316 / 319
第七章 公家の政
第二百八十六話 巨頭会談
しおりを挟むとりあえず、ここまでの仕事としては順調だ。
後は人選に入りたいが、下級の公家たちについては今俺のところで手伝ってくれている人たちを教育してみるか。
確かあの人たちにしてもらっている仕事というのが、五宮の下で古いにしえより大切に伝えられてきた文章の保存作業だ。
文化的事業と言ってもいいかもしれないが、それはあくまで生活が苦しくなっている公家たちの救済を目的として始めたもので、必要ないかと言えば必ずしも不必要な仕事とは言えないが、緊急を要するものでもない。
だが、そのおかげでそれらに従事している公家たちの人となりもある程度までは理解できたので、正直あの時の判断をほめてやりたい。
今からだと人となりから調べるとなると、とてもじゃないが間に合いそうにない。
人選はすぐに五宮が対応してもらったので、さっそく選んだ20人ばかりを護衛を付けていきなり張さんの元だとかわいそうなので若狭の葵の元に派遣した。
後日葵から、いきなり面倒を押し付けるなとお怒りのお手紙をもらったのだが、そこは勘弁してほしい。
葵や半兵衛さんの元で半年も鍛えられれば、元から事務仕事には慣れていた公家たちのことだ。
今回選んだ人たちは俺のところというか、五宮の配下である大学寮で仕事をしてもらっていた人たちなので、特にその中でもやる気と行動力のある人を選んでいるから、仕事に慣れれば十分に活躍してくれるだろうとは思っている。
唯一の心配事としては血筋がらみで、本家筋辺りからの横やりが入ることだが、そのあたりについては義父である太閤殿下を頼ることにしている。
そんな感じで、朝廷領(仮)の運営の準備は着々と進んでいる。
念願の大名である信長さんたちとの打ち合わせも、京の俺の屋敷で行われた。
信長さんはもとより、京とも関係の深い弾正さんもとにかくお忙しい人なので、面倒な歓迎の儀式など全てすっ飛ばして話し合だけがもたれた。
歓迎の儀式などをしない代わりに後で手土産だけはたくさん持たせよう。
「ずいぶん乱暴な考えだが、理にかなってもいると思う。どう思われますか弾正殿」
「そうですな、公卿たちの反応が気にはなりますが、元からやつらには政にかかわらせる気は無かったことだし、私も反対は致しません、弾正忠殿」
「なにやら歯に物が挟まったような言いよう。
何かお気になさっておられるのですか」
「いや、公家たちは力で抑えればいいのだが、騒いでいる連中戦国武将たちはいかがいたす。
幕府を開く気はないのだろう、空殿」
「鎌倉の世でも、将軍よりも執権が政をしていた時の方が収まっていたとか。
それに今の花の御所室町幕府でのやりようでは世も収まらないでしょう」
「『花の御所』とはずいぶん古い言い回しだな。
だが、確かにそうだが……」
「うん、そこはわしもそう思うが……面倒ではないか。
空が将軍になればそれこそ楽では無いのか。
わしは従うぞ。
義理の弟にもなることだしな」
「それならば長幼の順もありますし、信長様が将軍におなりになればいかがでしょうか。
さすれば、私は喜んですべての職を辞して野に下ります」
「何を言うか。
協力すらする気もないとか、本当に薄情な弟だな」
「今更逃げ出せると思うなよ」
二人にさんざん詰められて、俺は前言を撤回せざるを得なかった。
「ですから、みんなで合議して政をしようというのが代案なのです」
「それこそ船頭多くしてにならんか」
当然の疑問をなされたが、そこにも俺の考えを説明していく。
「ええ、ですので、しばらくは政の重要な所は選ばれた少数の身内の話し合いで決めていく格好となるでしょう」
「というと?」
「当分の間ですが、公家からは山科卿と、太閤殿下、それに武家の代表として弾正様と信長様あたりでしょうか」
「お前は……」
「ですよね~。
ですから私は公家の代表として参加になるでしょうか」
「それなら今と変わらんではないか」
「ええ、ですから今の状態をこの国全体に広げてまいります」
「他が付いてくるか」
「ですので、重要な話についてなどは大大名を10家くらい招待したうえで、事前に説明をして理解を求めます」
「それでも変わらんような……」
そこから自分の考えを説明してお二人に理解を求めた。
基本的に今の状態をあまり変えずに制度化していく。
重要案件についても、事前に理解を求める家をこれまた大名から選挙などで選ばせていく。
当分は大大名がその力の及ぶ限りの小大名を圧して選ばれるだろうから影響力的にも問題は無いだろう。
こんな感じで説明を終えた。
「よし、わかった。
わしも空を担ぎ出した責任もあるでな。
空の考えに協力しよう。
弾正忠殿はいかがか?」
「弾正殿。
私は初めから義理の弟である空を信じており、世の行く末を任せる気であったしな。
正直、将軍にでもなってもらおうかと考えていたのだがな」
「お~お、それはわしも考えていたぞ。
近衛を追い出したあたりから、関白でもいいかとも考えて太閤殿下とも話し合ったこともあったしな」
え?え?、そんなことを暗躍していたの、この糞親父松永久秀は。
確かに邪魔な近衛を追い出したのは俺だけど、関白になるつもりなど一切無いぞ。
元々関白職も令外官(注1)であることだったし、廃止でもいいかと考えているのだが。
まあ、とりあえず当初の目的は無事に終わった。
後は政を司る会議体の名称など細々したものが残るが、そのあたりについては五宮と山科卿辺りが適当に考えてくれないかな。
後で五宮に相談しよう。
注1)令外官
律令で定められていない臨時で設けられたとする役職。
関白の他に有名なところでは征夷大将軍や検非違使などがあります。
ほか多数存在します。
詳しくはグーグル先生にでも聞いてください。
10
あなたにおすすめの小説
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!
月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。
不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。
いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、
実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。
父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。
ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。
森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!!
って、剣の母って何?
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。
役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。
うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、
孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。
なんてこったい!
チヨコの明日はどっちだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる