名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第三章 伊勢の戦国大名

第百二話 会議だよ全員集合

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 さて、無事会談も終わったので帰りましょうかね。
 孫一さんが最後まで護衛してくれるそうなので安心して帰れます……どこに帰ろう?

 ちょっと待て、俺って住所不定か……まさか無職ってことはないよな。
 今まで仕事していたよな、では派遣ということで………
 冗談はいいけど正直俺の家はどこだ?
 最後に家として住んでいたのは浜に作った小屋だったような気がするが、とにかく伊勢の件は片付いている頃だろうから上人様へも報告もあるし三蔵寺に帰ろう。

 そういえば葵と幸に仕事を振っておいてほったらかしにしていたな。
 これはまずいかも知れない。
 とにかく寺に帰ったら一度主だった者を集めて今後について相談しないと不味いな。

 ……でも、俺の仕事って何だ??

 くだらないことを考えながら来た道をそのまま戻り、三蔵寺に向かって帰っていった。
 途中に寄った霧山城で、いつも伝言を運んでくれる人に遭ったので、賢島にいるはずの張さんと珊さんにも三蔵村に集まってもらえるように伝言を頼んだ。

 あれ??張さんって炊き出しに付いてきてもらっていたから今どこにいるのだろう。
 ま~あの人たちは優秀なので見つけてくれるだろうから気にせずに俺は三蔵寺を目指して帰った。

 三蔵村に近づくと今までにないものものしい雰囲気になっている。
 そこかしこに陣幕を張った陣が立っている。
 そうそうあんな感じの陣を作りたかったのだよ……ってそういうのはいいから。

 なんでだ。
 見たこともない家紋やらのぼり?とでも言うのかな、縦長の旗を立てているのが見えた
 途中で何度も誰何を受けたが、さすがに雑賀党の棟梁である孫一さんと一緒なので引き止められることもなく寺に入ることができた。
 寺に入ると見覚えのある修行僧の人に上人様のところまで案内された。

「上人様、お久しぶりです。」

「空か、やっと帰ってきたね。
 まずは変わりもないようで安心した。
 おおよそのことは聞いているがこのあとどうするね。」

「はい、まずは私も最終の報告は聞いておりませんが伊勢はほぼ抑えることができました。
 このあとは一度主だった者を集めて話し合いを持ちたいと考えておりますが、さらに伊賀と紀伊の2国を抑えさえしてしまえばここ紀伊半島からは戦が無くなります。
 大和を抑えている松永弾正とも話がついておりますからこれで私もお役御免ですかね。」

「そうか、本当にこのあたりが落ち着くようになるかね。
 となると残りはあの連中だけになるかな。
 まあ良い。
 積もる話もあるだろうがゆっくり聞かせてくれ。」 と言われて、そのまま今までの経緯を上人様に報告していった。

 俺と上人様で話しているところに玄奘様が九鬼様たちを連れてやってきた。

「上人様、空が帰ってきたと聞きましたがそちらにおりますでしょうか。」

「お~~、玄奘か。
 空ならここにおるぞ。
 して、何か用か。」

「はい、九鬼様を始めお侍の方たちが空様を探していたようでしたのでお連れしました。」

「そうか、なら入って参れ。」 と言って障子を開けたが、そこには玄奘様と九鬼様それに藤林様に竹中様までいてとてもこの狭い部屋には入りきらない。

「ちょっと狭いな。
 場所を変えよう。
 本堂で話そうか。」 と上人様が言われ、みんなを引き連れて本堂に入っていった。

 本堂に全員が座って改まって話を始めた。
 要は、最後の北伊勢の攻略が済んで、その報告と今後のついての話し合いがしたいとのことだった。
 なぜ俺に報告をしに来る……って言いたかったがこの北伊勢の侵攻を頼んだのは俺なのだから当たり前のことだった。

 その報告では、北伊勢48家と言われる少々入り組んだ情勢の地への侵攻だったが、ほとんど抵抗らしい抵抗も受けずに全ての攻略を終えたのだそうだ。
 国境に近い梅戸氏などは六角氏との関係が深く、もしかしたら六角氏からの横槍が入るかと心配もしたが、神戸家に近い赤堀家共々軍勢が近づいただけでその軍門に下ったそうだ。
 北伊勢の進行ではほぼ全ての勢力が無条件降伏の形で軍門に下ったと報告を受けた。

 障害なく侵攻を終えることができて何よりなのだが、全部を無傷で下したとなると少々厄介なことになった。
 ここ北伊勢だけでなく、今回の伊勢侵攻で配下においた勢力の仕置をしないとまずい。
 それも可及的速やかにだ。

 今までに本領安堵を約束しているところは一つもない。
 唯一長野氏に対して交渉はしていたが、例の事件後向こうから勝手にこちらに落ちてきたので本領の安堵は出していない。

 交渉ではそれとなく匂わせていたので無下にもできないがとりあえず本領安堵の方向で行くしかないが神戸の主筋である関家については領地没収して改めて半分だけ返す形で今回の侵攻に加わってもらっていた。

 先鋒を任せ手柄を上げさせる配置において本領を復帰させるはずだったのだが、戦そのものが起こらず手柄がないので半領地のままだ。
 それ以外については全く決まっていない。
 いや正式にはどこも決まっていない。

 俺的には北伊勢は全て俺らで管理して長島からの流民の受け皿としたいので48家などの勢力扱いに困る。
 それに手柄と言っては手柄になるのだろう細野藤敦の存在だ。
 彼は自身の主筋の調略にも当たり、また、戦役にも自身の軍勢を連れて参加していた。

 成果は伊勢の完全攻略も成功したのだから大きかったと言えるのだが、彼や先鋒を務めた関などをどう扱うかというのだ。
 戦があったわけじゃないから大きな功績とは言えないのだがそれでも彼らは何かしらの期待はしているのだろう。

 もしかしたら功績一番とでも思っているのだろうか。
 とにかく、今回の戦役??の論功行賞をしないといけないそうだ。
 で、その論功を俺にしろと言うのだ。

 今回の伊勢攻略で、俺らのいや俺の当面の目標である長島の受け皿としての北伊勢を抑えることができ、次の目標である紀伊半島の平和についてもある程度道筋は見えてきた。
 三蔵の衆の主だった連中を集め今後の方針についても話し合いたいので、とにかくかつての村方や峠の茶屋の村を任せている権蔵さんにも集まってもらい全員で話し合いたい。

 そういえば、竹中様はまだ三蔵の衆の面々とは面識もなかったので、今回はある意味ちょうど良かったかもしれない。
 俺は藤林様にとにかく人を集めてもらった。
 張さんや珊さんはもちろんのこと葵と幸も忘れずに呼んでもらった。

 かなり放っておいたので会った時に何を言われるか正直怖いのだが、二度と合わない訳じゃないので、禊は早いほどいいとばかりに彼女たちにも今回から打ち合わせに参加してもらうようにした。
 一通り段取りを済ませ一息を入れていると藤林様がやってきて一言漏らした。

「本当にここも変わりましたね。」

「は?」

「初めて私が空さんに会った河原から、さほども時間は経過していないのに、今では伊勢志摩合わせた勢力を保持するまでになっていることが信じられません。
 私も忍頭(しのびかしら)として色々と諸勢力の動向を見張っているのですが、私たちの勢力はかなりのものになっておりますよ。
 知っておりましたか。」

「この間、松永様に会った時にも言われて知りました。
 松永様がいうのには、この日の本でも10本の指に入るくらいの勢力になるそうなのですよ。
 伊勢志摩だけでなんでも50万石以上はあるそうなので、更に我々には安濃津や桑名と言ったちょっとした港町も持っており、それらを合わせたら優に100万石は固いといっておられた。
 「私には全く現実味のない話なのですが、すごいことになっていますね。」

「何を他人事のように言っておられるのですか。
 しかし、この後どうするおつもりなのですか。
 このままどんどん周りを切り取っていきますか。
 それこそかつての三好や北条のようにこのあたりで一大勢力でも作りましょうか。」

「ちょっと聞いた限りでは魅力的に聞こえてきますが、私が三好様や北条様と比べられるのは勘弁して欲しいかな。
 とにかく私は、私の知る限りの人たちの平安な暮らしができるようにはしていきたいですね。
 その後は、自分たちの豊かな暮らしを目指したいとは思っておりますが。
 ま~、今回みんなを集めてそう言った部分も話し合いましょう。
 その後で厄介な論功行賞も決めていきましょう。
 それよりも藤林様も大名になってみる気はありませんか。」

「は?
 それがしに大名になれと言われるので。」

「雑賀の孫一さんにもお願いをしているのですが、伊賀も我々で抑えたいのです。
 その際に伊賀の地を見ては貰えないかと思っております。」

「伊賀ですが……しかし、あの地は惣(そう)が入り組んでおり少々厄介な地ですよ。
 手を出さない方がよろしいのではないでしょうか。」

「そうですね、紀伊の国同様に惣があり少々めんどくさい土地ではありますがほっておくわけにもいかないので、力攻めは考えてはおりませんし惣の存在も否定はしません。
 ただ、それらのまとめ役は必要になってきますのでそれを我々が行おうと思っております。
 まだ先の話なので前向きに考えていてください。」

 藤林様に主だった者達を集めてもらったら、日をまたがずにどんどん寺に集まってきた。
 かなりの人が伊勢にいたし、また、我々の拠点が港に面したところにあったのも幸いして集めるのに時間はかからなかった。

 寺の本堂に入ってきた葵と幸は俺を見つけると走ってきて一斉に文句を言ってきた。
 仕事を放り投げておいてどこかに行ってしまったことを怒っているのだ。
 彼女たちからしたら、どこに行ったかわからなかったのでかなり心配をしていたそうなのだ。

 その後ゆっくり入ってきた張さんになだめられていた。
 彼女は俺がどこで何をしているのかを知っていたようで、また俺のことを信じていてくれていたのか俺と顔を合わせた時に優しく微笑んでくれたのが印象的だった。

 怒っている二人からは話が聞けないので張さんに聞いたところ伊勢の各地で炊き出しと配給の仕事をふたりと一緒に行っていたそうなのだ。
 それらの仕事もほとんど終えており、伊勢の各地も飢饉から救われてきているとのことだった。

 全く為政者が仕事をしていれば済んだ話なのに、無能者が政をすると領民に被害が及ぶ最たる例になってしまったとつくづく感じた。

 あれから3日も経過した頃には主だった者の全員がここ三蔵寺に集まった。
 さ~会議をしようかね。
 会議だよ!全員集合……古かったね。
 でもこれを言ってみたかったんだ……ごめん。

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