名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百八十五話 俺の考え

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 俺はとりあえず大和の訪問で播磨の制圧についての弾正からの協力を取り付けた。
 屋敷に戻り山科卿との打ち合わせに入る。
 近い将来、摂津に播磨を朝廷直轄地として、その政と、それにあたる人材についての話し合いだ。

 特に人材については今から選定に入っても正直遅いくらいだ。
 選んだ公家に教育をしたのち、それぞれの町に駐在してもらい、本人が責任をもって統治にあたらせる。

 それも、世襲ではなく任期制の役人としてだ。
 それこそ律令で言うところの国司にあたる感じか。
 国ほど大きなことは任せないのでさしずめ町司だな。

 庄屋か?それくらいの役割になるが、さすがに公家たちには言えないか。
 そこで能力を示してくれるものが現れたのならばより大きな役割を任せていける。

 平安時代では自身が現地に出向かなかったことも多々あるようだが、そんないい加減なことはさせない。
 何より、政の成果をきちんと中央で評価もする仕組みを作る。

 俺が、山科卿との話し合いを持った後に義父である太閤殿下に相談という体裁で許可を取りに行く。

「この案は大納言殿も了承していると」

「はい、これくらいのことをしませんとこの国は変わりません」

「しかし、あまりに……
 これではついてこられない公家、特に公卿たちがでるだろう。
 そ奴らをどうするつもりだ」

「はい、新たな政についてこられない人は公家公卿に限らず、武士たちにも言えますが、切ります。
 正確には政には参加させません。
 無能どころか、我々の足を引っ張る者は民たちにとって害悪以外にありません」

「そこまで言うか。
 少し傲慢なのでは」

「はい、私もそう思います。
 我々もいつ、民たちにとって害悪にならないとも限りません。
 ですから、その見極めを朝廷……いや、皇室の方たちにして頂こうかと考えております」

「それは……」

「これはまだ私の考えでしかありませんが、皇室、特に主上におかれましては民たちにとっての希望であり、それはいつの世でも変わりません。
 ですが政には失敗もあり、結果民たちにとって害悪にすらなることもありましょう。
 ですので、政は我々主上の下に集う者たちの合議にて行い、結果責任だけは主上に及ばないように政をしていこうかと考えております。
 我々の仕事はその道筋をつけることと考えております」

「それは……」

「今までと変わりません。
 それをよりはっきりと示すだけです」

「わかりあえないと」

「ええ、天平の頃なら知りませんが、少なくともここ京に都をおいた当時からそのようになっていたと学んでおります。
 特に武家が政を取り仕切るようになってからは幕府がその役割を演じてきました」

「なら、変わらないではないか」

「いえ、責任の所在があいまいだったことで、政の結果責任をだれも取りませんでしたから、ここまで国が乱れてきたのです。
 お隣、明の歴史は国が乱れたのなら、天主が他にとってかわられて新たに国が興ります。
 全く別の国として。
 しかし、この日の本は違います。主上の下に連綿と歴史を紡いでまいりました。
 主上は変わらずとも実際の政は公卿や幕府が責任をあいまいのまま行っていたように思われます。
 そのような状態は民たちにとって果たしてよかったのか。
 ですから考えますに、政は主上にかかわらせることなく、それでいて政に不備を見つけたのなら主上の責任において我々を罷免できるようにしたいと」

「……これはすごいことまで考えておるな」

「きちんと制度化して、政に参加する者の合議により新たな首長を選んでいくようにしたいと考えております」

「その案について、だれが知っているのか」

「私だけです。
 これはあくまで私の考えで、だれも知りません。
 口にしたのも太閤殿下お一人だけです」

「それは良かった。
 あまりに斬新な考えでわしも少し考えたいのでな」

「すぐにとは申しませんが、すぐにかからないといけないこともあります」

「それが公家公卿の扱いについてだな」

「はい、我々の考えに賛同してくださる公家たちには一緒に我々の政に参加してもらいます。
 当然、仕事をしてくださるので、対価として禄は新たに朝廷の領地としていく播磨摂津から支払いますが、年貢米としてではなく金銭でと考えております」

「しかも、その禄は家ではなく働いた本人にというわけか」

「はい、仕事や禄を世襲にさせません。
 これは武家にもそうしてまいります。
 尤も私が関与している地域のみですが」

 そこから、この後集まって話し合う件についても相談していく。
 最大の懸案事項は協力を渋る公家たちの扱いについてだ。

「それで、切るといった者たちについては」

「切るといっても、それはあくまで私たちが行う政に参加させないというだけで、それ以外については古からの慣習に従います」

「というとどういうことだ」

「はい、先ほども言いましたが、働いたものに支払う禄を働かない者には支払えません。
 ですので、今まで朝廷のお役職持つ方々につきましては今まで通り朝廷に任せます。
 といってもその朝廷には主上はどこまでご参加くださるかは不明ですが」

「朝廷の予算については如何するつもりだ」

「知りません」

「知らないとな?」

「今までの慣習に従って頂けたらと」

「今までは幕府よりいくばくかの……」

「でしたらその幕府に御頼り下さい。
 私たちは、その幕府ではありませんから」

「……そういうことか」

「ええ、先の関白から私は一切の禄を頂いたことがありませんでした。
 京の町の治安をそれこそ私一人で守ったと自負してますが、それでも一切の禄は頂けませんでした。
 何度も朝廷に申したのですが、それでもです。
 その慣習に私も従いたいと考えております」

「婿殿や、わしも元公卿の一人として、あ、いや、だからこの国が乱れたと言われるのだな。
 それにしても、見かけによらずずいぶん腹黒な」

 その後は嫁の話や子供はまだかなどと、それこそ舅と入り婿の会話だった。

 義父である太閤殿下に呆れられながらも一様の理解と今後についての協力を頂く言質は頂いた。

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