公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン

文字の大きさ
6 / 65

〈6〉王都の王子たち

しおりを挟む
 メアリが魔の森へと追放されてから5日が過ぎた、その日。

「殿下、嘆願書が届いております」

「嘆願書?」

 城で紅茶を楽しんでいた第1王子リアムの元に、紙の束が届けられた。

 それは牢屋に入れられた・・・・・・・・メアリの解放を願う貴族たちの声。

 公爵家の当主や、隠居した伯爵、冒険者ギルドの本部長、商業ギルドの取締役。

 末端ではあったが、王家に連なる者の名前まである。

 王太子であるリアム自身や、病に伏せた国王の名前はないものの、その効力は計り知れる物ではない。

 そんな国の重鎮たちが名を連ねる嘆願書をパラパラと流し見たバカ王子リアムは、

「くだらんな」

 鼻を鳴らしてゴミ箱へと投げ捨てた。

「悪女を追放して何が悪いと言うのだ。クズ共め」

 小さく舌打ちをして、頬杖を付く。

 切れ長の目尻に、力を込めていく。

「民を思う税率の引き下げ、魔物を駆除するための軍部の増強。慈悲深い余の政策に反対するような女と、結婚など出来るものか」

 そして何よりも、

「光の天使たる男爵令嬢マリリンへのイジメを先導し、階段から突き落とすような女など、死刑に決まっている」

 それ故に、投獄ではなく、死の森へと追放した。

 次期国王としての決定だ。

 動きの鈍い文官どもの手続きを待つ必要などない。

「今頃は野生の竜たちに食われている頃だろうよ」

 くくく、と笑い、リアムは嘆願書が入ったゴミ箱を蹴り飛ばす。

 死人をどうやって檻から出すつもりだ?

 やはりコイツらは、バカに違いない。

「不敬罪に問われないだけ、有り難く思え」

 散らばった紙を踏みつけて、リアムは唇の端を吊り上げた。

「あいにくと忙しい身でな。クズと戯れる時間はないのだよ」

 今は嘆願書を破り捨てる時間すら惜しい。

 麦の価格低下に喜ぶ民を観察するついでに、愛しのマリリンに会いに行く時間だからな。

「優先順位を考えろ、クズども」

 そんな言葉と共に嘆願書を蹴り飛ばして、リアムは出入り口へと視線を向ける。

「兄さん、正式書類を捨てるとか、正気かい?」

「なっ!?」

 そして聞こえてきた声に、出しかけていた足を止めた。

 ドアの影に17歳の青年ーー第3王子であるラテスの姿がある。

 緩やかな癖のある髪を手で抑えながら、彼は普段と変わらぬ様子で微笑んでいた。

 いや、ほんの少しだけ、やつれているだろうか?

 だが、そんなことはどうでも良い。

「護衛は何をしていた! 即刻つまみ出せ!」

 次期国王に与えられた部屋に、母が平民でしかないクズが入って良いはすがない!

「抵抗するようなら、切り捨てろ!」

 ちょうど良い機会だ。
 抵抗しなくても、切り捨ててやろう。

 断りもなく部屋に入ってきたのだ、大義名分はこちらにある。

 そんな思いでリアムが声を荒げるも、ラテスはなぜかその場を動こうとしない。

「残念。それは出来ないんだよ。これを見てもらえるかい?」

 何かを覆い隠すような笑みと共に、1枚の紙を掲げて見せた。

「なんだと!?」

 思わずと言った様子で、リアムが大きく目を開く。

 そこにあるのは、すべての大臣の印が押された正式書類。

 王が床に伏せている現状では、何よりも効力が高い書類だった。

「余の時は押さなかった物をなぜ貴様が!!」

「誰が頼んだのかなんて関係ないよ。彼等にも信念がある。知らないのかい?」

「何が信念だ! あのような悪女を庇い立てするような行為がーー」

「黙れ!!」

 普段とは似つかわしくないラテス王子の声に、リアムの肩がピクンと跳ねる。

「これ以上、メアリ嬢を侮辱することは止めて貰おうか」

 全身から殺気を滲ませたラテスが、流れるような仕草で腰の剣に手を伸ばしていた。
しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

処理中です...