名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百八十六話 巨頭会談

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 とりあえず、ここまでの仕事としては順調だ。
 後は人選に入りたいが、下級の公家たちについては今俺のところで手伝ってくれている人たちを教育してみるか。

 確かあの人たちにしてもらっている仕事というのが、五宮の下で古いにしえより大切に伝えられてきた文章の保存作業だ。
 文化的事業と言ってもいいかもしれないが、それはあくまで生活が苦しくなっている公家たちの救済を目的として始めたもので、必要ないかと言えば必ずしも不必要な仕事とは言えないが、緊急を要するものでもない。

 だが、そのおかげでそれらに従事している公家たちの人となりもある程度までは理解できたので、正直あの時の判断をほめてやりたい。
 今からだと人となりから調べるとなると、とてもじゃないが間に合いそうにない。

 人選はすぐに五宮が対応してもらったので、さっそく選んだ20人ばかりを護衛を付けていきなり張さんの元だとかわいそうなので若狭の葵の元に派遣した。
 後日葵から、いきなり面倒を押し付けるなとお怒りのお手紙をもらったのだが、そこは勘弁してほしい。

 葵や半兵衛さんの元で半年も鍛えられれば、元から事務仕事には慣れていた公家たちのことだ。
 今回選んだ人たちは俺のところというか、五宮の配下である大学寮で仕事をしてもらっていた人たちなので、特にその中でもやる気と行動力のある人を選んでいるから、仕事に慣れれば十分に活躍してくれるだろうとは思っている。

 唯一の心配事としては血筋がらみで、本家筋辺りからの横やりが入ることだが、そのあたりについては義父である太閤殿下を頼ることにしている。
 そんな感じで、朝廷領(仮)の運営の準備は着々と進んでいる。

 念願の大名である信長さんたちとの打ち合わせも、京の俺の屋敷で行われた。
 信長さんはもとより、京とも関係の深い弾正さんもとにかくお忙しい人なので、面倒な歓迎の儀式など全てすっ飛ばして話し合だけがもたれた。
 歓迎の儀式などをしない代わりに後で手土産だけはたくさん持たせよう。

「ずいぶん乱暴な考えだが、理にかなってもいると思う。どう思われますか弾正殿」

「そうですな、公卿たちの反応が気にはなりますが、元からやつらには政にかかわらせる気は無かったことだし、私も反対は致しません、弾正忠殿」

「なにやら歯に物が挟まったような言いよう。
 何かお気になさっておられるのですか」

「いや、公家たちは力で抑えればいいのだが、騒いでいる連中戦国武将たちはいかがいたす。
 幕府を開く気はないのだろう、空殿」

「鎌倉の世でも、将軍よりも執権が政をしていた時の方が収まっていたとか。
 それに今の花の御所室町幕府でのやりようでは世も収まらないでしょう」

「『花の御所』とはずいぶん古い言い回しだな。
 だが、確かにそうだが……」

「うん、そこはわしもそう思うが……面倒ではないか。
 空が将軍になればそれこそ楽では無いのか。
 わしは従うぞ。
 義理の弟にもなることだしな」

「それならば長幼の順もありますし、信長様が将軍におなりになればいかがでしょうか。
 さすれば、私は喜んですべての職を辞して野に下ります」

「何を言うか。
 協力すらする気もないとか、本当に薄情な弟だな」

「今更逃げ出せると思うなよ」

 二人にさんざん詰められて、俺は前言を撤回せざるを得なかった。

「ですから、みんなで合議して政をしようというのが代案なのです」

「それこそ船頭多くしてにならんか」

 当然の疑問をなされたが、そこにも俺の考えを説明していく。

「ええ、ですので、しばらくは政の重要な所は選ばれた少数の身内の話し合いで決めていく格好となるでしょう」

「というと?」

「当分の間ですが、公家からは山科卿と、太閤殿下、それに武家の代表として弾正様と信長様あたりでしょうか」

「お前は……」

「ですよね~。
 ですから私は公家の代表として参加になるでしょうか」

「それなら今と変わらんではないか」

「ええ、ですから今の状態をこの国全体に広げてまいります」

「他が付いてくるか」

「ですので、重要な話についてなどは大大名を10家くらい招待したうえで、事前に説明をして理解を求めます」

「それでも変わらんような……」

 そこから自分の考えを説明してお二人に理解を求めた。
 基本的に今の状態をあまり変えずに制度化していく。
 重要案件についても、事前に理解を求める家をこれまた大名から選挙などで選ばせていく。

 当分は大大名がその力の及ぶ限りの小大名を圧して選ばれるだろうから影響力的にも問題は無いだろう。
 こんな感じで説明を終えた。

「よし、わかった。
 わしも空を担ぎ出した責任もあるでな。
 空の考えに協力しよう。
 弾正忠殿はいかがか?」

「弾正殿。
 私は初めから義理の弟である空を信じており、世の行く末を任せる気であったしな。
 正直、将軍にでもなってもらおうかと考えていたのだがな」

「お~お、それはわしも考えていたぞ。
 近衛を追い出したあたりから、関白でもいいかとも考えて太閤殿下とも話し合ったこともあったしな」

 え?え?、そんなことを暗躍していたの、この糞親父松永久秀は。
 確かに邪魔な近衛を追い出したのは俺だけど、関白になるつもりなど一切無いぞ。
 元々関白職も令外官(注1)であることだったし、廃止でもいいかと考えているのだが。

 まあ、とりあえず当初の目的は無事に終わった。
 後は政を司る会議体の名称など細々したものが残るが、そのあたりについては五宮と山科卿辺りが適当に考えてくれないかな。
 後で五宮に相談しよう。


 注1)令外官

 律令で定められていない臨時で設けられたとする役職。
 関白の他に有名なところでは征夷大将軍や検非違使などがあります。
 ほか多数存在します。

 詳しくはグーグル先生にでも聞いてください。
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