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19話 アーロン・クラウス元侯爵 その2
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「ビクティム……! もう止めにするのだ!」
「ち、父上……!?」
突然のアーロン様の入場に、周囲の貴族たちも驚きを隠せていなかった。それは、私やダンテ兄さま、フューリにメリア王女だって例外ではない。
「これは意外な展開だな……」
「そうですわね……」
案の定、フューリとメリア王女ですら戸惑っている様子だった。
「すごい展開になって来ましたね……ダンテ兄さん」
「確かに……さてさて、どのようになるのか」
「兄さん、やっぱり楽しんでいるでしょう?」
「当たり前だ。大切な妹のような存在であるお前を弄んだ男だぞ? 私が怒らないでどうするんだ、フューリ王太子殿下だって同じ気持ちのはずさ」
「それは嬉しいのだけれど……」
ダンテ兄さんの楽しみ方は単純な復讐とはまた違う気がした。それはおそらく、フューリも同じだと思う。こういう雰囲気を何て言えばいいのか、どう形容したらいいのか難しいけれど。
そんなことを考えている間に、アーロン様がビクティム侯爵の前に並び立った。ビクティム侯爵はとても狼狽えている。
「ど、どうして父上がここに……!?」
何年か前に当主交代をしている為、通常はパーティーなどには出席しないはずのお方。それだけに、ビクティム侯爵の声も荒々しい。真意が分からないから余計に。
「馬鹿者! お前があまりにも情けないから、私が出張る以外なかったのではないか! クラウス家の当主ともあろう存在が、何をしているのだ!」
アーロン様の眼光は離れている私でさえ恐怖するものだった。ビクティム侯爵との婚約の時も、お会いしたことがあるけれど。流石はクラウス家の前当主にして、現在の地位を確立したとされる人物。息子だろうと容赦する気配はなかった。それに、まだお若い。50代だったと思う。
「父上……ですが……!!」
「でもも、へちまもあるか! 申し訳ありませぬ、王太子殿下! 状況は大体伺っております」
「アーロン殿……久しぶりだな」
「はい、お久しぶりでございますね」
フューリとアーロン様はなんだか戦友に再会したような挨拶を交わしている。年齢差はかなりあるけど、近しい何かがあるのかもしれない。アーロン様の登場で、先ほどまでの貴族達による叱責の声は完全に鳴りやんでいた。
「まずは、王太子殿下に謝罪をしろ、ビクティム。話はそれからだ……」
「いや、せっかくだがアーロン殿。謝罪する相手は私ではない」
「王太子殿下ではない……左様でございましたか、まずは……レオーネ嬢への謝罪でしたね」
「うむ、その通りだ」
「畏まりました。ビクティム!」
「くっ……!」
ビクティム侯爵は服を掴まれた状態で、私の目の前へと連れて来られた。そして、彼と視線が交錯する。
「レオーネ嬢、お待たせしたようだ。ビクティムの謝罪の言葉を聞いてやってもらえるだろうか?」
「は、はい……畏まりました」
私は少し前に出て、その言葉を待った。しかし……。
「ふ、ふざけるな……私は、クラウス家の当主なんだぞ……? 公爵になれる器なんだ、いずれは王国一の大貴族になる……。それを、こんな娘相手に謝罪……? ふざけるな……」
なにやら雰囲気がおかしい……とても、謝罪をするような態度には見えない。ビクティム侯爵の目は虚ろになっている……あれ? これって不味いんじゃ。嫌な予感が私の心を支配していた。
「ち、父上……!?」
突然のアーロン様の入場に、周囲の貴族たちも驚きを隠せていなかった。それは、私やダンテ兄さま、フューリにメリア王女だって例外ではない。
「これは意外な展開だな……」
「そうですわね……」
案の定、フューリとメリア王女ですら戸惑っている様子だった。
「すごい展開になって来ましたね……ダンテ兄さん」
「確かに……さてさて、どのようになるのか」
「兄さん、やっぱり楽しんでいるでしょう?」
「当たり前だ。大切な妹のような存在であるお前を弄んだ男だぞ? 私が怒らないでどうするんだ、フューリ王太子殿下だって同じ気持ちのはずさ」
「それは嬉しいのだけれど……」
ダンテ兄さんの楽しみ方は単純な復讐とはまた違う気がした。それはおそらく、フューリも同じだと思う。こういう雰囲気を何て言えばいいのか、どう形容したらいいのか難しいけれど。
そんなことを考えている間に、アーロン様がビクティム侯爵の前に並び立った。ビクティム侯爵はとても狼狽えている。
「ど、どうして父上がここに……!?」
何年か前に当主交代をしている為、通常はパーティーなどには出席しないはずのお方。それだけに、ビクティム侯爵の声も荒々しい。真意が分からないから余計に。
「馬鹿者! お前があまりにも情けないから、私が出張る以外なかったのではないか! クラウス家の当主ともあろう存在が、何をしているのだ!」
アーロン様の眼光は離れている私でさえ恐怖するものだった。ビクティム侯爵との婚約の時も、お会いしたことがあるけれど。流石はクラウス家の前当主にして、現在の地位を確立したとされる人物。息子だろうと容赦する気配はなかった。それに、まだお若い。50代だったと思う。
「父上……ですが……!!」
「でもも、へちまもあるか! 申し訳ありませぬ、王太子殿下! 状況は大体伺っております」
「アーロン殿……久しぶりだな」
「はい、お久しぶりでございますね」
フューリとアーロン様はなんだか戦友に再会したような挨拶を交わしている。年齢差はかなりあるけど、近しい何かがあるのかもしれない。アーロン様の登場で、先ほどまでの貴族達による叱責の声は完全に鳴りやんでいた。
「まずは、王太子殿下に謝罪をしろ、ビクティム。話はそれからだ……」
「いや、せっかくだがアーロン殿。謝罪する相手は私ではない」
「王太子殿下ではない……左様でございましたか、まずは……レオーネ嬢への謝罪でしたね」
「うむ、その通りだ」
「畏まりました。ビクティム!」
「くっ……!」
ビクティム侯爵は服を掴まれた状態で、私の目の前へと連れて来られた。そして、彼と視線が交錯する。
「レオーネ嬢、お待たせしたようだ。ビクティムの謝罪の言葉を聞いてやってもらえるだろうか?」
「は、はい……畏まりました」
私は少し前に出て、その言葉を待った。しかし……。
「ふ、ふざけるな……私は、クラウス家の当主なんだぞ……? 公爵になれる器なんだ、いずれは王国一の大貴族になる……。それを、こんな娘相手に謝罪……? ふざけるな……」
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