56 / 65
〈54〉マリリンの魔法 2
しおりを挟む
兵士たちが掲げる剣の先から、青い光が飛び出していく。
小さな光の玉がとめどなく吸い取られて、リアム王子の元へと集められていた。
「くっ……」
「こいつは苦しいな……」
その1つ1つが、一般の兵士には大きな負担であり、
全速力で走り続けるような負担が襲い来る。
だけど、止まるわけには行かなかった。
「何も言わずに耐えろ。家族を思い出せ。王子の命令だぞ」
下手をすると処刑だ。
言葉にこそしないが、全員がわかっていた。
「……ジュリアンナ、マリンナ。父ちゃんは頑張ってるぞ……」
「そうだ。それでいい。……生きて、帰るぞ」
「はい……」
影でコソコソと励まし合いながら、時には肩を貸して支え合う。
予想以上の魔力が体から抜け出していく中で、兵士たちはグッと歯を食いしばって耐えていた。
そうして集まった青い光を宝剣の輝きに変えながら、リアム王子が言葉を紡いでいく。
「主神たる光の神よ。万物を司る古竜たちよ。余の願いに答えて彼女に巣くう魔を払い、真の姿を示せ!」
「 〈永遠の愛〉!!!!」
聞いてる者が恥ずかしくなる魔法名を堂々と叫んだリアム王子が、力強く宝剣を切り下ろしていた。
二メートル近い灰色の玉が浮かび上がり、ビョンビョン、ベロンベロンと、その形を変えていく。
それはまるで、小さな子が粘土で作ったかのような、竜の姿。
そして不意に、その体がドロドロと崩れはじめた。
「うわっ、きしょい! グロすぎでしょ! 何よこれ!」
そう叫ぶマリリンの前で、ゾンビ映画のように、竜の体がボタボタと流れ落ちていく。
そしてゆっくりと動き出したソレが、宙に固定されたマリリンに迫っていく。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいって! 怖いから! もうちょっとマシな形はないの!? どう見ても汚物の敵ーー」
「許せ、マリリン!」
「イヤーーーーーーー!!!!」
のそのそと近付いたソレの口がカパリと開いて、
滴り落ちる何かが、マリリンの髪をベットリと濡らしていた。
聞こえてくる悲鳴も、かつてのリリと比べると、可愛らしさの欠片も感じない。
「魔力の変換効率も最悪ね」
「えぇ、あれでは、魔力を貸した兵士たちが可哀想だ」
「形を真似られた竜に対しても冒涜だと思わないかな? 原型を留めていないね」
「アベ@ル6ymベルベwルーー」
ーーパクリ。
紅茶で唇を湿らせながら口々に感想を述べるメアリたちの前で、マリリンがゾンビ竜らしき物に飲み込まれていた。
もぐもぐもぐ……、
もぐもぐもぐ……、
ペッ。
「ぐべっ」
結局は、三十秒も経たずに、味を失ったガムのように捨てられて、
マリリンの体が、土の上を転がっていく。
その姿をまじまじと見詰めるリアム王子は、宝剣を切り下ろしたままの体制で、肩を大きく上下させていた。
どうやら、魔力が切れたみたい。
それはさておき、
「今の魔法のどこのあたりが、永遠の愛だったのかしら?」
「……考えるだけ無駄でしょう。相手はあの兄さんです」
「……そうね。私としたことが愚問だったわ」
最終的には考える事を放棄して、ゆったりとした椅子に座りながら、事の行方を見守ることにした。
とは言っても、マリリンに洗脳の魔法なんてかかっていない。
「……やったか!?」
「おい、クズ王子! なんのフラグよ、それ! 主人公を殺す気なの!?」
「くそっ!! ダメか! さすがは竜を自称することはあるな。まさか、余の魔法を振り切るとは……。だが、余は負けぬ!!」
フンスと鼻息を荒くしたリアム王子が、腰に履いた鞘から、二本目の宝剣を引き抜いた。
先ほど使った一本目も、今の二本目も、
本来ならば、宝物庫で保管されるべき国宝であり、
「次期王の命令だ」
と言って、無理やり持ち出したもの。
「余の本気を見せてやろう!」
右手に、時渡りの剣。
左手に、真実のつるぎ。
気を失ってバタバタと倒れていく兵など気にもとめずに、リアムが二度目の詠唱に入っていく。
「だからやめなさいって言ってるでしょ! 無駄なのよ!」
そう叫ぶマリリンの訴えも聞く気はないらしい。
「私も無駄だと思うのよね」
「えぇ、無駄ですね」
「そうだね。誰も洗脳の魔法なんて使ってはいないからね」
無論、結界内にいる三人の言葉にも、止まることはない。
そうして放たれた二度目の魔法が、マリリンを襲い、
「…………え?」
誰しもが大きく目を見開いて、言葉を失っていた。
小さな光の玉がとめどなく吸い取られて、リアム王子の元へと集められていた。
「くっ……」
「こいつは苦しいな……」
その1つ1つが、一般の兵士には大きな負担であり、
全速力で走り続けるような負担が襲い来る。
だけど、止まるわけには行かなかった。
「何も言わずに耐えろ。家族を思い出せ。王子の命令だぞ」
下手をすると処刑だ。
言葉にこそしないが、全員がわかっていた。
「……ジュリアンナ、マリンナ。父ちゃんは頑張ってるぞ……」
「そうだ。それでいい。……生きて、帰るぞ」
「はい……」
影でコソコソと励まし合いながら、時には肩を貸して支え合う。
予想以上の魔力が体から抜け出していく中で、兵士たちはグッと歯を食いしばって耐えていた。
そうして集まった青い光を宝剣の輝きに変えながら、リアム王子が言葉を紡いでいく。
「主神たる光の神よ。万物を司る古竜たちよ。余の願いに答えて彼女に巣くう魔を払い、真の姿を示せ!」
「 〈永遠の愛〉!!!!」
聞いてる者が恥ずかしくなる魔法名を堂々と叫んだリアム王子が、力強く宝剣を切り下ろしていた。
二メートル近い灰色の玉が浮かび上がり、ビョンビョン、ベロンベロンと、その形を変えていく。
それはまるで、小さな子が粘土で作ったかのような、竜の姿。
そして不意に、その体がドロドロと崩れはじめた。
「うわっ、きしょい! グロすぎでしょ! 何よこれ!」
そう叫ぶマリリンの前で、ゾンビ映画のように、竜の体がボタボタと流れ落ちていく。
そしてゆっくりと動き出したソレが、宙に固定されたマリリンに迫っていく。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいって! 怖いから! もうちょっとマシな形はないの!? どう見ても汚物の敵ーー」
「許せ、マリリン!」
「イヤーーーーーーー!!!!」
のそのそと近付いたソレの口がカパリと開いて、
滴り落ちる何かが、マリリンの髪をベットリと濡らしていた。
聞こえてくる悲鳴も、かつてのリリと比べると、可愛らしさの欠片も感じない。
「魔力の変換効率も最悪ね」
「えぇ、あれでは、魔力を貸した兵士たちが可哀想だ」
「形を真似られた竜に対しても冒涜だと思わないかな? 原型を留めていないね」
「アベ@ル6ymベルベwルーー」
ーーパクリ。
紅茶で唇を湿らせながら口々に感想を述べるメアリたちの前で、マリリンがゾンビ竜らしき物に飲み込まれていた。
もぐもぐもぐ……、
もぐもぐもぐ……、
ペッ。
「ぐべっ」
結局は、三十秒も経たずに、味を失ったガムのように捨てられて、
マリリンの体が、土の上を転がっていく。
その姿をまじまじと見詰めるリアム王子は、宝剣を切り下ろしたままの体制で、肩を大きく上下させていた。
どうやら、魔力が切れたみたい。
それはさておき、
「今の魔法のどこのあたりが、永遠の愛だったのかしら?」
「……考えるだけ無駄でしょう。相手はあの兄さんです」
「……そうね。私としたことが愚問だったわ」
最終的には考える事を放棄して、ゆったりとした椅子に座りながら、事の行方を見守ることにした。
とは言っても、マリリンに洗脳の魔法なんてかかっていない。
「……やったか!?」
「おい、クズ王子! なんのフラグよ、それ! 主人公を殺す気なの!?」
「くそっ!! ダメか! さすがは竜を自称することはあるな。まさか、余の魔法を振り切るとは……。だが、余は負けぬ!!」
フンスと鼻息を荒くしたリアム王子が、腰に履いた鞘から、二本目の宝剣を引き抜いた。
先ほど使った一本目も、今の二本目も、
本来ならば、宝物庫で保管されるべき国宝であり、
「次期王の命令だ」
と言って、無理やり持ち出したもの。
「余の本気を見せてやろう!」
右手に、時渡りの剣。
左手に、真実のつるぎ。
気を失ってバタバタと倒れていく兵など気にもとめずに、リアムが二度目の詠唱に入っていく。
「だからやめなさいって言ってるでしょ! 無駄なのよ!」
そう叫ぶマリリンの訴えも聞く気はないらしい。
「私も無駄だと思うのよね」
「えぇ、無駄ですね」
「そうだね。誰も洗脳の魔法なんて使ってはいないからね」
無論、結界内にいる三人の言葉にも、止まることはない。
そうして放たれた二度目の魔法が、マリリンを襲い、
「…………え?」
誰しもが大きく目を見開いて、言葉を失っていた。
42
あなたにおすすめの小説
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる