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番外編2
デジレの恋3
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「お兄様~、ドミニクお兄様~」
やはり呼んでも部屋から出て来ないか。
最近の長兄は引きこもりだ。
「お姉様の披露宴で何かあったのかしら?」
あの時期を過ぎた頃から、長兄の様子がとてもおかしい。
そして、次兄の彼を見る目も以前にも増して冷たい気がする。
「本当に、何があったのかしら?」
※
「あ、デジレ。ちょっといい?」
廊下を歩いていると、珍しく次兄が自分から私に声をかけてきた。
「アシルお兄様?」
「デジレにお願いがあるんだけどさ」
そう言って悩ましげに髪をかきあげる次兄。
どうでもいい仕草まで色気満載だ。
「何ですの?」
「カミーユがウチに来たら、なるべくドミニクから引き離しといて。万が一にでも会わないように」
「はあ。何故です?」
「馬鹿兄がカミーユに懸想してるから」
「……まさか」
私は、笑い飛ばそうとしたが、ふと以前の長兄の様子を思い出した。
ウチに遊びに来たカミーユに、ねっとりとした視線を送っていた長兄。
「あの視線って……ま、マジですの?」
「そうだよ。よりによってカミーユに手を出そうとするなんて」
いつの間にそんな修羅場に! 見逃してしまったわ。
「分かったわ、アシルお兄様。ドミニクお兄様の部屋には、カミーユを近づけないようにするわ!」
「うん、よろしくね。なるべく早くケリをつけるからさ」
そう言って不敵に笑う次兄。
何を企んでいるのか知るのが恐ろしい。
※
「あれ、デジレ様?」
従者達を連れて街を歩いていたら、声をかけられた。
「あら、貴方は……偶然ですわね」
そこには父の愛人……の息子のエリクが立っていた。
「少しお話しできませんか?」
「いいですけれど。仕事も終わったところですし」
ちょうど、カミーユの新作香水を売り込みに行った帰りなのだ。
無事に契約も成立した。
「よかった、もう一度貴女とお話ししたいと思っていたのです」
エリクはまたユルい笑みを見せる。
「あら、そうなのですね。ちょうど、私も貴女に聞きたいことがあるんですの」
扇を広げて口元を隠す。
どういう魂胆で父に近づいたのか、全部聞き出さなくては。
金目当てなだけならば、父を説得して夫人とは別れてもらうつもりだ。
私の稼ぎまで搾り取られたら大変だものね。
私がよく利用する店へ、彼を案内する。
この店には個室があるから、打ち合わせなどに使うのに重宝している。
「さて……と、まずは貴方のお母様と父との関係について詳しくお聞きしたいわ。どういうお付き合いをされているのか、ご存知?」
もちろん自分でも調べたが、調べた限りでは夫人が金だけを目当てにしているというようなことはなさそうだった。
しかし、息子からの視点という点で、新たな発見があるかもしれない。
「ああ、よくウチに来ています。というか、入り浸っています」
「なっ……」
あの馬鹿父!
ウチには滅多に帰って来ないくせに、他所様の家に上がり込んでいたのか!
「近々、子爵家に移るという話も出ているみたいですね……ジェイド子爵は本気みたいでした。母も本気で子爵様のことを愛しているみたいです。なんせ、恋も知らないうちに俺を身ごもってしまった母ですから……。勝手な話ですが、そういう事情もあって母には幸せになって欲しいと思っています」
調書とほぼ相違無し。
毎日のように父が入り浸っているとは知らなかった。
父が男爵家に泊まっているという報告が上がっていたが、まさか毎日とはね……。
「ご、ご迷惑をおかけしておりまして」
「いいえ、気になさらないで下さい。俺は貴女と接点が持てて嬉しいです」
またそんな思わせぶりなことを言って。
(この人も、アシルお兄様と同類なのかしら)
こんなときに頼りになる姉は結婚してしまったし、未来の義姉であるカミーユはこういう方面では全く役に立ちそうにない。
「はあ……」
気のない返事をしたら、相手にもそれが伝わってしまったみたいだ。
エリクが少し困った顔をした。
「俺の言葉、信じてないですね?」
そりゃあ、そうでしょうよ。
その言葉を鵜呑みにする程私は自信家でも純粋でもないですからね。
「ジェイド子爵から貴女の話を聞いて、ずっと興味を持っていたんです」
「私の話?」
私の何が話題に上がったのか大いに疑問だ。
「若くして事業を興し子爵家を支えておられるのですよね。格好いいです」
エリクの目がキラキラしている。
「え、えっと」
「俺なんかが貴女の眼中にないことは分かっているんです。俺なんて所詮子爵様の愛人の息子でしかないし、貴女みたいな功績も何もない。家は借金塗れだし。でも……」
エリクは大胆にも私の手を取った。
「ずっと、陰ながらお慕いしていました。デジレ様」
そう言って、遠慮がちに私の手の甲に口づける。
慣れていないのか、動作がぎこちない。彼の顔は真っ赤だった。
(演技……ではないのかしら……? まさか、本気……?)
恥ずかしさのあまり、思わず私は固まってしまった。
「……っ」
自覚した途端に顔に熱が集まってくる。
私は生まれて初めて、異性から好意を寄せられ、告白されたのだった。
やはり呼んでも部屋から出て来ないか。
最近の長兄は引きこもりだ。
「お姉様の披露宴で何かあったのかしら?」
あの時期を過ぎた頃から、長兄の様子がとてもおかしい。
そして、次兄の彼を見る目も以前にも増して冷たい気がする。
「本当に、何があったのかしら?」
※
「あ、デジレ。ちょっといい?」
廊下を歩いていると、珍しく次兄が自分から私に声をかけてきた。
「アシルお兄様?」
「デジレにお願いがあるんだけどさ」
そう言って悩ましげに髪をかきあげる次兄。
どうでもいい仕草まで色気満載だ。
「何ですの?」
「カミーユがウチに来たら、なるべくドミニクから引き離しといて。万が一にでも会わないように」
「はあ。何故です?」
「馬鹿兄がカミーユに懸想してるから」
「……まさか」
私は、笑い飛ばそうとしたが、ふと以前の長兄の様子を思い出した。
ウチに遊びに来たカミーユに、ねっとりとした視線を送っていた長兄。
「あの視線って……ま、マジですの?」
「そうだよ。よりによってカミーユに手を出そうとするなんて」
いつの間にそんな修羅場に! 見逃してしまったわ。
「分かったわ、アシルお兄様。ドミニクお兄様の部屋には、カミーユを近づけないようにするわ!」
「うん、よろしくね。なるべく早くケリをつけるからさ」
そう言って不敵に笑う次兄。
何を企んでいるのか知るのが恐ろしい。
※
「あれ、デジレ様?」
従者達を連れて街を歩いていたら、声をかけられた。
「あら、貴方は……偶然ですわね」
そこには父の愛人……の息子のエリクが立っていた。
「少しお話しできませんか?」
「いいですけれど。仕事も終わったところですし」
ちょうど、カミーユの新作香水を売り込みに行った帰りなのだ。
無事に契約も成立した。
「よかった、もう一度貴女とお話ししたいと思っていたのです」
エリクはまたユルい笑みを見せる。
「あら、そうなのですね。ちょうど、私も貴女に聞きたいことがあるんですの」
扇を広げて口元を隠す。
どういう魂胆で父に近づいたのか、全部聞き出さなくては。
金目当てなだけならば、父を説得して夫人とは別れてもらうつもりだ。
私の稼ぎまで搾り取られたら大変だものね。
私がよく利用する店へ、彼を案内する。
この店には個室があるから、打ち合わせなどに使うのに重宝している。
「さて……と、まずは貴方のお母様と父との関係について詳しくお聞きしたいわ。どういうお付き合いをされているのか、ご存知?」
もちろん自分でも調べたが、調べた限りでは夫人が金だけを目当てにしているというようなことはなさそうだった。
しかし、息子からの視点という点で、新たな発見があるかもしれない。
「ああ、よくウチに来ています。というか、入り浸っています」
「なっ……」
あの馬鹿父!
ウチには滅多に帰って来ないくせに、他所様の家に上がり込んでいたのか!
「近々、子爵家に移るという話も出ているみたいですね……ジェイド子爵は本気みたいでした。母も本気で子爵様のことを愛しているみたいです。なんせ、恋も知らないうちに俺を身ごもってしまった母ですから……。勝手な話ですが、そういう事情もあって母には幸せになって欲しいと思っています」
調書とほぼ相違無し。
毎日のように父が入り浸っているとは知らなかった。
父が男爵家に泊まっているという報告が上がっていたが、まさか毎日とはね……。
「ご、ご迷惑をおかけしておりまして」
「いいえ、気になさらないで下さい。俺は貴女と接点が持てて嬉しいです」
またそんな思わせぶりなことを言って。
(この人も、アシルお兄様と同類なのかしら)
こんなときに頼りになる姉は結婚してしまったし、未来の義姉であるカミーユはこういう方面では全く役に立ちそうにない。
「はあ……」
気のない返事をしたら、相手にもそれが伝わってしまったみたいだ。
エリクが少し困った顔をした。
「俺の言葉、信じてないですね?」
そりゃあ、そうでしょうよ。
その言葉を鵜呑みにする程私は自信家でも純粋でもないですからね。
「ジェイド子爵から貴女の話を聞いて、ずっと興味を持っていたんです」
「私の話?」
私の何が話題に上がったのか大いに疑問だ。
「若くして事業を興し子爵家を支えておられるのですよね。格好いいです」
エリクの目がキラキラしている。
「え、えっと」
「俺なんかが貴女の眼中にないことは分かっているんです。俺なんて所詮子爵様の愛人の息子でしかないし、貴女みたいな功績も何もない。家は借金塗れだし。でも……」
エリクは大胆にも私の手を取った。
「ずっと、陰ながらお慕いしていました。デジレ様」
そう言って、遠慮がちに私の手の甲に口づける。
慣れていないのか、動作がぎこちない。彼の顔は真っ赤だった。
(演技……ではないのかしら……? まさか、本気……?)
恥ずかしさのあまり、思わず私は固まってしまった。
「……っ」
自覚した途端に顔に熱が集まってくる。
私は生まれて初めて、異性から好意を寄せられ、告白されたのだった。
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