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第七章 公家の政
第百九十一話 結婚 そして
しおりを挟む最近俺は思うところがある。
最近になって、思うのだが俺の勢力は格段に大きくなった。
人材の不足は相変わらずだが、それでも子供たちも大きくなってきており、既に活躍し始めている。
正直将来が楽しみだ。
それと一番の違いは、戦国チートと呼ばれる武将たちと懇意になったことが大きい。
何が言いたいかと云うと、俺が何かをやろうとしても、以前のように手探りで苦労をしていかないといけないといった事が無くなった。
仲間内で人材を集めたり、大和の弾正や尾張の信長さんからの協力も得られる。
当然身内の九鬼さんからは全面的に協力してもらえるのだ。
え?
何が言いたいのかって、それは俺が言い出したことなのだが、紀伊半島の一大物流網の構築の件で、淀に一大拠点を作ろうという話だ。
俺は必要に迫られてのことだが、当然今まで培った人脈を頼りに協力を求めたさ。
しかし協力を求めたが、求めたのは協力で会って……あ、愚痴になり始めた。
そう、あの一大プロジェクトから俺はハブにされた。
私たちが後はやりますだって。
それから打ち合わせにも呼ばれない。
当然うちからは張さんが睨みを利かせているからおかしなことにはならないだろうし、俺が聞けば張さんは隠すことなく進捗状況を教えてくれる。
でも、それって……俺はリアルシム●ティだと思っていたのに、それを取り上げられた。
お忙しいので、こっちはお任せくださいだって。
それで、俺が暇になればまだいいよ。
他のことでも始めるから、しかし、俺は毎日相当に忙しい。
しかもそれは会いたくもない公家たちのあしらいのためだ。
本当に飽きもせずに要求ばかり持ち込んでくる連中には腹の立つ。
唯一の救いは五宮さんに頼んでいる文化保護事業だけだ。
これには相当に散逸してしまった文書や太刀なんかもある。
俺は良くは知らなかったのだが、鎌倉以前の古刀なんかもかなり集まってきたのだ。
名前なんか知らないよ。
全て任せているから。
今の楽しみは正直それくらいで、敷地内にそろそろ専用の倉庫も用意していかないといけなくなってきた。
良くは分からないが国宝級の文書類も集まってきたので、その辺りの扱いについて太閤殿下に尋ねるために屋敷に向かった。
なんとそこには大和から弾正が来ていた。
しかも信長さんを連れ立って。
いったい何があると言うのか。
俺は自分の仕事を済ませると、早々に追い出された。
何でも俺がいると邪魔なんだって。
俺は何やら不吉なものを感じたが素直に屋敷に戻ってきた。
すると今度は張さんが、九鬼様がお越しですと伝言してきた。
俺はとりあえず九鬼さんにお会いすべく、奥に向かうとそこでも簡単に挨拶だけで、お構いなくだって。
俺の扱いなんだか酷くないかな。
そう思っていたけど、その原因が翌日に分かった。
俺の結婚式だと。
それで、婚儀に参加する人達が集まってきたらしい。
令和の時代だって、俺は結婚式には参加したことが無いので全く門外漢なのだが、俺自身の結婚式なら、何かすることがあるだろうと思っていたよ。
実は無かったんだよな。
結婚する本人で、男は準備など着替えることくらいしか無かった。
これは俺が根無し草だったための配慮なのか、それともこの時代の風習なのかは分からないが、当日ごたごたとした衣装を着せられただけだった。
とにかく大広間で偉そうな人たちが集まった席で、俺はお誕生日席に座り、愛想笑いをしているだけだ。
来賓客??たちは振舞われる酒や料理を前にとにかく祝ってくれているようだ。
しかし、何故だかその日には嫁は来なかった。
翌日の夜に太閤殿下の使いとして家宰の方が結さんを連れて来た。
元々美少女だとは思っていたが、本当にきれいに着飾っていたので、思わず見とれてしまった。
そこから夜を徹して宴会でやっと結婚式らしくなった。
そこからは二人で愛想笑いの時間だ。
結局なんだかんだと言って3日間は結婚式のようなことをして終わった。
当然俺は他の仕事はできない。
町の治安は、とりあえず仲間が守り切った。
もうこの辺りも俺の仕事としては何もしていない。
そろそろここもハブにされそうだ。
俺たちは通い婚では無く、結さんは俺の屋敷に越してきている。
今は張さんや葵、それに幸と一緒に色々と仕事を覚えている様だった。
始めは、かなり面を食らっていたが、直ぐに慣れたと聞いた。
元々が、俺がイレギュラーの塊なのだし、太閤殿下もそれをよく知っての婚儀だったので、結さんにはとにかくこっちの流儀に合わせろと言われていたようだ。
まだ、検非違使の政庁はできてはいないが、仕事としてどんどんその役割を広げている。
最近では九鬼さんのところや大和の弾正の処、それに信長さんのところからも人を借りて、簡単な人名帳なども作り始めている。
そろそろ治安が守れている範囲だけでも税を取る仕組みも作っていかないといけない。
当然、面倒だけで全く役に立たない貴族連中は無視だが、下級の貴族の中には事務仕事に明るい人も多くいるので、最近はそういった人たちも雇うようにしている。
俺が直接雇うのではなく、検非違使庁として雇い、出仕してもらっている。
その辺りも五宮さんが率先して協力してくれるから本当に助かる。
結婚から半年が過ぎて、政庁も無事完成して、正式にお披露目をした。
そして案の定、歴史通り願証寺は弾けた。
一揆が始まって大変な状態になったという訳では無いが、上人様でも抑えが利かなくなった。
一揆が起こるのは確定事項だ。
はじける寸前に上人様を保護できたのは良いが、ダメな奴はどうしても考えを変えさせることができなかった。
俺は、それより少し前に帝から勅命を貰って石山本願寺に出向いて会談を持った。
『なぜ統治者たちと争い、治安を乱し、世の平安を妨げるのか』という帝からの問いに対しての返事をもらうためだ。
実はこの質問を俺から帝にお願いして実現したのだが、これを貰った本願寺顕如はさぞびっくりしただろう。
急に訳の分からない質問が帝から来るのだ。
確かに今の帝には一切の政治的な力は無い。
元々平安の時代だってあったのか分からないくらいだから、戦国の世ではある筈が無いのだ。
それでも一定の権威はある。
別に無視してもどうこうなるものじゃないが、そこは腐っても鯛じゃないが、勅命による問い合わせなのだ。
だいたいの人たちには無視できない。
これは問い合わせと云うよりも帝から勅命で、『そこら中で始めている一揆を止めよ』と云う命令なのだから、その辺りも顕如様はきちんと理解はされている。
その上で、近衛少将の官位を持つ怪しげな人物、実は俺なのだが、俺が勅使として石山本願寺に出向き、直接問い質した。
帰ってきた反応も、まあ、当然の反応しか返ってこなかった。
「当寺院もわが宗派も世の乱れを助長するような振る舞いは一切ない。
私たちはひとえに御仏の慈悲にすがり信仰しているだけです。」
「聖人様のお答えしかとお聞きいたしました。
今のお答えですと、一揆勢はご同門ではないということですね。」
「あ、いや、庶民の生活が立ちいかなくてやむをえずというものもあるだろう。
わが宗派はそういった者も見捨てる訳にはいかない。」
「生活が立ちいかなくてやむをえずという訳ですか。
では、生活が立ちいかないとまでいってもいないのに、只不満からの暴発はいかがお考えですか。
我儘も、御認めになり世を乱しても構わないと。」
「いや、そうはいっておらん。
そもそもそのような輩は同門にはおりません。」
「では、帝が御懸念の『世をただいたずらに乱すもの』はいないということですね。」
「ハイ、近衛少将殿。
そこはしかとお答えします。
わが同門にはそのような不埒物は一切おりません。
もし、何かの間違えでそのようなものが出てきましても、しっかりこちらで処分します。」
「それが遠方で、急を要する場合でもですか。
それだといたずらに世の乱れを助長するだけですが。」
「ですから、帝は何か誤解されているような。
先に申しました通り、わが同門には不埒物はおりません。」
「分かりました。
これはこの乱れた世ですから、念のためにお聞きするだけですが、もしそのようなものが出てきましたら、帝より成敗させる勅命を出しても、構いませんね。
その際、このての不埒物を助けるようなこともしないとお約束できますね。」
「そこはしかとお約束いたします。」
「そうですか。
では返書を待って、帝に報告いたします。
本日はお会い頂きありがとうございます。」
これで、顕如からしっかり言質を取ったのだ。
これさえあれば、願証寺はどうにか抑えられそうだ。
俺は返書を貰って都に帰っていった。
石山本願寺から帰ってから、そう間を開けずにとうとう願証寺は爆発したのだ。
一揆を主張する僧侶や一部過激な民衆によって願証寺周辺で一揆が起こった。
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