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番外編2
デジレの恋(エリク4)
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「カミーユ、遠征土産だぞ! アルク地方の伝統菓子だ」
「私も、レーヌの街の新作マカロンよ! この間のお返し!」
魔法棟の休憩室に、数人の「赤」の魔法使いが集まっている。
全員が遠征帰りだ。
仕事で遠征や出張に出たメンバーは、こうして土産を持って帰ってくることが多いのだ。
「わあ! 美味しそう!」
それを見て目をキラキラと輝かせているのは、「赤」の魔法使いの制服に身を包んだカミーユ・ロードライトだった。
魔法棟恒例……カミーユの餌付けの時間である。
カミーユはことの外、菓子類が大好物だ。
しかも、刺青がなければ、外見だけは絶世の美少女である。
そんな彼女に、物を食べさせるのが、最近の魔法棟のブームなのだ。
まあ、これが流行った背景には、もう一つの理由が存在するのだが……
「はーい、カミーユ。あーん」
「むぐむぐ」
「こっちもどうぞ?」
「もぐもぐ」
美味しそうに菓子を頬張るカミーユ。その背後で、扉が音を立てて開いた。
魔法使いたちが、一斉にそちらを向く。
「……カミーユ。この、浮気者!」
そこに立っていたのは、凶悪でキラキラした笑みを浮かべたカミーユの婚約者。
アシル・ジェイドだった。
彼こそが、魔法使いたちがカミーユを構うもう一つの理由なのだ。
冷静沈着な未来の宰相様、アシルの隠された顔を見ることができるのである。
「アシル、浮気だなんて大げさな。私はお菓子を食べているだけだよ」
「婚約者以外から、餌付けされているじゃないか!」
「餌付け?」
人外は素だ。本気でわかっていない様子。
「俺以外から、『あーん』されるのは駄目だって言ったよね?」
「そうだっけ?」
単純に、カミーユは、菓子の誘惑に勝てなかったのだった。
毎回だけれど……
そして、その都度、アシルが怒鳴り込みにくる。
彼の余裕のない一面を、ここにいる魔法使いたちは知っていた。
「……エリク・ボドワン」
感情の読み取れないコバルト色の瞳が、俺に向けられる。
やばい、名指しされた。
未来の宰相様をからかいすぎたかもしれない。
※
「前々から気になっていたのですが、あなたは、カミーユに気があるのですか?」
俺は、さっそく魔法棟の裏に呼び出され、アシルに問い詰められた。
アシル自身との接点は少ないので、互いに敬語である。
ここへ来る際に、アシルはカミーユに、「すぐに戻るから、少し待っていて」と、甘い笑みで囁いていた。
俺に対する表情と違いすぎだ。
冷静な顔をしているくせに、彼はカミーユのこととなると、どんな冷酷な手段も辞さない。
過去にも、カミーユを虐めた令嬢や、カミーユを手込めにしようとした兵士が、望まぬ縁談を組まれたり僻地に飛ばされたりしていた。
弱みを握られ僻地で強制労働だなんて、絶対にゴメンである。
「カミーユに、気なんてあるワケがないでしょう?」
あんな残念女は、こちらから願い下げだ。
カミーユは、ごく一部の男共から恐ろしくモテるけれど、俺にはそんな特殊な趣味はない。
「本当に?」
「勿論ですよ。俺は、カミーユよりもむしろ……いえ、なんでもありません」
一瞬、脳裏にデジレの顔が浮かんだ。
「むしろ?」
「へっ……?」
目の前に、氷の笑みを浮かべる悪魔がいる。
妹とは似ても似つかぬ邪悪な表情で、アシルは俺の返事を促したのだった。
「私も、レーヌの街の新作マカロンよ! この間のお返し!」
魔法棟の休憩室に、数人の「赤」の魔法使いが集まっている。
全員が遠征帰りだ。
仕事で遠征や出張に出たメンバーは、こうして土産を持って帰ってくることが多いのだ。
「わあ! 美味しそう!」
それを見て目をキラキラと輝かせているのは、「赤」の魔法使いの制服に身を包んだカミーユ・ロードライトだった。
魔法棟恒例……カミーユの餌付けの時間である。
カミーユはことの外、菓子類が大好物だ。
しかも、刺青がなければ、外見だけは絶世の美少女である。
そんな彼女に、物を食べさせるのが、最近の魔法棟のブームなのだ。
まあ、これが流行った背景には、もう一つの理由が存在するのだが……
「はーい、カミーユ。あーん」
「むぐむぐ」
「こっちもどうぞ?」
「もぐもぐ」
美味しそうに菓子を頬張るカミーユ。その背後で、扉が音を立てて開いた。
魔法使いたちが、一斉にそちらを向く。
「……カミーユ。この、浮気者!」
そこに立っていたのは、凶悪でキラキラした笑みを浮かべたカミーユの婚約者。
アシル・ジェイドだった。
彼こそが、魔法使いたちがカミーユを構うもう一つの理由なのだ。
冷静沈着な未来の宰相様、アシルの隠された顔を見ることができるのである。
「アシル、浮気だなんて大げさな。私はお菓子を食べているだけだよ」
「婚約者以外から、餌付けされているじゃないか!」
「餌付け?」
人外は素だ。本気でわかっていない様子。
「俺以外から、『あーん』されるのは駄目だって言ったよね?」
「そうだっけ?」
単純に、カミーユは、菓子の誘惑に勝てなかったのだった。
毎回だけれど……
そして、その都度、アシルが怒鳴り込みにくる。
彼の余裕のない一面を、ここにいる魔法使いたちは知っていた。
「……エリク・ボドワン」
感情の読み取れないコバルト色の瞳が、俺に向けられる。
やばい、名指しされた。
未来の宰相様をからかいすぎたかもしれない。
※
「前々から気になっていたのですが、あなたは、カミーユに気があるのですか?」
俺は、さっそく魔法棟の裏に呼び出され、アシルに問い詰められた。
アシル自身との接点は少ないので、互いに敬語である。
ここへ来る際に、アシルはカミーユに、「すぐに戻るから、少し待っていて」と、甘い笑みで囁いていた。
俺に対する表情と違いすぎだ。
冷静な顔をしているくせに、彼はカミーユのこととなると、どんな冷酷な手段も辞さない。
過去にも、カミーユを虐めた令嬢や、カミーユを手込めにしようとした兵士が、望まぬ縁談を組まれたり僻地に飛ばされたりしていた。
弱みを握られ僻地で強制労働だなんて、絶対にゴメンである。
「カミーユに、気なんてあるワケがないでしょう?」
あんな残念女は、こちらから願い下げだ。
カミーユは、ごく一部の男共から恐ろしくモテるけれど、俺にはそんな特殊な趣味はない。
「本当に?」
「勿論ですよ。俺は、カミーユよりもむしろ……いえ、なんでもありません」
一瞬、脳裏にデジレの顔が浮かんだ。
「むしろ?」
「へっ……?」
目の前に、氷の笑みを浮かべる悪魔がいる。
妹とは似ても似つかぬ邪悪な表情で、アシルは俺の返事を促したのだった。
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