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第二章 台風の目
十一
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「政秀、キサマ、明日は那古野へ詰めろ」
信長は志賀城に平手を訪ねている。
「突然何を?」
「頼んだぞ」
それだけ言うと、信長はすぐに立ち上がる。用向きを伝えるだけならわざわざ出向く必要などはないのかもしれないが、単純なことほど直接会って話すのがこの男の性分である。
「戦に、行かれるのですか。そのために、那古野を私に守れと」
信長は平手の方を見ずに、黙っている。
「清洲城ですか」
「伝えたぞ」
足早にその場を立ち去ろうとする信長。
「何故です? 萱津の戦いですでに武威を示しました。大膳の右腕だった坂井甚助を討ち取ったのは、たいした手柄です。「さすがはあの信秀さまのお子だ」と百姓に至るまでもが殿を褒めそやしています。これで清洲衆には我らとまともにやり合う術はなくなったも同然。放っておけば今に向こうから頭を下げてくるに違いない。お父上のように、清洲と手を取り合うことができれば、今川に対抗することもできるではないですか!」
「オレには、オレのやり方があるのだ」
「承服できませぬ」
「口の利き方に気を付けろよ、平手政秀。オレはキサマにお願いに来ているわけじゃない」
信長はようやく振り返り、平手をまっすぐにみた。ずいぶん白髪が増えていると思った。
「気をつけていますとも。織田信長をヤケバチにさせずに諫める口八丁は、この平手政秀を置いて右に出る者など、この世にございません」
すこし声を荒げただけで、平手はフラフラで、今にも倒れそうだった。
「老いたな、平手」
「何を! 元気がみなぎってくるようですよ。あなたには言っておくべきことが山積みなのだから、まだまだ、逝くわけにはいきますまい」
信長はもう昔のように声を荒げることはない。腕力でも、権力でも、それを振りかざせば、いとも簡単にこの平手の老体を押しつぶしてしまうことが分かるからだ。
「清州衆をのさばらせておくわけにはいかない。キサマがあれほど骨を折って取り付けた和議がこのザマじゃないか。懲りよ」
「懲りませぬ。何度でも取り付けてみせますよ。言うことを聞かぬ者どもを束ね上げてこそ、当主の器足り得るというものです」
「いつだったかオレをそんなふうにあやしたな。だが、オレはもうキサマに向かって怒りやしないよ。好きにやらせてもらうだけのことさ」
「清洲織田氏、我らが弾正忠家の本家本元にござる。なるほど、いまは坂井大膳という古狸が我が物顔で牛耳っており、守護代の織田信友も、守護の武衛さまも実権を失っておられる。しかし、大膳を成敗し、その後は何とします? もし、武衛さまが大膳のように振舞うようになったら? その時は斯波も滅ぼすおつもりですか」
「なにか、言いたげだな」
「キリがありませぬ。そのような戦争の仕方は正気ではない。それではいつまでたっても国は安らがぬ」
「そうだ。乱世において戦は終わらぬ。終わらぬ限りは、進む以外に道はない」
「付き合わされる者の身にもなっていただきたいものですな、あなたは我らのことを少しもご存じではない」
平手は一枚の書状を持ち出し、信長に差し出した。
『信長殿もまだまだ若いだろうから、方々の苦労はよく分かるよ。戦争に付き合わされるのは誰だってイヤなものだね。だが、ひとまず見捨てるつもりはないから、我らが手を取って信長殿を支えてやるしかあるまい。秀敏殿の杞憂はよくわかったから、仰る通り、信長殿の援軍の話は聞かなかったことにしよう』
「何だ? これは……」
「美濃の斎藤利政殿から秀敏殿に宛てられた文にござる」
織田秀敏とは信長から見て大叔父(父・信秀の叔父)に当たる老練な古強者だが、この頃、多忙の平手に代わって、信長から、斎藤家との折衝役を任されていた男である。
「あなたは、美濃から援軍を得ようとしましたな。今川に対抗するために。しかし、ここにあるように、秀敏さまは、密かに、利政殿に援軍を断ってもらうよう頼み込んでいたのです。わかりますか、あなたの推し進める戦に賛同する者など、もはや家中にはおらんのです」
「大叔父上が? このオレの命に背いたというのか」
信長は怒りに文を持つ手を震わせている。
「今川との戦が、清洲との戦が、いつまで続くのか? 家臣らは目度の立たない戦にその身を投じることを恐れてます」
「目途は、敵を滅するまでだ。それすら分からない大うつけは、もはや織田信長の兵ではない」
「ではあなたの軍はいつまでたっても七〇〇のままでしょうな! そのほかの者は一人残らずその姿を消すことでしょう」
きっぱりと言ってみせた。
「何故だ、何故オレの考えが分からぬ。いかに天子さまの働きかけであろうとも、あの今川義元が行儀よく和議などを守るはずはないではないのだ。先手を打たねば、やられるだけ。清洲衆にしても同じだ。これまで下手に出てきた結果こそがこの有様ではないか。それだけのことが、何故キサマらには分からんのだ」
平手はすっくと立ち上がると、襟を正して信長に向かい合った。この老体が、信長にはやけに大きく感じられた。
「では、あなたが皆の前でそうおっしゃればよろしい。だが、そうしない。あなたはいつも一人ですべてやってしまう。乱世を生き抜くのと、相撲で敵を打ち負かすのは、違います。家中には、あなたに喜んで付き従う者、そうでない者の両方がおります。これはもはや隠し立てることのできない事実。それを承知のうえで、あなたは、彼らを一つの定まった道へと導かねばならぬのです。それが当主の成すべきことなのです。そうでなければ、それはいくら戦に勝ち続けようとも山賊の域を出ません」
信長の黒目がゆらりと揺らいだ。
「ご出陣の折には、評定を開き、皆へ殿のお考えをお話ください。まずはそこからです」
しかし、信長は、平手の考えを受け入れるにはあまりにも多くの敵を作り過ぎていた。信用できないなら、口だけの味方が増えたとてそれは不安材料にしかなり得ない。
「ワカッタ。じゃあオレは金輪際、山賊の親分で構わん。山賊には流儀も礼節もないな。それゆえに、武士どもに成せぬことを成す。政秀、キサマも今に分かる。見ているがいい」
翌日、信長は手勢七〇〇を率いて那古野城を出立した。平手は那古屋城へ来ず、城はもぬけの殻となった。
信長が平手にまで秘めておいた清洲城乗っ取りの計略は次のようなものである。
まずは、信長軍が清洲の城下を焼き払い、坂井大膳を挑発する。萱津で戦ったときのような大軍ではなく、また、信長自らが出馬しているこの状況を好機と思わない大膳ではない。必ず、「乾坤一擲」と総力を挙げて打って出て来るに違いない。もはや、ジリ貧となった清洲衆にとって、ここで信長本人を討ち取る機会が巡ってくるというなら、それは僥倖に違いないからだ。
「サア、そうして大膳が出てきたら、適当に戦いながら少しずつ後退し、彼奴らを城から引き離せ。城内から簗田政綱、那古野勝泰の軍勢が敵の背後を襲う。敵がそれに動揺したら反転攻勢に転じ、挟撃せよ。一たまりもなかろう」
乾いた風でからだの芯が冷えるような冬の日、信長軍の放火はみるみる勢いを増して、あっという間に城下を火の海にした。
だがしかし、奇妙なことに、城はしんと静まりかえって、敵が打って出てくる気配がない。
『妙だ。こちらの謀略を読んだのか? 大膳め。伊達に権謀術数に生きてきた男ではないということか。あり得ない話ではないが、それにしてもあまりに静かすぎる。まるで、予め出ないと決めつけているかのようだ』
「清洲のオジサンたちは、もうこれしきの軍勢に打って出るほどの力も残っていないということなんじゃないですかね」
恒興が燃え盛る炎を囲炉裏替わりに暖をとりながら、呑気に懐から取り出した餅を焼こうといている。
「もう少し近づかなければ、分からん」
そう信長が城へ迫ったとき、不意に城方から矢が射かけられた。そして、それは間をおいてもう一度降り注いだ。
「おい、アレは、簗田政綱の隊じゃないかッ。奴め、やはり裏切ったな」
「待て」
血気盛んな利家が怒りを湛えて攻めかからんとしているが、そうではないことを信長だけが知っていた。
万一、作戦に支障をきたしたときは、城内から、応戦する振りをしてそれをこちらに伝えるよう、政綱に命じてあったのだ。
『作戦に問題がなければ、何もするな。「もう少しじっと待っていればいい」というときは矢を一度だけ放て。そして、「成功の見込みがいよいよない」というときは、矢を二度続けて放つのだ。そして、二度目の矢のうち、最も遠く、つまりは、オレの近くへ飛ばすものにだけ文を結わえて放て』
信長は足元に突き刺さった矢を敵に気取られぬよう拾い上げ、結わえ付けられている紙束を開いた。そこに書かれていたことは、信長を驚愕させた。
撤退する信長軍を清洲城内から見ていた大膳は、一しきりの満足を得ていた。
「信長め、本当に来よったわ。守護がいても関係なしか。人の形をした野犬よ」
髭をさすりながら笑みを浮かべるこの男は、信長の出陣を知っていた。
「どうやらお主の言うことは本当のようだナ、長政殿」
大膳の側に座しているのは、平手政秀が嫡男・平手長政だった。
「城で父と話していたときの信長には、何か謀があるような言い方でした。用心された方がよろしい。いかに惣構えの清洲城であろうとも、待ち構え続けるのは得策ではありますまい」
「では、どうするね。お主は儂に何を命じてほしくてここに来たのだ」
長政は頬をこけさせ、四肢をずいぶん痩せさせていたが、それが清洲城内の陰鬱とした空気によく溶け込んでいる。
「私の立場を利用して、そして、最も手っ取り早く決着するただ一つの方法があります」
「持って回った言い方をするな。何をしようというのかね」
翳りのある瞳をやや細めて、しかし、きっぱりと言い放つ。
「暗殺です、織田信長の、」
信長は志賀城に平手を訪ねている。
「突然何を?」
「頼んだぞ」
それだけ言うと、信長はすぐに立ち上がる。用向きを伝えるだけならわざわざ出向く必要などはないのかもしれないが、単純なことほど直接会って話すのがこの男の性分である。
「戦に、行かれるのですか。そのために、那古野を私に守れと」
信長は平手の方を見ずに、黙っている。
「清洲城ですか」
「伝えたぞ」
足早にその場を立ち去ろうとする信長。
「何故です? 萱津の戦いですでに武威を示しました。大膳の右腕だった坂井甚助を討ち取ったのは、たいした手柄です。「さすがはあの信秀さまのお子だ」と百姓に至るまでもが殿を褒めそやしています。これで清洲衆には我らとまともにやり合う術はなくなったも同然。放っておけば今に向こうから頭を下げてくるに違いない。お父上のように、清洲と手を取り合うことができれば、今川に対抗することもできるではないですか!」
「オレには、オレのやり方があるのだ」
「承服できませぬ」
「口の利き方に気を付けろよ、平手政秀。オレはキサマにお願いに来ているわけじゃない」
信長はようやく振り返り、平手をまっすぐにみた。ずいぶん白髪が増えていると思った。
「気をつけていますとも。織田信長をヤケバチにさせずに諫める口八丁は、この平手政秀を置いて右に出る者など、この世にございません」
すこし声を荒げただけで、平手はフラフラで、今にも倒れそうだった。
「老いたな、平手」
「何を! 元気がみなぎってくるようですよ。あなたには言っておくべきことが山積みなのだから、まだまだ、逝くわけにはいきますまい」
信長はもう昔のように声を荒げることはない。腕力でも、権力でも、それを振りかざせば、いとも簡単にこの平手の老体を押しつぶしてしまうことが分かるからだ。
「清州衆をのさばらせておくわけにはいかない。キサマがあれほど骨を折って取り付けた和議がこのザマじゃないか。懲りよ」
「懲りませぬ。何度でも取り付けてみせますよ。言うことを聞かぬ者どもを束ね上げてこそ、当主の器足り得るというものです」
「いつだったかオレをそんなふうにあやしたな。だが、オレはもうキサマに向かって怒りやしないよ。好きにやらせてもらうだけのことさ」
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「キリがありませぬ。そのような戦争の仕方は正気ではない。それではいつまでたっても国は安らがぬ」
「そうだ。乱世において戦は終わらぬ。終わらぬ限りは、進む以外に道はない」
「付き合わされる者の身にもなっていただきたいものですな、あなたは我らのことを少しもご存じではない」
平手は一枚の書状を持ち出し、信長に差し出した。
『信長殿もまだまだ若いだろうから、方々の苦労はよく分かるよ。戦争に付き合わされるのは誰だってイヤなものだね。だが、ひとまず見捨てるつもりはないから、我らが手を取って信長殿を支えてやるしかあるまい。秀敏殿の杞憂はよくわかったから、仰る通り、信長殿の援軍の話は聞かなかったことにしよう』
「何だ? これは……」
「美濃の斎藤利政殿から秀敏殿に宛てられた文にござる」
織田秀敏とは信長から見て大叔父(父・信秀の叔父)に当たる老練な古強者だが、この頃、多忙の平手に代わって、信長から、斎藤家との折衝役を任されていた男である。
「あなたは、美濃から援軍を得ようとしましたな。今川に対抗するために。しかし、ここにあるように、秀敏さまは、密かに、利政殿に援軍を断ってもらうよう頼み込んでいたのです。わかりますか、あなたの推し進める戦に賛同する者など、もはや家中にはおらんのです」
「大叔父上が? このオレの命に背いたというのか」
信長は怒りに文を持つ手を震わせている。
「今川との戦が、清洲との戦が、いつまで続くのか? 家臣らは目度の立たない戦にその身を投じることを恐れてます」
「目途は、敵を滅するまでだ。それすら分からない大うつけは、もはや織田信長の兵ではない」
「ではあなたの軍はいつまでたっても七〇〇のままでしょうな! そのほかの者は一人残らずその姿を消すことでしょう」
きっぱりと言ってみせた。
「何故だ、何故オレの考えが分からぬ。いかに天子さまの働きかけであろうとも、あの今川義元が行儀よく和議などを守るはずはないではないのだ。先手を打たねば、やられるだけ。清洲衆にしても同じだ。これまで下手に出てきた結果こそがこの有様ではないか。それだけのことが、何故キサマらには分からんのだ」
平手はすっくと立ち上がると、襟を正して信長に向かい合った。この老体が、信長にはやけに大きく感じられた。
「では、あなたが皆の前でそうおっしゃればよろしい。だが、そうしない。あなたはいつも一人ですべてやってしまう。乱世を生き抜くのと、相撲で敵を打ち負かすのは、違います。家中には、あなたに喜んで付き従う者、そうでない者の両方がおります。これはもはや隠し立てることのできない事実。それを承知のうえで、あなたは、彼らを一つの定まった道へと導かねばならぬのです。それが当主の成すべきことなのです。そうでなければ、それはいくら戦に勝ち続けようとも山賊の域を出ません」
信長の黒目がゆらりと揺らいだ。
「ご出陣の折には、評定を開き、皆へ殿のお考えをお話ください。まずはそこからです」
しかし、信長は、平手の考えを受け入れるにはあまりにも多くの敵を作り過ぎていた。信用できないなら、口だけの味方が増えたとてそれは不安材料にしかなり得ない。
「ワカッタ。じゃあオレは金輪際、山賊の親分で構わん。山賊には流儀も礼節もないな。それゆえに、武士どもに成せぬことを成す。政秀、キサマも今に分かる。見ているがいい」
翌日、信長は手勢七〇〇を率いて那古野城を出立した。平手は那古屋城へ来ず、城はもぬけの殻となった。
信長が平手にまで秘めておいた清洲城乗っ取りの計略は次のようなものである。
まずは、信長軍が清洲の城下を焼き払い、坂井大膳を挑発する。萱津で戦ったときのような大軍ではなく、また、信長自らが出馬しているこの状況を好機と思わない大膳ではない。必ず、「乾坤一擲」と総力を挙げて打って出て来るに違いない。もはや、ジリ貧となった清洲衆にとって、ここで信長本人を討ち取る機会が巡ってくるというなら、それは僥倖に違いないからだ。
「サア、そうして大膳が出てきたら、適当に戦いながら少しずつ後退し、彼奴らを城から引き離せ。城内から簗田政綱、那古野勝泰の軍勢が敵の背後を襲う。敵がそれに動揺したら反転攻勢に転じ、挟撃せよ。一たまりもなかろう」
乾いた風でからだの芯が冷えるような冬の日、信長軍の放火はみるみる勢いを増して、あっという間に城下を火の海にした。
だがしかし、奇妙なことに、城はしんと静まりかえって、敵が打って出てくる気配がない。
『妙だ。こちらの謀略を読んだのか? 大膳め。伊達に権謀術数に生きてきた男ではないということか。あり得ない話ではないが、それにしてもあまりに静かすぎる。まるで、予め出ないと決めつけているかのようだ』
「清洲のオジサンたちは、もうこれしきの軍勢に打って出るほどの力も残っていないということなんじゃないですかね」
恒興が燃え盛る炎を囲炉裏替わりに暖をとりながら、呑気に懐から取り出した餅を焼こうといている。
「もう少し近づかなければ、分からん」
そう信長が城へ迫ったとき、不意に城方から矢が射かけられた。そして、それは間をおいてもう一度降り注いだ。
「おい、アレは、簗田政綱の隊じゃないかッ。奴め、やはり裏切ったな」
「待て」
血気盛んな利家が怒りを湛えて攻めかからんとしているが、そうではないことを信長だけが知っていた。
万一、作戦に支障をきたしたときは、城内から、応戦する振りをしてそれをこちらに伝えるよう、政綱に命じてあったのだ。
『作戦に問題がなければ、何もするな。「もう少しじっと待っていればいい」というときは矢を一度だけ放て。そして、「成功の見込みがいよいよない」というときは、矢を二度続けて放つのだ。そして、二度目の矢のうち、最も遠く、つまりは、オレの近くへ飛ばすものにだけ文を結わえて放て』
信長は足元に突き刺さった矢を敵に気取られぬよう拾い上げ、結わえ付けられている紙束を開いた。そこに書かれていたことは、信長を驚愕させた。
撤退する信長軍を清洲城内から見ていた大膳は、一しきりの満足を得ていた。
「信長め、本当に来よったわ。守護がいても関係なしか。人の形をした野犬よ」
髭をさすりながら笑みを浮かべるこの男は、信長の出陣を知っていた。
「どうやらお主の言うことは本当のようだナ、長政殿」
大膳の側に座しているのは、平手政秀が嫡男・平手長政だった。
「城で父と話していたときの信長には、何か謀があるような言い方でした。用心された方がよろしい。いかに惣構えの清洲城であろうとも、待ち構え続けるのは得策ではありますまい」
「では、どうするね。お主は儂に何を命じてほしくてここに来たのだ」
長政は頬をこけさせ、四肢をずいぶん痩せさせていたが、それが清洲城内の陰鬱とした空気によく溶け込んでいる。
「私の立場を利用して、そして、最も手っ取り早く決着するただ一つの方法があります」
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