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5日目
今後のこと④
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「どういうことかのう」
「立派な置時計だけど、これがどうかしたのかい?」
〝振り子付き置時計〟を手に取りあちこち調べていたガン爺に、カジドワさんがわくわくした顔で声をかけた。
「これはワシが修理した物に間違いないんじゃが、ユーチにプレゼントしたときにあった傷や汚れがなくなっとるんじゃよ。ここに置かれとったでカジ坊が何かしたのかと思ったんじゃが、違ったかのう?」
「僕は知らないよ。今初めて見せてもらっているからね。新品のように綺麗だけど、これに傷や汚れがあったのかい?」
「そうじゃよ、こことここにのう……目立つ傷があったはずなんじゃが、ほれカジ坊も触ってみるといいぞい。どうじゃ、つるつるになっとるじゃろ?」
――少し前に私とバルトさんが座っていたソファーに、ガン爺とカジドワさんが並んで座り〝振り子付き置時計〟を見ながら話している。
どこか楽しそうな2人の様子に戸惑いつつ、私はバルトさんの服を引っ張り、どうしたらいいか視線で問いかけた。
バルトさんはフッと息を吐き、私の頭をガシガシと撫でるとニヤリと笑う。
「こうなったら、カジドワにも打ち明けるしかないわな」
「やっぱり、……そうですよね。この流れで黙っているのは無理そうですし」
「カジドワの場合、画期的な調理器具の持ち主がユーチだって知ってるからな。それほど驚かないんじゃねえか。まあ、以前にも増してユーチの存在を訝しく思う可能性もあるわけだが……」
バルトさんはそう言うと、どこか楽しそうに意味ありげな視線を私に向ける。
「どっちにしても〝ゴミの再就職斡旋所〟設立には、カジドワも関わらせるつもりでいるからな。打ち明けるのは確定してたぞ。早いか遅いかの違いだな」
「えっ、さっきの提案、本気だったんですか?」
「おお、ユーチの言う〝ゴミが目覚ましく展開する未来〟までは時間がかかるかもしれないが、使える機能を上手く使って、やりたいことを叶えてもいいだろ? ギルドの依頼も嫌いじゃねえから冒険者を辞めるわけじゃねえが、ゴミの救済がユーチの夢なら、俺も一緒にやるからな。ついでに悠々自適な暮らしを目指すってのもいいしな」
バルトさんの思いがけない言葉にポカンとしてしまう。
照れながら「やりたいことをやってみろ」と付け加えるバルトさんの気持ちが嬉しくて、胸が苦しくなる。
それに悠々自適って、中田祐一郎が老後に望んでいた暮らしだったりするのだ。まさか26歳の冒険者であるバルトさんの口からその言葉が出るとは思わなくて驚いたけれど、頬が緩んでしかたがなかった。
「何を始めるにしても、味方は多い方が便利だし安心できるだろ? 特にカジドワは、もうユーチに片足を突っ込んでいるような状態なんだから、とっとと取り込んどいた方が都合がいいしな」
私に片足を突っ込んでいると言うのはどういうことなのか、意味がわからないが、カジドワさんが仲間になってくれるのなら心強い。
気心の知れた仲間と協力して何かを成し遂げる喜びを、もう一度感じる機会があるのなら掴みたいと思ってしまう。
カジドワさんには調理器具の普及を全面的に任せてしまっているのに、バルトさんのあの感じだと、新しい事業(?)でもいいように使う気まんまんなのがわかり、カジドワさんの未来が少し心配になる。
そうでなくても、夢中になると寝食を忘れることのあるカジドワさんだ。働きすぎには十分注意しないと。
「どうやら、バルトさんとユーチ君が知っているようだよ。どうやって傷や汚れをなくしたのか教えてもらおうか」
「え?」
聞こえてきたカジドワさんの声に顔を上げると、笑みを浮かべたカジドワさんがこちらを見ていてドキッとする。
ガン爺と会話しつつ、私とバルトさんが小声で話しているのに気付いたのだろうか。
笑顔なのになぜか有無を言わせぬ迫力を漂わせるカジドワさんに促され、私も覚悟を決める。
バルトさんは任せろとばかりにニヤリと笑い、2人に視線を向けると「話してもいいが、これは企業秘密だからな。他言無用だぞ」と念を押し、説明をはじめた。
普段と変わらないバルトさんにホッとしつつも、私はどきどきしながらガン爺とカジドワさんの反応を窺う。
――これは、私が愛用していたアンティークの腕時計だった物だ。なのになぜか変化して、魔法があるこの世界にもあるかないかわからないような、凄い機能を持つ魔道具となっている。
子供の姿の私と同じ、不可解な存在であるこの腕時計を、ガン爺とカジドワさんは受け入れてくれるだろうか。
「立派な置時計だけど、これがどうかしたのかい?」
〝振り子付き置時計〟を手に取りあちこち調べていたガン爺に、カジドワさんがわくわくした顔で声をかけた。
「これはワシが修理した物に間違いないんじゃが、ユーチにプレゼントしたときにあった傷や汚れがなくなっとるんじゃよ。ここに置かれとったでカジ坊が何かしたのかと思ったんじゃが、違ったかのう?」
「僕は知らないよ。今初めて見せてもらっているからね。新品のように綺麗だけど、これに傷や汚れがあったのかい?」
「そうじゃよ、こことここにのう……目立つ傷があったはずなんじゃが、ほれカジ坊も触ってみるといいぞい。どうじゃ、つるつるになっとるじゃろ?」
――少し前に私とバルトさんが座っていたソファーに、ガン爺とカジドワさんが並んで座り〝振り子付き置時計〟を見ながら話している。
どこか楽しそうな2人の様子に戸惑いつつ、私はバルトさんの服を引っ張り、どうしたらいいか視線で問いかけた。
バルトさんはフッと息を吐き、私の頭をガシガシと撫でるとニヤリと笑う。
「こうなったら、カジドワにも打ち明けるしかないわな」
「やっぱり、……そうですよね。この流れで黙っているのは無理そうですし」
「カジドワの場合、画期的な調理器具の持ち主がユーチだって知ってるからな。それほど驚かないんじゃねえか。まあ、以前にも増してユーチの存在を訝しく思う可能性もあるわけだが……」
バルトさんはそう言うと、どこか楽しそうに意味ありげな視線を私に向ける。
「どっちにしても〝ゴミの再就職斡旋所〟設立には、カジドワも関わらせるつもりでいるからな。打ち明けるのは確定してたぞ。早いか遅いかの違いだな」
「えっ、さっきの提案、本気だったんですか?」
「おお、ユーチの言う〝ゴミが目覚ましく展開する未来〟までは時間がかかるかもしれないが、使える機能を上手く使って、やりたいことを叶えてもいいだろ? ギルドの依頼も嫌いじゃねえから冒険者を辞めるわけじゃねえが、ゴミの救済がユーチの夢なら、俺も一緒にやるからな。ついでに悠々自適な暮らしを目指すってのもいいしな」
バルトさんの思いがけない言葉にポカンとしてしまう。
照れながら「やりたいことをやってみろ」と付け加えるバルトさんの気持ちが嬉しくて、胸が苦しくなる。
それに悠々自適って、中田祐一郎が老後に望んでいた暮らしだったりするのだ。まさか26歳の冒険者であるバルトさんの口からその言葉が出るとは思わなくて驚いたけれど、頬が緩んでしかたがなかった。
「何を始めるにしても、味方は多い方が便利だし安心できるだろ? 特にカジドワは、もうユーチに片足を突っ込んでいるような状態なんだから、とっとと取り込んどいた方が都合がいいしな」
私に片足を突っ込んでいると言うのはどういうことなのか、意味がわからないが、カジドワさんが仲間になってくれるのなら心強い。
気心の知れた仲間と協力して何かを成し遂げる喜びを、もう一度感じる機会があるのなら掴みたいと思ってしまう。
カジドワさんには調理器具の普及を全面的に任せてしまっているのに、バルトさんのあの感じだと、新しい事業(?)でもいいように使う気まんまんなのがわかり、カジドワさんの未来が少し心配になる。
そうでなくても、夢中になると寝食を忘れることのあるカジドワさんだ。働きすぎには十分注意しないと。
「どうやら、バルトさんとユーチ君が知っているようだよ。どうやって傷や汚れをなくしたのか教えてもらおうか」
「え?」
聞こえてきたカジドワさんの声に顔を上げると、笑みを浮かべたカジドワさんがこちらを見ていてドキッとする。
ガン爺と会話しつつ、私とバルトさんが小声で話しているのに気付いたのだろうか。
笑顔なのになぜか有無を言わせぬ迫力を漂わせるカジドワさんに促され、私も覚悟を決める。
バルトさんは任せろとばかりにニヤリと笑い、2人に視線を向けると「話してもいいが、これは企業秘密だからな。他言無用だぞ」と念を押し、説明をはじめた。
普段と変わらないバルトさんにホッとしつつも、私はどきどきしながらガン爺とカジドワさんの反応を窺う。
――これは、私が愛用していたアンティークの腕時計だった物だ。なのになぜか変化して、魔法があるこの世界にもあるかないかわからないような、凄い機能を持つ魔道具となっている。
子供の姿の私と同じ、不可解な存在であるこの腕時計を、ガン爺とカジドワさんは受け入れてくれるだろうか。
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