名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百二十八話 開通間近の草津ルート

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 今回の主役である葵や幸は他の嫁さんズに連れて行かれて、俺は信長さんや弾正さん、九鬼さんという錚々たる大名を集めて、話し合いを持つ。
 今回は、三蔵寺に集まったことで、上人様と玄奘様にも話し合いに加わってもらった。

 そうそう、この話し合いが始まった時に、俺は非常に驚いたことがあった。
 信長さんが連れてきた人の中に、山科卿までもが加わって俺たちの結婚を祝ってくれた。
 事前に太閤殿下からお祝いは貰っているので、京関係について一切考えが及んでいなかったが、山科卿は主上の私的なお使いとして使わされたという話だ。

 私的と言われても主上からのお使いならば、勅使じゃないかと思ったが、山科卿は今騒がれると、色々と不味いというので、山科卿の言われるように、大人しくしている。

 確かに、今回は俺の結婚式ということで、京から近衛に近い人は誰も入れていない。
 でなければ、これほどの人たちが集まれば、あの人のことだ、絶対に探りを入れて来る。

 今は例の主上のお住まいの件で、計画を進めている最中だ。
 その打ち合わせに今回は絶好のタイミングとあって、結婚初夜だというのに俺は多分徹夜でお仕事だ。

 ここ三蔵村に一同に会したことで、正直話し合いは捗った。
 秘密は、この会議に参加した人が他に漏らさない限りどこにも漏れる心配が無いと断言できるだけの防諜は完璧だ。

 なにせ、忍者の元締めである藤林様のおひざ元だ。
 それに、ここにはよそ者はまず訪れない。
 この村に用がある者でも、湊で用が済むのだ。

 葵と幸には本当に申し訳ないが、新婚初夜もできずに、仕事に没頭したのだ。
 後で、絶対に嫁さんズからチクチクといじめられるのは決定したようなものだが、正月に主上にも宣言したように、俺にはまだまだやることが沢山だ。

 とにもかくにも、主上のお住まい改善計画は、この秋に主上が紅葉狩りと称して、行幸を行うことで決定した。
 紅葉狩りという名目なので、行幸とはいえ公的行事ではなく私的な外出?という無理やりともいえる離れ業で、とにもかくにも御所から出て頂く。

 計画では大和の弾正の招待で伏見の紅葉を楽しもうということで、御所から俺の屋敷までの警護を弾正が行うことになっている。
 俺の屋敷からは、川船で下り、そのまま伏見に今建築中の屋敷に船ごと入り、そのまま御所の修繕が終わるまでいらっしゃることになる。

 一応、主上のお住まいになる借り御所?は夏には完成の予定なので、最悪でも秋には問題無く屋敷は完成している。
 尤も、未完成であっても今の御所よりは遥かにましなのだが、流石に主上を未完成の屋敷には招待できない。

 一度、伏見にお越しいただけたのなら修繕が一切されていない御所での仕事はできないとばかりに、そのまま伏見に居座ってもらう。
 当然、主上としての公務は行幸後は伏見で行うことになるが、遷都ではない。

 なので、関白などは伏見に来てもらう必要はない。
 元々あの関白、ほとんど御所に立ち寄ることが無かったのだ。
 自分がほとんど立ち寄らない御所がどうなろうとも一切気にしていないやつだ。

 だが、当然主上がここから動かなければ関白たち、少なくともあいつらの一派はこちらに来るだろうが、そこは屋敷に工夫を凝らして入れなくしてある。
 陸からの出入りは、弾正の別邸を通らないと主上がお住まいになる屋敷には入れない構造だ。

 喩え、公家がこちらに来ても主上の元には行くことができない。
 勅使門は一応備えているが、あくまで使えるのは勅使に限られる。
 通用門などはあるが、いやしき者の使う門になる。

 少なくともやたらに血統を気にしているような連中には、そこは下男などが使うための門で、お公家様のような高貴な方には通れないと一言いえば足りる。
 いや、言わずとも通らないだろうが門番には絶対通さないように命じてある。
 それ以外には、門はあるが弾正が使うか、弾正の客しか通さない。
 当然、近衛一派は通さない。

 公家など高貴な方の出入りには、川から入る門しかないが、あいつらには川船は用意できまい。
 主上も船でしか出入りできないような構造となるが、元々あっちこっちに動かれる人ではないし、動いてはいけない立場の人間だ。

 漁師や渡しが使う程度の船ならばあいつら関白一派でもどうにかできても、主上がお使いになる門だ。
 そんないやしき船は通さないという建前だ。

 主上のご移動や、太閤殿下やそのお仲間の公家には、俺達がそれなりの格を持つ船を用意してある。
 準備の方だが、屋敷より船の方が遥かに簡単であったので、既に、主上のお乗りになる御座船もできている。

 今、淀で山科卿たちによって、内覧してもらい主上を御乗せできるかの確認をしてもらっている。
 川船の外観は、あっちこっちで評判の良かった漆で全面を塗装してあるので、川面が船体に反射するくらいだ。

 船中にも、派手にならない程度で、漆で化粧してある。
 螺鈿細工も施しておきたかったが、そこまでは今のところ必要はないそうだが、その内使うようになりそうだったので、そちらの方も現在研究中だ。

 とにかく無事に、俺のイベント結婚式は終わった。
 俺は、上人様や龍造村長にお礼を言って、村を離れた。

 上京に有る俺の屋敷では、だいぶ出来上がった事務棟がそろそろ使えそうだ。
 既に嫁さんズは、ここで仕事をしている。
 正直、仕事をここに集めるという考えは、令和日本ならいざ知らず、戦国の世では難しいとすら思っていたのだが、『案ずるより産むが易し』の喩えじゃないができるものだ。

 事務棟なんぞ必要すらなかったのではとすら思うくらいに、今でも問題無く機能している。
 いや、情報を一か所に集めているから、かえって前よりも効率的とすら言える。
 特に心配していた賢島の商館については、全然問題ない。

 あそこで、懸案が発生するのなんて、せいぜい海外からの貿易船が来る時くらいだ。
 しかし、その海外からの船って、ほとんど来ない。
 まあ、今の日本では自慢ではないが、ここに一番来ているという話だが、それでも令和日本の大井埠頭や横浜、神戸じゃあるまいし、外国船が毎日賢島に来ている訳ではない。

 海外からの船が来たという知らせを受けてから賢島に向かっても問題ない。
 商館ができてから、一応防疫対策もしている。
 船が港についてもいきなり上陸なんかさせていない。
 一晩、湊で待たせて、俺達が到着後に船長から航海中の船員の病気についての報告を受けてから上陸の許可を出している。

 そう、賢島については京に報告が来てから出ても十分に間に合うのだ。
 世の中が桜の季節が終わる頃になると、宇治の工事事務所も忙しくなる。
 気候が暖かくなると、水中での作業も捗るようで、どんどん河川工事が進んでいき、もうじき川船の運航もできそうだと、報告も来ている。

 今のところ、宇治からは、直接草津に向かうことになりそうだが、その草津の手前にも船溜まりを作るほうが良さそうだと意見もあり、俺もそのつもりで調査も始めている。

 瀬田川と大戸川の合流地点、石山寺の先になるが、あの辺りから草津までの流れはかなり緩やかに、また、川幅も十分に広くなっているので、河川工事の必要も無さそうなのだ。
 ちょうどもうすぐしたら、宇治草津間の河川運航試験を行うので、そのついでに信長さんに許可を貰おう。

 と言っても、こんな些細なことで大名である信長さんに許可を取っては申し訳ない。
 幸い、観音寺の近くの安土という場所で、信長さんが築城を始めたと聞いた。
 忙しい中、丹羽様が直接築城奉行として差配していると聞く。
 その丹羽様だけど、安土で築城だけさせてもらえればさぞ幸せだったのだろう。

 聞くところによると、信長さんの筆頭家老としての仕事を兼務しながらという話だ。
 確かに、いつも相当忙しそうにしている丹羽様だけど、そこに持ってきて築城までも押し付けられるのなんて、本当に信長さんのところはブラックだ。

 まあ、人の職場についてとやかくはいわないけど、安土にいる丹羽様に許可を貰えば済むだけの話だ。
 丹羽様のところまで話はいかなくても、丹羽様の部下の人たちでも簡単に済むことだと思う。

 一度陣中見舞いで丹羽様を訪ねるにはちょうど良い機会だ。
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