありません。
あやつらだって喜びます」
「え、我々と一緒に闘ってくれるということですか。
もし、それが可能ならば孫一氏が殿になりますか」
「「「え、それは……」」」
「空殿、無理言わんでください。
流石にそれでは誰もついては来てくれないですよ。
私も空殿の傘下に加わりたいと思っております」
「分かりました。
この件は数年かけて話し合いましょう。
どちらにしても我々が伊勢まで落とさないとこの辺は平和になりそうにありませんから、その時にまでにきちんとしましょう。
先ほど話した3つの組のあり方もその頃までには、形になるからわかりやすいでしょうしね」
「それで、よければ私どもはそのように致します。
で、今後についてはどのようになりますか」
「雑賀の皆様は、ここで一旦解散となりますが、夏にまたお願いできますか。
夏にはきっと、北畠家との戦になります。
その時にも協力をお頼みします。
あつかましいお願いですが、条件は今回と一緒でということで、お願いします」
「分かりました。
我々には異存はありません。
では、これからも峠でのご配慮もして頂けるということで」
「ハイ、そのようになります。
一緒になるまで、頑張っていきましょう」
「では、我々も宴会に加わりますかね」
「ちょっと待ってください。
最後に九鬼様にお願いがあります。
とても苦しいお願いかもしれませんが聞いてください」
「どのようなことでしょう。 某は既に殿の配下です。
なんなりと申してください」
「はい、志摩での拠点を移したいと考えております。
なので、この城の修理は行わず、廃棄して、資材を新たな拠点で活用したいと考えております」
「「「え、それは何処に」」」
「ハイ、ここから南にいったところにある賢島かしこじまに拠点を移し、できれば今年中に九鬼様の一党と合流組の皆さんを移したいと考えております。
北畠との戦は志摩全土で考えておりますので、できる限り戦での被害の出にくいようにしていきたいのです。
また、今後の志摩の発展も考えると、そこに大きな造船設備を作って、海運の一大拠点にしていこうとも思っております。
九鬼様が生まれ、生活し、また、父や兄など親族ゆかりの地を捨てていただくことになってしまいますが、決断して頂けないでしょうか」
「なに、そのようなことですか。
安心しました。
何を言われるかと、心配していたのですが……
で、某は、戦いくさ前に同じようなことを聞かれましたが、城が焼け落ちたとて何ら含む所はありません。
焼け落ちなかったので、いらん心配を殿にさせてしまい、かえって申し訳ありませんでした。
大丈夫です。
某たちのふるさとはこの志摩の地そのものです。
志摩の海です。
ご心配には及びません。
な~~に、明日からでも城を解体させます。
夏までには時間がありませんからね」
「助かりました。
では、よろしくお願いします」
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